第308話汗男優
「小泉さん。どうぞ」
小泉の持つお猪口にとっくりを差し出す世良兄。
「おう。それでその証言者も含めて瀬和さんはあのガキに対して策はすべて打ってあるんかいな」
「間宮が何をしてきているか。それを知ることが出来れば対抗する術はあります。その小泉さんのライン乗っ取りも切り返す方法はあります」
「このラインをか?あのガキゃあ、その『ラインライト』でスクショも撮っとるやろ」
「それは間違いないでしょう。ただ、本家『ライン』のスクショは撮りようがありません。小泉さんの手にあるからです。『ラインライト』の仕組みを知れば本家『ライン』ではなく『ラインライト』のスクショに大した効力はありません。もちろんスクショ以外のこと、『身二舞鵜須組』の関谷組長、さらには大事な方にメッセージを勝手に送られれば少し誤解を説くのに難儀はするでしょう」
「今のところ、そういうのはないなあ。ほな、まず今日にでもラインのアカウントは新しいもんに変えるわ」
「今すぐにアカウントを消去するのが最善だと思います。が、それはいったん待ってもらえませんでしょうか」
「待つ?どういうことや」
「泳がせましょう。逆にこれを逆手にとって利用するのも手でしょう」
「利用する?」
「はい。労力はかかりますがローラーでラインの『お友達』に電話してください。『ラインが乗っ取られてるので怪しいメッセージが行くかもしれません』とお伝えするのです」
「ほう…」
「この件を私はすぐに終わらせるつもりです。ただその『すぐ』が人によっては『多少時間がかかる』とも感じると思います。間宮と接点が確実にない『お友達』にだけ電話してください。この際、話せば分かってくれる交友関係には電話しない方がいいと思います。ピンポイントで間宮が利用しようと考える方、おのずと組関係の方や企業の方になると思いますが」
「せやなあ。飲み屋の姉ちゃんなんぞにあのガキが…、ん?わしが変態かと思われるような画像を送られたらどうすんや?」
「間宮も馬鹿じゃありませんでしょう。それをすることで自分にプラスとなること、そういう相手にしかこの貴重なものは使わないでしょう。それにこの件はいずれ白日の下に晒されます。その時に品性を疑われるのは間宮の方です」
「そうか…」
「逆にお聞きしたいのですが」
空になった小泉のお猪口へとっくりを両手で運びながら世良兄が言う。
「なんや」
「小泉さんは間宮から月々、どれぐらいの金額を受け取っていらっしゃったのでしょうか?」
「あ?」
はあー。朝なりか。昨日もいろいろあったなり。宮部っちに奢ってもらった隣町のマックは最高だったなりでござるね。でも…、学校に行けば…、またあの馬鹿どもが…。今回はなんか無茶な金額を…。あの馬鹿どもは金が絡むと本気でたなりんの恥ずかしい姿を撮影してくるのでは…。何か対策を…。あれ?ラインが来てる。誰からなり?宮部っち?飯塚さん?昨日は『組チューバー』の会議があったし…。たなりんは疲れてるから今日はゆっくり休んだ方がいいとのお気遣いで家に帰ってきたけど…。いろいろ考えることばかりで、結局『こいぱつえくすてんしょん!』で二発抜いたなり…。それにしてもMOD職人は仕事が早いなりね。感謝なり。ああ…、学校かあ…。え?間宮?から?ラインが?ええええええ!?
そして恐る恐る間宮からのラインを既読にするか迷うたなりん。
宮部っち…、別にこっちから間宮に送ったわけじゃないし…。向こうから送ってきたものを未読スルーも失礼なり…。うーん。しかも二件のメッセージで二件目が動画?既読をつけずに見る方法も使えないなり…。あ!たなりん好みのエッチな動画を送ってきてるなりね。でんじゃぶーそうなり。
そして好奇心で間宮からのラインを空けるたなりん。そして動画を見て凍り付くたなりん。
『たなりん。お疲れー。いやあー、昨日、街中でカツアゲされちゃってさあ。財布を丸ごと取られちゃったんだけど。勇気を出してやっつけようとしたらたなりんの名前が出てさあ。この人たちのこと知ってる?(笑)』
そして動画にはいじめっ子たちが口にあれを咥え、顔面にぶっかける動画が。長尺の動画の最初で目を背け、体中から嫌な汗をかくたなりん。
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