第220話夜明けに書いたラブレター

「中山ぁ…。てめえも元『藻府藻府』なら分かるな…。少しでも変なことしやがったらその瞬間俺はてめえをためらいなく殺す…」


 京山の恐ろしさを知る忍が首を縦に動かそうとする。そして両手を話す京山。そしてまず、トイレへ末森を呼びに『二人』で移動する。そして『現場』に遭遇する京山。慌ててイチモツをズボンの中にしまい込む末森。


「いえ!違うんです!これは!」


「分かっとる。こいつらは手段を選ばん。お姉さんももうええ。無理やりやらされてるんやろ。ナースさんのお仕事は大変や。もう二度とこいつらはお姉さんには関わらせません。この京山が約束します。達志。よお組のために一生懸命やってくれてすまんな。これも全部わしの怠慢が原因や。寝たいのに寝れん、女ぁ抱きたいのに抱けん、ホンマにこれまでよお頑張ってくれた。この件が終わったらわしがしっかりええもん食わしたる。ええ女抱かせたる。あと少しや。補佐のガードを頼む」


「は、はい!」


「あ、あの…」


「もう大丈夫です。お姉さん。これ以上は。何も見てないし、誰も見てない。なかったことです。今後は自分に任せてください」


「は、はい…」


 そしてナース服を纏う若いナース。末森を先にトイレから出し、その後、若いナースを落ち着かせ元の場所へ戻らせる。そして忍へ一言。


「ついてこい」


 病院の駐車場に停めてある車へ移動し一言。


「乗れ」


 そして車の助手席に乗ろうとした忍へ言う。


「そこじゃねえよ。後ろだ」


 そして車の後部座席へ乗り込む忍。京山も一緒に後部座席へ乗り込む。


「中山。腐ってもてめえも元『藻府藻府』。容赦しねえ」


 そして忍の両手を後ろ手にし、両手親指を拘束バンドでがっちり巻く。両足も裸足にし、両足親指を同じように拘束バンドで巻く。そして忍の鼻に『鼻フック』をかませ、それをそのままシートにうつぶせ状態になった忍の足親指拘束バンドに結びつける。


「ちょ、逃げまべんがら…」


「中山。俺はてめえに喋っていいと言ったか?許可なく喋んじゃねえ」


 そう言って思い切り『鼻フック』の紐を引っ張る。忍の鼻が取れるぐらいの勢いで。


「んごっ!」


「馬鹿か。許可なく喋るなって言ったろ。次は殺すぞ」


 そう言って車の後部座席で後ろ手で思い切り『えびぞり状態』の忍を作り、一切抵抗出来ない状態にし、車の運転席へと移動する京山。


「さあ、ドライブや。『肉球会』が素人に手を出したって聞いたことあるか?それも未成年にや。ないわなあ。これは俺の独断や。まあ最後は選ばせたる。『海』でも『山』でもどっちでもええ。『楽』な方か『痛い』方かも選ばせたるから安心せえ」


 そう言いながら車のエンジンをかけアクセルを踏む京山。フルスモークで外には中の様子が見えない仕様のプリウス。病院の駐車場の自動精算機で窓を開け金を払いそのままアクセルを踏み、法定速度を守らないトラックらに混じり夜明けの道路を走る。




 一方。


「たなりんも『Vチューバー』として『たなりんチャンネル』を開設するなりよ!」


「いや、たなりんさあ。『夜明けに書いたラブレター』じゃないんだからさあ」


「なんなり?『夜明けに書いたラブレター』とは?」


「ほら、明け方とかって妙なハイテンションになるじゃん。そのテンションでラブレターを書いて翌日冷静な状態でそれを読み返すと『なんじゃこりゃあ!』ってなるでしょ?それと同じ感覚のこと」


「それは分かる気がするでござる…。でも夜の方が開放的でオナニーも気合いが入るなりよ。それと同じでござるか?」


「たなりん。否、たなりん。これは自分も答えが未だに分からんのですが。夜にオナニーをすると開放的になると今言ったじゃないっすか」


 田所の質問に答えるたなりん。


「言ったなりですよ。宮部っちもそうでござるよねー」


「あ、ああ…」


「でもたなりんに宮部っち。夜のオナニーは時間にして『午前中』っすよね。それって『朝オナニー』と同じじゃないっすか?夜のオナニーとは午前0時きっかりまでに終わらせるオナニーのことじゃないっすか?」


「ふ、深いなり…」


 めちゃくちゃ深いけど…、何を真剣に話し合っているんだ?と思う飯塚。と、同時に企画を…、企画を出さないと…とも思う飯塚。そして宮部が大きなヒントを口にする。


「なんて言うか…、思うんですが…、こうやって普段ならあんまり接点がないと言いますか、あまり出会ったり、つるんだりしないような四人がこうやって縁があっていい出会いをしたと言いますか…。この『ギャップ』がいいと思いません?」


 なるほど!と飯塚の頭の中で底辺ユーチューバーだった頃の経験や『肉球会』での組員たちのアイデアなどが交差する。

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