第24話明日もまた見てくれるかな?
「いいですね。『仁義』チャンネル」
「そういえば、今どき『仁義』を切るもんはいなくなりましたね」
そうなんですか?と思う飯塚。
(『仁義』かあ…。わしも昔よう言うてたなあ。今でも一字一句覚えとるわ。一生懸命考えたもんなあ…)
感傷に浸る住友。時代は随分と変わってしまったもんだと。
「『仁義』チャンネル!チャンネル登録お願いします!ですかね。いいですね」
「なんか『高評価お願いします!』って言うんですよね」
「ああ、せやせや。そんな感じやったな」
「『コメントもお願いします!』とかでしたっけ?」
「あー、あったあった。なんかそういう決まりでもあるんですかね?飯塚さん」
すごく明るいムードになった中、飯塚も気楽に答える。
「それは『ユーチューバー』の常識みたいなものですね。やはり動画の最後に『最後までこの動画を見てくれてありがとうございます』と感謝の気持ちを込めてとアピールの意味ですね。テレビなら『来週もまた見てください』というのと同じですかね」
神内が口を開く。
「すいません。ちょっといいですか?飯塚さん」
明るいムードで話していた昔気質で屈強な組員たちもぴたりと静かになる。やはり神内さんはオーラがすごいなあと思う飯塚。
「はい。なんでしょうか」
「それが私にはどうも引っかかりまして。動画を最後まで見ていただいた視聴者の方に対して『チャンネル登録をお願いします』と頭を下げるのはいいと思います。『高評価をお願いします』とお願いをするのもいいと思います。『コメントをお願いします』もいいでしょう。ただ、『低評価』という選択はないんでしょうか?」
「もちろん『ユーチューブ』は高評価と低評価の二つの評価があります。そのどちらもしないという評価もあります」
「私が思うに、『ご興味を持たれた方は是非よろしければチャンネル登録をお願いします。また、よかったと思われた方は高評価を、よくないと思われた方は低評価をお願いします。どちらでもないと思われた方は評価するに値しないという意味で評価出来ないと評価をお控えください。また、コメントは頂けると今後の作品作りの参考になりますので厳しいご意見でもありがたく頂戴いたします。お時間の余裕のある方は私どもにご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します』という方がいいのではないでしょうか。どうも私は視聴者様に『低評価』の選択を与えないずるさを感じるのですが。これはおかしい考えでしょうか?」
まさにその通りだと思う飯塚。
「神内さんのおっしゃる通りです。賞賛も批判もありがたく頂くのが本来の姿であると思います」
「確かにおやじの言う通りやな。『仁義』は控えていただくものやからなあ。難しいなあ」
「『来週もまた見てください』って言われてもなあ」
「『この後、まさかの衝撃が』とかCMでやたら引っ張るけど、そういうので待ってまで見て『なんじゃこれ』とか多いもんなあ」
「『明日もまた見てくれるかな?』は見るけどなあ」
「あれは見るよなあ」
え?あれを毎日見てるんですか?とちょっと驚く飯塚。
「むしろ白黒ハッキリつけてくれた方がええよなあ」
「そやなあ。低評価ばっかりならそれはそれで反省材料になるし。それを『高評価お願いします』って媚びるのは違うなあ」
正論だ。まさに正論だ。と思う飯塚。昔気質で屈強な組員たちはやはり筋が通っている。
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