第129話お姫様抱っこ
「おい。なんだてめえ。ここは面会謝絶だ」
「え…、いや…、兄がこちらにと…。病院の方から自宅に電話がありまして…。父も母も仕事で連絡がとれませんで…」
「あ?おい。中山さんに弟っていたのか?」
「知らねえ。あれ?お前知らない?」
「いや…。いたかも…。どうだろ?」
「いえ、兄は…!兄の容態は大丈夫なんでしょうか!?」
「え、あ、ああ」
「(お前が相手しろよ。俺はこういうの苦手だからよお)」
「(俺も苦手だよ。でも『内臓破裂』とかいきなり言ったらこの兄ちゃん変に騒いじゃうかもよ)」
「(そうだよな。中山さんはベッドで眠ってるし。まあ安静に寝てるのを見れば大人しく帰るんじゃねえ?)」
「兄は!?兄は死んだんですか!?」
「いや、生きてるよ。なに不吉なこと言ってんだよ。おめえは」
「今、静かに寝てるからよお。顔だけ見たらそれでいいよな?」
「はい!」
「だからよお。あんま大きな声出すなよ。ここは病院だぞ」
「あ、すいません…」
「じゃあお前らそのまま外見とけ。おい兄ちゃん。こっちだ。静かにな」
そう言って病室へ、個室へ通されるコージ。そして忍の寝顔を見て呟く。
「兄ちゃん…」
「おい。見るだけっつったろ。まあ安静にしてりゃあすぐに退院できるって医者の先生も言ってくれてるからよお」
「あのお…。病院代などは?個室は高いって聞いたこともありますし…。うちはそんなに裕福ではありませんで…。兄が無事なら一番なのですが…。先ほども言いましたように父も母も共働きでして…」
「あ?『金』のことは別に心配しなくていいよ。中山さんは金持ちだからよお」
「そうなんですか?」
「ああ。だからもういいだろ。何も心配しなくていいからよ。な」
「いや…、あのお…」
「なんだ?他になんかあんのか?」
「いえ…。そんなに『金』があるんなら、ちょっと僕にも回してもらえません?」
「ああ?」
ドスッ!
「…おゴッ…」
コージの強烈なアッパーが『ガード』のみぞおちを捉える。そして崩れ落ちる『兵隊A』から目を離し部屋の窓を開ける。下を見る。下では地上で新藤と二ちゃんが。計画通りの動きに新藤が下から片手を振って応える。『兵隊A』が立ち上がる前に。そして『兵隊B』及び『兵隊C』が気付く前に。コージはベッドの上の忍を『お姫様抱っこ』し、そのまま『開いた窓』から飛ぶ。この時点で忍の目は覚めていた。
「おい!何しやがる!」
「ひゃっはー!」
地上五階からの『ダイビング』。忍は自分に何が起こっているか理解できない。ただものすごいスピードで落下していることだけは理解する。コージは『ただ』飛び降りたわけではない。出来るだけ壁から遠くへ。下に飛び降りるというより窓枠から思い切り遠くへ飛ぶイメージ。
「新藤!二ちゃん!」
「おっけ」
コージは抱きかかえていた忍を手放す。新藤と二ちゃんの二人がかりで忍をキャッチする。そしてコージは恐ろしい身体能力で着地の衝撃を和らげる。
『エネルギー』というものがある。物体が落下すればその物体の質量の分だけの『エネルギー』が発生する。ビルから飛び降りて死ぬのはその『落下エネルギー』で体が破損するからである。コージはその『エネルギー』を最後には『上方向』へのベクトルに変えた。足で着地しながら瞬間的に体を回転させ、衝撃を吸収しながら最後には両手で逆立ち状態で両掌で地面を跳ね、宙に浮く。そして空中で回転し二度目の着地をする。
「おめえ、昔っから『それ』、得意だよなあ。どういうからくりなんだ?」
「それより『そっち』は上手く『キャッチ』したのか?さすがにあの高さだからよ。俺、途中で忍の背中を蹴り上げちまったぜ」
「ああ。だから急にこいつが『加速』しやがったのか。それに『気』を失ってやがる。これって最初から?まあいいや。『お喋り』は後々。ふけるぜ」
「おす」
新藤率いる三人組は入院中の『模索模索』幹部である元『藻府藻府』の中山忍をさらうことに成功した。
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