第212話いつもここから
「悲しいときー!(悲しいときー!)誰かが殺られたときー!(誰かが殺られたときー!)」
「どうしたんですか。田所のあんさん(しかもレアだなあ。これも神内さんの教えなんだろうなあ。しかも一人二役やってるし…。てか『誰かが死んだときー』じゃなかったっけ?)」
「悲しいときー!(悲しいときー!)『ぴえん』で鼻うがいをしている間に飯塚ちゃんと宮部っちが黙って僕を置き去りにして一人ポツンと部屋に残されたときー!(『ぴえん』で鼻うがいをしている間に飯塚ちゃんと宮部っちが黙って僕を置き去りにして一人ポツンと部屋に残されたときー!)」
あ、それですか、と思う飯塚。と、同時に、すいませんねえと思う飯塚。
「すいませんでした。でもあれは僕と宮部っちの二人だけで行った方が効率を考えてもよかったんです」
「悲しいときー!(悲しいときー!)」
ああ…、まだ言われるんですか…、と思う飯塚。と、同時に、でももっと聞いてみたいなあとも思う飯塚。
「兄弟分なのに隠し事をされてるかもしれない疑惑なときー!(兄弟分なのに隠し事をされてるかもしれない疑惑なときー!)」
「いや、隠し事なんてしてないですよー。実は間宮の小僧にGPSをですね」
「悲しいときー!(悲しいときー!)」
「だからGPSをですね、新藤君の単車につけられてましてですね」
「ひらーくー、かわーのー、ひょおーしー♪(ひらーくー、かわーのー、ひょおーしー♪)」
なんてことだ!『いつもここから』が『ゆーみん』さんの『卒業写真』とフューチャリングしている!確かに悲しいことがあると卒業写真の皮の表紙を開くもんなあ!うまい!と思う飯塚。と、同時に、神内さんの教えはとてつもなく幅広い!と思う飯塚。
「まあ、確かに悲しいときは卒業アルバムを開くんでしょうけど…。面白いですね」
「そんなことじゃごまかされませんよ。ぶつぶつ。ぶつぶつ。どっとこむ」
ああ…、当たり外れが…と思う飯塚。
「まあ、『ぴえん』の時は外に出るより薬を飲んで家にいた方がいいじゃないですか。ね!ね!」
「まあ納得するっすけど…。それで新藤君の単車にGPSですか。あいつら何を企んでるんすかねえ」
「うーん。まあ、今は穏やかな状況じゃありませんので。こっちの居場所を把握しておけば何かと便利じゃないですか」
「でもトンキの駐車場でもただ隠れて監視してただけなんすかね?まさかあいつらまで動画を撮ってたとかありませんよね?」
「うーん。ないと思いますが。抗争を動画に撮る目的がちょっと思い浮かびませんし…」
「頭の間宮って小僧が完全に地下に潜ってるじゃないっすか。監視部隊の『役』の可能性ですかね」
「まあ、逆にそのGPSを利用してやろうってことになりましたんで。新藤君には単車につけられたGPSをそのままにしておくようにとなりました」
「大丈夫っすか?まあ、新藤君はめちゃ強いんで大丈夫だと思いますが」
「それより田所のあんさん!ユーチューブではありませんが実際に撮影した動画が一気に百万回超えの再生数ですよ!そっちを喜びましょうよ!」
「そうっすね。自分の撮った動画が…、編集した動画が…、百万回超え…」
飯塚の部屋を汚さないよう煙草を吸いながらニンマリと宙を眺める田所。それを見ながら「意外と『仁義チャンネル』はめちゃくちゃ受けるんじゃないか?」と思う飯塚。と、同時に宮部っちやたなりんの加入は大きいし、『藻府藻府』と連携すると一気にやれることも広がるなあと思う飯塚。
「田所のあんさん!会議しましょう!企画会議です!『仁義チャンネル』のデビューもすぐですよ!」
「そっすね!やりましょう!」
「お、俺。今大丈夫?」
「はい。なにかありましたか?」
『身二舞鵜須組』若頭・小泉が手配した『オーシャンホテル』の部屋から忍へ電話をかける間宮。
「なにもねえよ。そっちの状況は」
「比留間とマシマシがやられました。比留間は新藤に、マシマシは宮部にですね。どっちも『藻府藻府』とぶつかってやられましたね」
「ふーん。まあいいや。敗者復活はねえから。あの二人のことは任すわ」
「はい。あと一ついいですか?」
「いいよ」
「マシマシのデスラインに『たどころ』って奴の名前がやられる直前に書き込まれてまして。田所って名前に心当たりはありませんか?」
忍の言葉を聞き、間宮の頭の中で点と点が線になり面になり立体となる。
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