第164話鉄拳制裁

 なんだかんだでいろいろあった一日。いつものように田所のいびきを聞きながらパソコンに向かう飯塚。あ、そうだ、ラインで宮部っちにお礼と言うか、まあ、挨拶メッセージでも送っておこう、今後のこともあるしなあ、と思う飯塚。


『宮部っち。お疲れ!今日はどうもありがとね。宮部っちの『覚悟』と『アイデア』には感心でした!とても頼もしい弟分だね(笑)。これから大変だろうけど一緒に頑張ろうね!そして『撮れ高』のいいものを一緒に撮っていこう!ではまた。今日はゆっくり休んでね。(暴走はダメだよ(笑)なーんてね)』


 そして送信ボタンを押す飯塚。すぐに既読が着くのを確認する。と、同時に、え?ああああああああああああああああああああ!と思う飯塚。


『既読1』の表示。

 そしてすぐに飯塚のスマホが鳴る。画面には『たなりん』の表示が。


「飯塚の兄者ああああああああああああああああああああああああああ!あれは一体なんでござるかああああああああああああ!たなりんをハブにして末弟の宮部っちと二人だけで活動でござるかあああああああああああああああああああああああああ!ひどいっす!あんまりでござる!」


「い、いや…、たなりん。き、聞いてくれる?訳を」


「訳など聞きたくもないなりよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!飯塚の兄者と宮部っち『だけ』で楽しいことをして、このたなりんは『ハブ』!その事実がすべてなりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!ひどいよ…、すんすん…、せっかく今まで孤独だったたなりんの冷たいハートを包んでくれる『兄弟』が出来たと喜んでいたら…、どうせたなりんはいっつも『いらない人間』なんですよお。『必要とされない人間』なんですよお。はあ…、死にたい…。死にたいでござる…。もう『コイパツシリーズ』も『レビータンフィギュア』も何もかも捨てるでござる!ぐれてやるでござるううううううううううううう!盗んだバイクで走るでござるううううううううううううう!ゆくあてもなくうううううううううううう!自分の存在がなんなのか分からず震えるでござるうううううううううううううううううう!」


 電話越しで感情むき出しに自分の想いを飯塚にぶつけるたなりん。ああ…、ラインを誤送信してしまった…、宮部っちとたなりんの『登園の誓い』グループに送信してしまった…、どうしよう…、と思う飯塚。と、同時に、たなりんが『ぐれたら』とんでもないことになる!、と思う飯塚。


「落ち着いて。たなりん。これには訳があってね。僕のユーチューブの動画撮影を『たまたま』宮部っちに手伝ってもらおうと…」


「それなら宮部っちだけじゃなく、この『たなりん』も誘うのが『筋』じゃないでござるかああああああ!!!!!」


 たなりんが号泣しているのが分かる飯塚。と、同時に、たなりんに『筋』を説かれる飯塚。


「分かった分かった。ごめんごめん。たなりんに連絡しなかったのは謝るから。じゃあ次の動画撮影の時はたなりんを呼ぶから。それでいい?」


「ホントでござるか?」


「ホントだよー」


「そう言ってまたたなりんを『ハブ』にするんじゃないでござるか?」


「約束するから。ねっ、ねっ」


「今、飯塚兄者の信頼度は著しく低下してるでござる。ファミコン版『水滸伝』ならすでにたなりんは飯塚兄者の元を去っているでござる」


 うわあ…、ガチだ…と思う飯塚。


「分かった!じゃあ次の日曜日。今週末の日曜日ね。その日をユーチューブ活動の日にするからさあ。たなりんも一緒にやろうよ!ねっ!それでいい?」


「次の日曜日でござるね。末弟の宮部っちは呼ぶでござるか?」


「え、あ、呼んだ方がいいかな?」


「当たり前でござるうううううううううううううう!末弟の宮部っちも『同罪』でござるよ!次の日曜日、たなりんは『鬼』になるなり!末弟の分際で次兄を『ハブ』にした『罪』を追求するなりよ!ことと場合によっては『鉄拳制裁』も辞さない覚悟ですからね!いくら飯塚兄者だろうと止めないでくださいよ!」


 うわあ…、たなりんが宮部っちを『鉄拳制裁』だよお…、と思う飯塚。とりあえず何とか電話を切る飯塚。すぐに宮部っちから電話が。


「あ、飯塚さんですか?『あれ』まずくないですか?すぐに消した方がいいと思いますよ。誤送信ですよね?」


「ごめん…、遅かった…」


 そして次の日曜日。『オタク』のたなりんが十代目『藻府藻府』総長宮部に『鉄拳制裁』をも辞さない『説教』をかますことになる。

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