第214話ぺ・り・か
「ここは分るよなあ。お前らが好き勝手してくれた店だ。あのままにしとる。おい!店長さんよ!」
間宮と江戸川が散々暴れ倒したぼったくりの店である。大袈裟な包帯姿の男が答える。
「はい」
「この店をこんなんしたんはこいつらで間違いないな?」
「はい」
「んで。修理代はいくらや。見積り出てんのやろ?」
「はい。一千万です」
「それで。店長の治療費は」
「百万ぐらいです」
「聞いたか。兄ちゃんら。合わせて二千万や。それに営業補償やら他にもいろいろかかるのう。三千万ってとこか」
それに間宮が答える。
「あのお…。計算機貸しましょうか?暗算は得意じゃないみたいっすね」
「んだと!このガキぃ!」
狭い店内にはさらに待ち構えていた男たちが。二十名近い強面の男たちに囲まれる間宮たち。基本、行動より声が先のものは雑魚と教えられている。
「だってよ。どうする?」
間宮は江戸川に声をかける。江戸川もニヤリと笑いながら言う。
「そうだな。お前はどう?」
三原にふる江戸川。
「せやなあ。お前は?」
天草にふる三原。
「いてえの嫌だしなあ。三千万で穏便に済むならそれでよくね?」
「ほお…」
ジャージの片割れが金の話に食いつく。
「でもアニキ!このガキらはぶち殺さんとわしは納得出来ませんで!」
ジャージの片割れにもう一人のジャージが叫ぶ。
「まあ待てよ。こんなガキどもが三千万も払えると思うか。よくあるだろ。『足りない分は体で』ってよ」
「あ、なるほどっすね。へへっ、とりあえず財布と身分証出せや。残りはパパやママにお願いするか。特別に今日は一発一万の大サービスデイや。女姉妹がおる奴はその分安くなるぞ」
「ひゃはっはっはー」
ジャージ二人組の会話にガヤも盛り上がる。そこで間宮が言う。
「じゃあ交渉成立ってことで。桐山さんに瀬尾さん、で合ってます?『身二舞鵜須組』の」
間宮の言葉にジャージ二人組が真顔に戻る。
「てめえ…、どこでその名前を」
「え?そっちの店長の谷口さん?だっけ。あの人が全部教えてくれましたよ」
鬼の形相で大袈裟な包帯姿の男を振り返るジャージ二人組の桐山と瀬尾。
「谷口ぃ!てめえ!何ペラペラうたってんだあ!」
さっきまでとは打って変わって驚き、怯えながら声を絞り出す谷口。
「いえ…!俺は何も…!」
「何言ってんだよー。谷口くーん。ご丁寧に名前まで親切丁寧に教えてくれたじゃーん。お薬の商売のこととかさあ。他にも悪口とかさあ。あ、言っちゃまずかった?」
満喫で谷口のスマホから抜いたデータからカマをかけながら間宮がガンガンかき回す。そして天草が火に油を注ぐ。
「もういいじゃん。三千万で済ませてくれるってるんだしさあ。それで今って『ウォンペリカ』って円にしたらどれぐらい?一ウォンペリカで0.000001円ぐらい?計算機ねえから分かんねえけど」
そう言って十円玉を三枚取り出し地面に放り投げる天草。
「ほら。拾えよ。乞食やくざが」
三原の一言で下っ端の瀬尾がキレる。余裕をかましていた三原の顔面にストレートをぶち込む。息を切らさぬラッシュ、ボクシングの動き、鼻血を出しながら三原がうずくまる。
「おお。やっぱ強いねえ。本職の方は。でもまずいんじゃないっすか。僕ら小泉さんの大事な客人すよ」
間宮の言葉に桐山が答える。
「かしらは関係ねえ。本職舐めたらどうなるかおせえたるわ」
瀬尾とは真逆で冷静さを振舞いながらも鬼の形相で用意していたドスを抜く桐山。その前に天草が立ちふさがる。
「是非教えてくださいよ。先生ぇ。まさか授業料がかかるとは言わんでしょうね」
一方。企画会議でアイデアがなかなか出せずに困っている田所と飯塚。
「うーん、やっぱり二人じゃあなかなか厳しいですねえ」
さっきから田所が作るコーヒー牛乳を何杯も飲んでいる二人。
「こういう時、おやじの教えなら『飲んどる場合かーッ!』って言うんすけどねえ…」
おお…、その名セリフは…、と思う飯塚。と、同時に、もう神内さんに企画会議へ参加して貰った方が…とも思う飯塚であった。
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