第198話どっちかの夜は比留間
「ごるあああああ!うちのたなりんに手ぇ出すなんざ百万年はえええ!」
たなりんと飯塚のガードについた長谷部が襲い掛かってきた相手をぶっ倒す。それでもさすが生き残った『宇佐二夜』精鋭部隊。少数ながら一人一人がそれなりに強い。スタミナをだいぶ削られた『藻府藻府』メンバーは気合いを入れて相手をする。それに倒したはずの『宇佐二夜』メンバーも休憩し、再度立ち上がるものも。
「お前ら!いけるか!」
「オス!」
「あとは宮部と新堂がケリをつけるまで先にこっちを終わらせます!」
田所が『鞭打ち』と『ドゴーン』でどんどん倒していく中、負けずに気合を見せる『藻府藻府』メンバー。一方で日本刀を持った鹿島と渡り合う宮部、手負いでありながら狂犬と化した比留間を相手にする新藤。
「(はええ…)」
比留間の低い姿勢から繰り出されるギブスを巻いてない方の腕の突っ張り。掌底をものすごい速さでサイドから押し出すよう、すくい上げるような軌道で。そしてそちらに気を取られていると裏拳のようなギブスをした方の腕の攻撃が。とっさにかわす新藤。そのまま勢い余って『宇佐二夜』の兵隊を直撃する。
「ぐはっ!」
比留間の一撃を食らった『宇佐二夜』の兵隊が悲鳴とともに倒れ込む。
「新藤おおおおおおお…。避けてんじゃねえぞおおおお」
「(ちっ。このバカ。日本刀とギブスであんな金属音が出るわけねえだろ。鉄パイプでも巻き込んでんだろ)あ?てめえの動きがすっとろいだけじゃねえのか」
「うるせええええええええええ!」
比留間の猛攻。突っ張りと大振りの裏拳ラッシュ。裏拳を放った反動を上手く利用しすぐさま次の攻撃を繰り出す比留間。
「(あの腕じゃ『さば折り』はねえ。打撃系とまだ見せてないタックル。足の動きに注意しながらカウンターか)」
『藻府藻府』メンバー一人一人が核弾頭並みの強さなのは京山や先代からの鬼のようなヤキに耐えられた少数精鋭だからだけではない。実戦で使えるケンカのイロハを叩きこまれている。理屈ではない。身に付くまで何度でも先輩たちの拳を受けてきた。
『ケンカは目が大事。とにかくギリギリまで相手の攻撃から目を離さない。そして人間の動きを覚え、軌道からある程度攻撃を予測する』
比留間の繰り出す攻撃は確かに速い。並みの喧嘩自慢なら何発かすでに受けているし、それに耐えるのも難しい。ただ新藤には見えている。見えていれば最悪避けられなくてもダメージを抑える攻撃の受け方も身に付けている。比留間の突っ張りがもし『拳』だったら。新藤は腕が伸び切る前に額で受け止めそのままチョーパンで相手の拳を壊していた。
「逃げてんじゃねえ!逃げてんじゃねえ!逃げてんじゃねえ!」
「(比留間よお。おめえはやっぱ『つええ』わ。でもよお、負傷した体で倒せるほど俺は『弱く』ねーんだわ。それにおめえは悪党だ。俺もそうだがよ)」
比留間の裏拳ギブスにカウンターを合わせる新藤。
ギーンッ!
「やっぱなあ。『拳』じゃなく『エンジニア』で正解だったわ。こいつよりかてえギブスなんかねえだろ、あ。それに『釘』か?」
「舐めてんじゃねえ、舐めてんじゃねえ、舐めてんじゃねえ…」
そう言いながらギブスを巻いている包帯を外す比留間。それを見て新藤が呟く。
「てめえ…。『剣山』か…」
比留間のギブスにはゴムバンドで固定した生け花用の剣山が三つ。そしてその一つを負傷していない腕で外し、握り込む。
「逃げんじゃねえぞお…、新藤おおおおおおおおおおお!」
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