第112話『逆盗撮』
「おめえんとこはどうやって稼いでんだ。『女』や『オレオレ』でそんなに儲かるんか?」
伊勢と間宮の会話は続く。
「伊勢さん。人を操るのに一番手っ取り早く尚且つ確実な方法って何だと思います?」
「質問を質問で返すんか。てめえは」
「すいません。その方が早いと思いましたんで」
「ふん。まあええ。『暴力』じゃねえのか。所詮『力』だろう。相手の『弱いところ』をガンガン攻めるのが俺らの世界じゃあ常識だろうが」
「そうですね。正解です。ただ簡単に相手の『弱み』は握れません。違いますか」
「何が言いてえ」
「うちはそれが『簡単に出来る』です」
「あ?」
「伊勢さん。伊勢さんは携帯持ってますよね」
「当たり前だろうが。今どきポケベルでもねえよ。ジジババでもスマホの時代だろうが」
「そこです。伊勢さん。伊勢さんの携帯を僕に『一日』でも預けられますか?」
「あ?そんなの余裕だろ。今は『セキュリティー』がしっかりしてるからな。二段認証で指紋や顔認証があるだろう。スマホを落として人生終わるのは映画の世界だろ」
「ですね」
「それともあれか。おまえんとこには優秀な『ハッカー』でもいんのか?」
「伊勢さん。『ハッカー』と『クラッカー』をごっちゃにされてますよ。『ハッカー』は悪いことをする『クラッカー』から守るプログラマーですよ。『ハッキング』と『クラッキング』は別物です」
「おんなじようなもんだろうが。それで。少しはそういうのに詳しいのがいるってか?中卒よお」
「そんなもんいませんしいりませんよ。まあ、いれば便利だと思いますが。それよりも手っ取り早い方法があるじゃないですか」
伊勢が新しいタバコを咥えて火を点ける。間宮へ続きを促す。間宮が続ける。
「伊勢さんみたいな男は少ないでしょう。一般人はまず後ろめたいことをすればどういう行動をするかです。『女』を買った人間がいるとしましょう。本番でも好きにやらせます。店のルールを破らせるんですよ。例えばの話です。ほんの一例です。店のルールを破った人間を詰めるのは簡単です。罰金がいくらとれますかって話です」
「そうだな。三十でも取れれば御の字じゃねえか」
「三十ですか?そんなに取るんですか?伊勢さんは。伊勢さんのところではルールを守った方がいいですね」
「何が言いてえ」
「うちはそういう人間から『金』をとりません。一円たりともです」
タバコの煙を吐き出しながら間宮の演説に興味を示す伊勢。
「そこで『携帯』です」
伊勢がそこでピンとくる。
「てめえ…」
「そうです。さすが伊勢さん。話が早いです。その通りです」
ここからは伊勢が『間宮』のやり方を説明する。
「そういう人間のスマホを取り上げて情報を抜く。『個人情報』を抜かれた人間はお前に手も足も出ねえ。何かしようものなら『人質』が世に出るってことか」
「そうです。他にもうちは『逆盗撮』ってのもやってます」
「『逆盗撮』だと?」
「ええ。誰だって顔にモザイクなしで勝手にネットで無修正男優デビューさせられたら困りますよね」
「ほお…。おもしれえ。それでお前んとこは何人『飼い犬』を飼ってるんだ」
「『飼い犬』とは口が悪いですよ。伊勢さん。彼ら、彼女らは大事な大事な『宝物』ですよ。自分は『ATM』って呼んでますけど」
「ふふふ、二十四時間手数料無料のATMってか。おめえは本当におもしれえな」
半グレ集団『模索模索』の資金源。その『エグさ』は蟻地獄のように一度嵌まれば抜け出すことは出来ない。『クールにキチガイ』をやれる間宮はここまで『力』を持つようになっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます