第327話すごいです!飯塚は尊敬しちゃいます!

「それでたなりん君。その企画の趣旨を説明お願いします」


「はいなり。ネット小説投稿サイトは今注目されてるでござる。誰でも『先生』と呼ばれるチャンスがあるのもそうなりが、『痛い』作品が多いのも事実でござる」


 辛口だなあ…、たなりんは…と思う飯塚。と、同時に、リア充宮部っちによっぽどムカついてんだなあ…と思う飯塚。彩音ちゃんも宮部っちにラブラブだったもんなあ…、許せんよなあとも思う飯塚。そして続けるたなりん。


「やたら長いタイトルで自分の欲望をつらつらと書き連ねた作品が多いのも事実なり。そしてそれを書いているのもいい年したアラフォー、アラフィフが多いのも事実なり。そういう人は昔にちょこっとそういうのを書いていた経験があって『今はネットで誰でも投稿出来るなり』と作家気取りで投稿してるのも事実なり。それでそういった駄作を書いているいい年した面接官や人事担当の人が面接で若者に自作を読ませて正直な感想を貰うとどうなるなり?を検証する企画なり」


 おお…、かなり尖っているが面白そう!と思う飯塚。


「え?どういうことっすか?」


 ちょっと話が見えてこない田所が飯塚に説明を求める。ちなみに宮部は悔しいけれど面白い!というリアクションをしていた。


「えーとですね。これはたなりんが言ったように『ネット小説投稿サイト』には『痛い』作品が山ほどあるんですね。何故なら『自分の願望を入れた異世界転生もの』、『ハーレム』、『チート』、『無双』、『俺TUEEE』、今では『ざまあ』、『追放』、『婚約破棄』、『スローライフ』、『貞操概念逆転の世界』、『男女比1:10000000』など。それで流行りものを『テンプレ』といってみんながそれを真似するんです。『テンプレ』は受けやすいんですよ。ユーチューブも流行りものを真似するのが手っ取り早いところとか似てますね」


「え?『ざまあ』すか?『婚約破棄』すか?『スローライフ』ってなんすか?『貞操観念逆転の世界』?『男女比1:10000000』?『俺つえええ』って俺は強い!ですか?」


 まあ混乱しますよね…と思う飯塚。と、同時に、『俺は強い!』は間違ってないですけど…と思う飯塚。説明するのがあれだなあとも思う飯塚。


「『ざまあ』ってのは…、『ざまあみろ』の『ざまあ』です。いけすかない奴が天誅を受けて『ざまあみろ』ってなる展開は見てて『スカッと』するじゃないですか。それが『ざまあ』です」


「なるほど…」


 メモ帳にペンを走らせる田所。


「『貞操概念逆転の世界』ってのはまあ女性がエロくなるってことです。本来なら女性は慎ましくて男は『やりてええ!』ってのが普通じゃないですか。それが逆になるのです」


「なるほど…」


「『男女比1:1000000』ってのはリアルの世界では男女比ってほぼ1:1じゃないですか。それが『日本に男は自分だけ!?周りの女の子がみんな俺にーーー!モテてモテて困るどころか順番です!順番!』となることです」


「なるほど…。それはハーレムですねえ…」


「そういう『自分の願望』をつらつらと百万文字、二百万文字と書き連ねた作品が多いんですね。ネット小説投稿サイトの世界では。それを利用して面接官が面接を受けに来た人にラノベのさわりを読ませるんです。そして感想を聞き、『いやあー、なんですかこれは?駄作ですねえ。いや、駄作というより作文です。いや、作文というより七夕の短冊に書くお願いレベルです』と言わせておいて実は『オホン、それを書いたのは私だが。そうか作文かね。駄作かね。七夕の短冊に書くお願いレベルかね』となり、そこから面接を受けてた人が『いや!よく読むとこれは最高です!この表現などは純文学です!泣けます!すいません!ハンカチ出していいですか!?うううう、なんて素晴らしい作品なんでしょう!お金払って買いたいと思います!』となる様を動画に撮って笑うわけです。いやこれはなかなか面白そうだと思いますね。たなりん君はすごいです!飯塚は尊敬しちゃいます!」


 あ、やってしまったと思う飯塚。と、同時に、ごめんなさいとたなりんに謝る飯塚。


「ですねえ。これは面白いし、誰もやってないし、新しいと思いますよ。実際に受けるんじゃないですか?」


「宮部っちもそう思うよね?」


「ええ。お世辞抜きでいいと思います」


「そ、そうなの?」


 田所だけがピンと来ていない。


「田所のあんさん。神内さんが小説を書いたとして。それを最初は神内さんが書いたとは聞かされずに読まされたとしましょう。そしてその小説が『クソつまんねえー』と思う作品だったらどうします?」


「つまんねえー!と一ページ読んだところでゴミ箱にダンクシューですね。ボッシュートですよ」


「ですよね?そして後から『実はさっきの小説は神内さんの作品なんです!』と聞かされたらどうします?」


「ああ!なるほど!でもそれって実際に昔あったんすよ。まったく同じことが。健司が…」


「あああああ!それ以上はいいです!はい!」


 慌てて田所の言葉を遮る飯塚。と、同時に、神内さん…、ラノベ…、書いてるんですか…、まああれだけ守備範囲広ければなくもない…と思う飯塚。


 会議はさらに続く。

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