第163話組♡チューバーへようこそ!
「実は飯塚さんとは少し変わった出会いでしたかね。でもまあそれはもういいでしょう。飯塚さんと田所さんがどうやって出会ったのかも詳しく聞こうとも思いませんし。気を悪くされないでください。元『肉球会』の田所さんが髪型を変えてまで『ユーチューバー』として活動され。京山さんから昔少しだけ聞かされたことがあります。『肉球会』の皆さんはすげえ、田所のアニキはすげえ、と。そんな方が組を抜けてまで。そして飯塚さんです。昔はヤンチャだったと聞いてます。京山さんを見ていただければですがやっぱりうちのOBはどうしても『そっちの道』へ進む方が多いです。『肉球会』の皆さんを否定するわけではありません。学校に行かなかった人間は将来の選択肢ってすごく狭いんです。ツラに傷があればどこも雇ってくれません。選ばなければ職はありますし、十代をまた『別』の時間に費やした人たちを責めるような気もサラサラありません。ただOBで若くして亡くなった方もいると聞いてます。うちのメンバーにはそんな『ヤンチャ』のツケを払う常識を失くしたいと言いますか。『その気になれば新しい道を自分たちで切り開けるんだ』ってことを示したいって夢ですね」
「宮部っち…」
そうだよなあ。俺も辞めたけど正社員になるのってある意味めちゃめちゃ難しいんだよなあ、と思う飯塚。と、同時に、新卒じゃないと基本人生終わりってとこあるもんなあ…、とも思う飯塚。と、同時に、宮部っちも名門『藻府藻府』十代目頭として健司の後を引き継ぎ走りながらも「コイパツシリーズ」とか…、たなりんと兄弟の盃を交わして『オタク活動』も好きなんだよなあ、でも、人種がまったく違うたなりんを見下すようなところもなく…、シャバ憎の俺にも年上だってだけでしっかり立ててくれるし。宮部っちにもまた『藻府藻府』の頭としての『顔』もあって。ごついメンバーを従えながらそいつらとも『楽しい時間』を過ごしてたり、俺やたなりんとも『楽しい時間』を過ごしたり。将来のことを考えると…、だよなあ、神内さんの考えって…、本当にこの国に見放された人間たちを見据えて…と考え込む飯塚。
「ああ。その通りや。宮部っち。ええ若者が『極道』なんぞになったらダメですよ。親御さんを泣かすようなことはやったらダメっす。まだ給料は出ませんが三食昼寝付きでよければ『組チューバー』へようこそ!」
「そうだよ!『組チューバー』へようこそ!」
「ありがとうございます。宮部一郎。身を粉にして頑張ります!」
「まあ、おやじの教えっすが『バランスよく』っすよ。ほら、一か月の与えられた時間をバイトばかりに使うとダメじゃないですか。女の子へのアプローチとかうまく時間を使わないとバッドエンドしか見れないっすからね」
え?と思う飯塚。へ?と思う宮部。それって…『ぴあ♡きゃろっとへようこそ!』シリーズですよね…?と思う飯塚と宮部。さすがである。
「まあまあ。とりあえず今日から強力なメンバー宮部っちも加わってくれて『組チューバー』も三人になったことで。あ、田所のあんさんのことは宮部っちも田所のあんさんって呼ぶことでいいんじゃあないかな。ねえ、田所のあんさん」
「全然いいっすよ。飯塚ちゃん、宮部っち。今日はちょっと自分は腕を振るいますよ。買い出し行ってきますわ」
「いえ、そこまで気を遣わないでくださいよ」
「いいからいいから。今後の打ち合わせもあるしね。それに田所のあんさんの『部屋住みメシ』は美味いんだよ!」
浮かれながら、え?ちょっと待てよ…。田所のあんさんは俺と五分の兄弟分…、同時に宮部っちは弟分、宮部っちはたなりんの弟分でもあり…。複雑だ…、と思う飯塚であった。
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