第333話草でいいと思うよ

 とりあえず既読スルーはよくないので彩音ちゃんへそれぞれグループライン「『真・七つ目の大罪』の会」にてメッセージを返信する飯塚、宮部、たなりんの三人。


『わざわざご丁寧にありがとうございますー(笑顔マーク)義経君もお疲れ様ですー(お茶マーク)こちらこそ今日は楽しかったし新しい出会いに感謝(ガッツポーズマーク)こちらこそこれからもよろしくですー(頭ペコペコマーク)鑑賞会いいね(親指グッマーク)是非日程を調整してやりましょう!みんなでね(笑顔マーク)』


 飯塚のメッセージに続いて宮部が。


『お疲れ様でーす。こちらこそよろしくでーす』


「宮部っち。短すぎない?もっと彩音ちゃんに対して…こうさあ…」


「いや、これでいいと思うなりよ。飯塚さん。男のお喋りはあんまりよろしくないでござる。宮部っちはその辺を心得てるなりねえ。あ、グループ外でサシでのやり取りは『ご法度』でお願いするなりよ」


「んだよー。たなりん『さん』だって世良とサシでやってんじゃねえか。それはいいのかよー」


 ブーブー言う宮部を放置してたなりんが最後にメッセージを送る。


『神宮司さん。今日はお疲れ様でした。帰りはお店でのお見送りだけになりましたが無事帰れたでしょうか。鑑賞会のご提案もご丁寧にありがとうございます。神宮司さんや私以外のメンバーのことまで考えての提案に神宮司さんの優しさを痛感する次第であります。この会で言うなら『オフ会』的な集まりになりますね。お深い集まりが出来ますようみんなで日程を調整し、しっかりとその日に向けて準備をしたい次第であります。宮部君は裏表が激しい一面もありますがそこは私が目を光らせておきますのでご安心ください。それでは飯塚さんもおっしゃるように今日のこの良き出会いに感謝しつつ(私は常々『人生は出会いが大事である。誰に出会うかで人生が変わる』との言葉を大事にしております)、今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。明日もよい日になりますよう。夜分遅くに失礼いたします。おやすみなさい』


「おい、たなりん『さん』。誰が『裏表の激しい一面』だって?それに何だよこの長文で馬鹿丁寧なメッセは」


「そんなの宮部っち以外に誰がいるなりか?」


「わーったよ。もういいよ。それより世良に『この会の画面をスクショしてよそに流すんじゃねえぞ』って伝えとけよ」


「まあまあ。義経君もそんな無粋なことしないでしょー」


「分からんですよ。あいつはあの間宮とツーカーなんですからね」


 まあ特に問題ないでしょと思う飯塚。と、同時に、『オフ会』と『お深い』で韻を踏んだの?とも思う飯塚。読み方によっちゃあ『お深いオフ会』には女子は構えちゃうんじゃないかなあと思う飯塚。


「あ、返信きたー」


『皆さんご丁寧にありがとうございます(笑顔マーク)それじゃあ今夜はこれで(おやすみマーク)たなりん君、『人生は出会いが大事』っていい言葉ですね(ビックリマーク)彩音もその言葉を大事にしたいと思います(ビックリマーク)』


「ったく。よかったねえ、たなりん『さん』。いい言葉だってよ」


「そうだよ!たなりん!しかも名指しだよ!脈ありだよ!」


 飯塚もたなりんを励ます。その気にさせようとする。


「ごめんなさいなり、こんな時…、どんな顔すればいいか分からないなりよ…。『笑エヴァ』なりか?草なりか?大草原なりか?」


 暴走たなりんの言葉を「お!おやじの教えの別バージョンだ!」とメモに取る田所。


「『笑エヴァ』って…」


「いや採用です!草に大草原!これは新しい!」


 たなりんは本当に使える!と思う飯塚。


「各駅停車エジプト行きクルセイダーズが到着しますなり。白線の内側におさがりくださいなりー」


 おお!心の中で喜んでいるんだ!喜んだたなりんはさらに面白い!と思う飯塚。


「た、たなりん…『さん』…。もういいよ。俺の負けだ…。それより彩音ちゃんはたなりん『さん』いけると思うぜ」


「そ、そ、そうなりか?」


「ああ、最初に怒鳴ってきたじゃん」


「ああ、そうなりねえ…」


「俺の見立てだとあの子は『ギャル』だと思う。そして『ギャルはオタクに優しい』って金言がある!」


 すぐさまグーグル先生に聞いてみる飯塚とたなりん。


「宮部っち…。真逆のことが…」


「いいえ!これは自分の体験談からですから!間違いありません!『ギャルはオタクに優しい』説は存在します!」


 グーグル先生の言うことを『すべて』、『画像』、『動画』とチェックするたなりん。


「まあ、とりあえず次はみんなでたなりん部屋に遊びに行くということで」


「世良はどうすんすか?呼ぶんすか?」


「彩音ちゃんとの鑑賞会には呼ばないと。義経君も「『真・七つ目の大罪』の会」の一員だしね」


 そして後日、たなりん部屋で飯塚と宮部は衝撃を受けるのであった。

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