第233話えじそんはエロい人
間宮からのラインメッセージを読んだ小泉が間宮の胸倉を掴む。
「おい。あんまハネんなよ…。うちのおやじを何やとおもとる」
緊張感が走る大音量で『津軽海峡冬景色』が流れる部屋。間宮が表情を変えずにスマホを弄りラインを送る。
「気を悪くされたのならすいませんでした。ちょっと聞こえずらいのでラインでお願いします」
そのメッセージを見た小泉が「ちっ」と言いながらスマホを弄る。
「あんたには銭の面でよおしてもろとる。ただ調子に乗ってねえか」
「その気があるか知りたかっただけです。その気がないのでしたらそれで終わる話です」
そこで『欲』が出る小泉。
「話だけは聞いとく」
そのメッセージを見て自分の計画がほぼ達成するのを確信する間宮。いくら『仁義』だ『筋』だと言ってようが今の時代、すべては『金』である。月に三千万円などいくら武闘派ヤクザでイケイケだろうと稼げない。間宮にはそれが出来る。すでに小泉には三千万も渡している。小泉に間宮から渡った金はすでに四千万。領収書もいらない金である。
「これは小泉さんに『その気』があるかないかの話です。『その気』がないならお話することはないです。歌いましょう」
それを見て再度舌打ちをする小泉。
「その気がねえわけじゃねえ」
間宮は小泉のラインアカウントをいつでも見れる『ラインライト』を自分が持つスマホに同期させている。これは小泉の造反、自白を手に入れていることを意味する。そしてラインでの会話は続く。
「まずうちの人間、未成年の少年がそちらの『身二舞鵜須組』の若い方に待ち伏せをされ暴力を受けました。流血もひどく、病院で診断書も出してもらってます。それが何を意味するか分かりますか?」
「それじゃあよええ。使用者責任でどうにかなると思っとるみたいやがな」
「それじゃあ『身二舞鵜須組』の若い方がシャブを扱っている証拠があればどうですか?」
スマホから間宮へと再度視線を移す小泉。
「…てめえ」
そう言いながらラインを送る小泉。
「それは本当の話か?うちは薬ご法度や。本家からつよお言われとる」
『タヌキが。てめえも知ってんだろ』と思いながらラインを送る間宮。
「確実にソースがある情報です。『身二舞鵜須組』の方では薬はご法度なんですか?」
「当たり前や。それをやったら組が潰れる。本家に迷惑をかける。うちはそんな売は一切させとらん」
「そうなんですね。でも事実です。証拠があることです」
「二、三日考えさせてくれるか」
「そうしたいのですが。伊勢さんを止めるのも限界がありますので」
それを見た小泉が鬼の形相で呟く。
「伊勢ぇ…。あのやろお…」
部屋に爆音で流れていた『津軽海峡冬景色』が『おどるポンポコリン』へと変わる。そして間宮が連投する。
「分かりました。伊勢さんの方は僕が責任を持って止めておきます。ただ『三日間』です。三日後にお返事をお願いします」
「分かった」
そして間宮がマイクを握る。
「ぴーひゃらぴーひゃらえじそんはエロい人。そんなのじょうしきー」
時間は少し遡る。世良の元へとたて続けに電話が入る。
「はい」
「俺だ。世良ぁ。俺と組まねえか」
鹿島からの電話であり、比留間も同じく世良へと電話をかけたのである。間宮が出した条件。負けたら誰かの下につくか、不良を引退するか、伊勢の盃を受けるか。元『藻府藻府』の軍紀や忍の下にはつきたくない。世良は間宮の子飼いだろう。ケンカなら世良には勝てるだろう。楽勝で。そうしたら世良を自分の下につければいい。そんな浅はかな考えでいた2人。
「暴力がものを言うのはガキのうちだけだ。成人すればそんなもん一ミリも役に立たねえ」
世良義正が弟の義経によく聞かせていた言葉。世良義経は鹿嶋よりも比留間よりも圧倒的に強かった。
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