第218話極道テレワーク
「明日は日曜日なりー!そしてー今日はお泊りでござるよー!」
「たなりん。お泊りっても仕事だよ。企画会議。企画企画企画」
「それは分かってるでござる。でもこうやって外泊するのは人生初なりよー!」
「そうなんですか。それなら特に記念に残るようにしないとですね。飯塚ちゃん」
「まあ、田所のあんさんと二人だけだと企画会議も煮詰まってばかりでね。こうやって前みたいにたなりんや宮部っちの『若い感性』で何か思いつけばと思ってね。たなりんなんか前にも『極道クラウドファンディング』のアイデアを出してくれたし。柔軟な発想を期待してるよー」
「任せるなりです!それで今日はどこで寝るなりか?『一騎当千姫』で誰が好きかを布団の中で言い合いっこするでござるなりか」
「たなりん…。修学旅行じゃないんだからさあ…」
「まあまあ宮部っち。土曜の夜だし人生初だし親も年だしって言いますからね」
田所のあんさん…、いくら神内さんの教えだろうとそのネタは若い二人にはポカーンですよと思う飯塚。案の定さらりと流される田所の言葉。
「そうですね。土曜の夜ですもんね」
「それに人生初なりです!まあうちのママンもパパンもそんなに年じゃないでござるが」
「あ…、そうですか…」
あれ?おやじの教えが、これってどこでも鉄板ネタなのに、スナックでは滑ったことないのに、と思う田所。
「それより早速会議始めまーす。では宮部っちからね」
「え?自分からですか?」
「たなりんでもいいよ。ユーチューブで受けそうなネタですよ。ネタ、ネタ、ネタ!」
「ねねたあぁぁぁ!」
そう言って床に拳を叩きつけるポーズをする田所。あ、それは、と思う飯塚。
「田所さん。それを言うなら『メタい』なりよ」
「へ?」
「『メタ発言』のことですよ」
「へ?」
あ!いけない!そこまではいくら神内さんの教えだろうと無理だああああ!と思う飯塚。
「やだなー。田所のあんさん。カエルなんかいませんから。それにそれを言うなら『メメタア』ですよね?」
「そ、そうっすね。『メメタア』っすね。おほん!」
さすがに照れている!と思う飯塚。そうだよなあ、これだと若者に『おやじギャグ』と言われても仕方ないかもだし…とも思う飯塚。
「田所さんの顔が少し赤いなり。これぞ『極道照れワーク』なりね」
なんてことを言うんだ!と思う飯塚。と、同時に、上手いこと言うなあー、たなりんはやっぱりセンスあるなあと思う飯塚。
「ちょ、ちょっと待ってくださいっすよ。『メタい』とか『テレワーク』とか。自分の知らない言葉が連発っすよ。後学のためにもひとつひとつ教えて貰えませんか?」
そして企画会議から田所のためのネットスラング用語教室に時間が変わる飯塚の部屋。
「というわけなんです」
「なるほど…」
丁寧に宮部の説明をメモに取る田所。これはチャーンス!と思う飯塚。
「たなりん。あと、『コイパツシリーズ』も外せないよ。田所のあんさんに一から説明しないと」
「そうなりね。『コイパツシリーズ』や『コミケ』のことなんかも大事でござるですからね!」
そして『コイパツシリーズ』に始まり、オタクのイロハまで真面目に教わりメモに取る田所。
「あ、MODで視点を変えたり、男キャラの表示をキーボードのボタンひとつで変えるのも常識ですよ」
宮部も熱心に飯塚オタク化計画に加担する。そしてあっという間に日付が変わる。
「ちょ、今日のところはこれぐらいでいいっすか。自分のメモ帳が一杯になりましたんで。これは後日しっかりと飯塚ちゃんからも分からないところや細かいところまで聞いて復習しておくんで」
「そうなりね。まだまだ入門編でござるが。オタクの道は一日にしてならずでござるなりからね」
「これからもご指導ご鞭撻のほどよろしくっす。おやじの教えでいうとこの『逃げちゃダメだ!』の精神っすね」
うんうん、それなら分かりやすいと思う飯塚。
「そうですよ。飯塚さん」
「ミサトさんなりよ!」
「違うっすよ。『はぐれメタル』っすよ。あいつらって残りヒットポイント1とかの状況で逃げるじゃないっすか。だからあいつらが現れたらひたすら『逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!逃げちゃダメだ!』と声に出すじゃないっすか」
ポカーンとする三人。
「それより二人とも腹減ってませんか」
「そう言えば…」
「今日は晩御飯を食べずに来るようにと言われてたなりから…」
「それじゃあ田所のあんさん。部屋住みメシをお願いしますー」
「はいな」
そして田所の振舞う『部屋住みメシ』を堪能し、食後のコーヒー牛乳を飲みながらひと時の休憩に入る四人であった。
「さ、そろそろ企画会議の方に」
「えー、宮部っちやたなりんと話してる方が新鮮で楽しいっすよー。もうちょっとだけでも」
「田所のあんさん。『逃げちゃダメだ!』の精神ですよ」
一本取った気分の飯塚であった。
(補佐もようやく寝たか。『進撃の巨人』にあそこまでハマってくれるとは。それにしても眠い…。今は四時半か…。ちっとタバコでも…いかん!俺は何のためにここにおる!トイレはすぐそこ。すぐに戻れる。ちっとトイレで顔でも洗ってくっか。しょんべんもしてえしな)
そう思って席を立つ『肉球会』組員の末森。
「すいません。ちっとトイレに」
「あ、はい。どうぞ」
(夜勤のナースさんもおるしな)
そして末森がトイレへ向かうのを確認したナースがスマホのラインを鳴らす。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます