第326話『就職面接で面接官に自作のめちゃくちゃ長いタイトルのネット小説ラノベを読まされてみた!』

「おーい。こっち」


 マックで間宮が店内に入ってきた慈道へラインを送る。当然「おーい。こっち」では分からず店内を見まわし、間宮を見つけて近付いていく慈道。


「お待たせしました」


「飲みもの買って来いよ。頼まないと店に悪いだろ」


「あ、そうですね」


 そしてホットコーヒーをトレイに載せて戻ってくる慈道。


「どう?ポスティングは順調?」


「ええ。あれは本当に不思議ですね。何の疑いも持たずバンバン送ってきますね」


「まあそうなるよね。俺でも送ると思うもん」


「はあ…」


「それより今後はお前の名前で自分んところをドンドン拡大してってくれよ。今田はお前んとこが面倒みんだよなあ」


「はい。福岡さんと話し合ってそうしました」


「軍紀は今後地盤固めがメインになる。よそに出向いてガンガン喧嘩売るのがお前の仕事になると思う」


「はい。自分もそのつもりです」


「ま、最初の時は俺も一緒についてくからさあ。面白そうだし。それから新しい仕事のマニュアルか。ちょっと考えたんで。今までのうちの稼ぎ方もよく出来てたけどもっと堅くて効率がいいと思う。それを説明するから」


 間宮が『逆盗撮』以上に堅くて効率のいいシノギの説明を始める。




「それでは企画会議を始めたいと思います。礼!」


「お願いしまーす」


「はい!なり!」


「はい、たなりん君」


「『リア充を撲殺してみた』という動画でござるが」


「たなりん…。まだ怒ってるの?」


「飯塚さんは少し黙っててくださいなり!これは宮部っちとたなりんの問題ですからなり!」


「ん?どうしたの?なんかあったの?」


「いや…、ついさっきのことなんですけど。カワイイ女の子が宮部っちのファンみたいでして」


「リア充なりよ!宮部っちは自分の地位を利用して複数女性を囲って卑猥なことを隠れてやってるでござるなり!」


「そんなことやってねえよ」


「開き直るなりか!」


「三年目ぇ―の浮気ぐらい多めにミロ飲む?」


 田所の腰の抜けそうな鼻歌に「大事な会議が…、またも…」と思う飯塚。と、同時にキッチンから人数分のミロを入れてくる田所。ミロあるんかい!と心の中で突っ込みを入れる飯塚。


「いただきまーす」


「ミロは暖かいなり。甘いなり。そして宮部っちは誰が勝手に飲んでいいって言ったなり」


「もういいだろー。たなりんちょっとしつこいぞ」


「返事は『はい』しか言っちゃダメなり。『決まり』なり」


「参ったねえ。企画会議を進めます。たなりんのアイデアは却下です。個人的なことは会議の後にお願いします」


「う、そうなりね。遊びじゃないなりでござる。はいなり!」


 またも挙手するたなりん。え?また?と思いながらたなりんを指名する進行役の飯塚。


「はい。たなりん君」


「『就職面接で面接官に自作のめちゃくちゃ長いタイトルのネット小説ラノベを読まされてみた!』はどうなりか?」


 お?新しい!と思う飯塚。


「ネット小説ラノベってなんすか?」


「田所のあんさん。今流行のネット小説投稿サイトですよ。知りませんか?『カクカクヨムヨム』とか」


「すいません。勉強不足でして。おやじの教えにもなかったですね」


 逆に「これは守備範囲外なんだー」と思う飯塚。


「では宮部っち君。田所のあんさんに説明をお願いします」


「はい。今はネットから小説家デビューするのが主流になってましてですね」


「え?ネットに小説?ブログみたいなもんすか?」


「はい。自分で小説を書いてそれを多くの人が読んでくれるサイトが増えてきてまして」


「え?増えてきてるんすか?」


「そうです。分かりやすく説明するとユーチューブの文字版と思ってもらえればです」


「なるほど…。分かりやすい。それで?」


「今は漫画もアニメも原作はネット小説投稿サイトに投稿された作品がやたら多いって時代なんです」


「そうなんすか?自分らのバイブル『本気!』もですか?」


 実際、漫画の『本気!』は極道業界ではものすごく人気があり「ヤクザとはこうあるべき」と昔から愛読されてきたのは紛れもない事実である。


「あ、いえ…。『本気!』は少年誌からです」


 ここから企画会議はヒートアップする。

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