第114話たちんぽ

 そして『仁義』チャンネルの田所と飯塚も『ある変化』を感じていた。


「ごるああああああ!開けんかい!」


 ガチャ。


「どうされました?」


「あ?おめえら半グレ集団『模索模索』がやってる『違法デリヘル』だよな?」


「あのお。何か勘違いされてるようですが…。うちはしっかりと『所轄』に『確認届出書』を提出して『健全営業』をしてますが。『届出書』を事務所に貼ってますからそれを確認されますか?」


「あら。本当だ。真面目に『健全営業』をしてるんだったら…。とでも言うと思ったか!この野郎!女の子を出せ!『タダ働き』とかさせてるんだろうが!」


「あら。本当だ。真面目に『健全営業』をしてるんだったら…。とでも言うと思ったか!この野郎!女の子を出せ!『タダ働き』とかさせてるんだろうが!」


 とりあえず復唱する飯塚。そして嫌な予感が。


「へ。あたしは普通に『高収入』貰ってるよ」


 嘘を言ってるようには見えない。田所も数々の修羅場を潜ってきた漢である。「この人は嘘をついていない」とすぐに分かる。


「あのお。そろそろいいですか?うちは本当に『健全営業』をしてますんで。『税金』も納めさせていただいておりますから。これ以上は…、ちょっと『営業妨害』になりますし。うちとしても穏便に済ませたいと思ってますんで…」


 そしてすごすごと撤収する田所と飯塚。


「今回は『空振り』でしたね。飯塚ちゃん」


「そうですね。田所のあんさん。でも健司から送られてきた情報はまだまだたくさんありますよね」


「ええ」


「どんどん回ってみましょう。あいつらが『悪いこと』をしているのは確実なんですから。それを『退治』する動画を撮影するんですよ。あの半グレ集団『模索模索』が急に更生するなんてあり得ませんから」


「うーん。更生してくれるんならそれが一番なんですがねえ。『若さゆえの過ち』はありますからね」


 それから『オレオレ詐欺』、『ぼったくりバー』、『悪徳デリヘル』などを回るが証拠も悪事を働いている決定的瞬間も見つからない。


「本当に勘弁してくださいよお。うちはITでベンチャーですから」


「ぼったくり?そういう店を退治してくださいよ。うちは『健全営業』してますから」


「あ?商売の邪魔だよ。『たちんぼ』でも注意してろよ。あ、お前らが『たちんぽ』か。はっはっはあー」


 間宮はすでに悪事を一切に表に出ないよう仕組みを変えていた。『逆盗撮』は『健全営業』店でも出来る。客にルールを破らせればいいのだから。ぼったくりバーも同じく。普通のキャバクラやバーにしてそこの客からしゃぶればいい。『オレオレ詐欺』では十分に稼いだ。もうそんな『リスク』なんか必要ない。それ以上に『ノーリスクハイリターン』の仕組みを作り上げた。


「おい、健司。話が違うじゃねえか。あいつら更生してるじゃねえか」


 京山に電話をかける田所。


「田所さん。ちょっと厄介なことになってますね。と言うよりもこれからもっと『厄介』なことが起こると思います。『蜜気魔薄組』の若林組長が『使用者責任』でもっていかれたのは聞いてますよね」


「ああ。あれな。でもすぐに出てくるんじゃねえの」


「そうです。あくまでうちで調べてる最中、まだ途中の段階ですが。あそこと『模索模索』が合併するって話です」


「え?それって…」


「ええ。奴らはシマを持つ『堅気』になる可能性があります」


「どうすんだ!?そうなったらうちもやべえんじゃねえか」


「ええ。あそこと戦争になっても相手は『堅気の小僧』ってことになります。そもそも『戦争』にならんです」


「それは『血湯血湯会』の総意なんか?それとも『身二舞鵜須組』が描いた『絵』か?」


「いえ。恐らくあの『間宮』って小僧でしょう。すいません。あいつを止められなかった俺の責任です…」


「何言ってんだ!おめえは一ミリも悪くねえよ!それよりおやじの教えだ!『役』だよ!健司、おめえの『役』を考えろ。俺は俺の『役』をきっちりと果たすぜ」


「ええ。分かりました」


「健司よお」


「はい」


「今は『破門』の身だが俺は今でもおめえのことはかわいい弟分だと思ってるぜ。なんかあればいつでも来い。それも俺の『役』」


「アニキ…。ありがとうございます」


「隣の部屋に飯塚ちゃんがいるけど代ろうか?」


「いえ…。今はまだいいです」


「そっか。まあ気張れや。あ、おやじの教えやぞ。気張るのも。クソの時な」


「ええ」


 少しだけ声が明るくなる京山。それを確認し、田所は電話を切る。

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