第219話仮性

「ふうー」


 人気のない夜明けの病院独特の空気の中、トイレで用を足す末森。そしてチャックを上げながら、手と顔を冷水で洗おうと振り返る。そして驚く。男子トイレの入り口に先ほど声をかけたナースがひっそりと立っていたのだから。


「あのお。すいません。ここ男用ですよね?」


 末森の問いかけに返事をせず、ただ緊張した面持ちで立ち尽くす若いナース。そして恥ずかしそうに顔を俯けながら、末森と視線を合わさないようにしながら自らの白い白衣、スカートをゆっくりとたくし上げる。


「ちょ!ちょっと!お姉さん!何してんですか!」


 返事をせず、そのまま純白のパンティに手をやり、それを下におろす若いナース。


「ちょ!いけません!いけませんよ!」


 それを見ないように、それでも指の隙間からちょっとだけは見えるように両手で自分は見ませんアピールをしながら顔を背ける末森。無理もない。ラッキースケベというやつである。散々レンタルビデオで借りては見ていた世界が目の前で起きているのである。平然とはいられない二十歳の末森。そんなこんなしてるうちに下半身には何も纏っていない姿になる若いナース。


「…すいません。実は私…、へ、へ、」


「へ?へ?」


「変態なんです…。こうやって明け方の誰も来ない時間帯、ひょっとしたら誰かが来るかもしれない状況で…、男性にされるのが好きなんです…。私みたいな変態肉便器はお嫌いでしょうか…」


 いくら昔気質で屈強な組員が揃った『肉球会』若い衆の末森でも若さゆえの事故もある。


「い、いえ…。その…、お姉さんのことが嫌いではありませんが…。こういうのは自分ちょっと苦手と言いますか…、得意ではなく…」


「そ、そうですよね…。私みたいな肉棒狂いの変態女…、肉便器は触るのも見るのも汚いですよね…」


「いえ!そういうわけではありませんで!」


 あたふたしている末森にそのまま近付き、末森の股間をさする若いナース。


「ああ…。先ほど汚いおしっこをした肉棒…」


 そして末森の前にしゃがみ込む若いナース。そして手慣れた手つきで末森のズボンのチャックをおろし、いきり立つイチモツを取り出す。完全に混乱状態でも体は正直な末森の股間はものすごくいきり勃つ。


「い、いけません…」


「ああ…、すごい匂い…。ああ…、ねえ、綺麗にしていいですか」


 そしてねちょりと仮性である末森の肉棒の皮の間に舌を捻じ込みながら咥え込む若いナース。


「ああ…!」





「(あの売女は上手くやってんだろうな。つーか、こっちもすぐに終わらせてとっととここからふけてえぜ)」


 若いナースからラインで知らせを受けた忍はマナーモードのスマホが震えるのをずっとずっと待っていた。一番若い末森がこの時間を担当し、かつ、若いナースも同じ時間帯に勤務となるのを待っていた。


「(あの医者もナースも『病気』だぜ。まったくよお。ま、そういう馬鹿がいるから俺らも楽なんだけどよ。あとはガードが外れてる裕木にとどめを刺して)」


 着込んだ入院服の懐にアイスピックを忍ばせ裕木が眠っている個室へと入る忍。そしていびきをかきながら眠っている裕木の姿を確認する。


「(まあ、簡単には起きねえと思うけど。念のため)」


 そう思いながらスマホのライトを手で隠しながら灯し、そっと顔が確認出来るぐらいの明るさで裕木の顔を照らし確認する忍。


「(じゃあ死んでくれ。騒ぐなよ)」


 そう心で呟きながら左手は裕木の口をすぐに塞げるよう裕木の顔に近付け、アイスピックを持つ右手を振り上げる。


 ズダン!


 その瞬間、忍自身も何が起こったのかすぐには分からなかった。アイスピックを振り上げたはずが次の瞬間に自分は床の上に転がっている。足?足を掴まれた?そう理解した時、裕木の眠るベッドの下から京山が現れる。そして京山の存在を認識した時にはすでに京山に口を塞がれ、体の自由を奪われた状態で宙に浮かされたまま個室の外に出される。そして個室のドアが閉まるのを見計らい京山が怒りをなんとか抑え込もうと腹の底から呻くような声で小さく囁く。


「中山ぁ…。待ってたぜぇ…。おめえかあ…。何してんだあ…」

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