第8話ご苦労様です!

「ご苦労様です!」


 飯塚に両手を両膝につけ、頭を下げながら挨拶をする『肉球会』の組員たち。恐縮する飯塚。


「あ、失礼します!飯塚と申します!今日はよろしくお願いします!」


「よろしくお願いします!」


「わざわざご足労すいません。どうぞこちらへ」


「失礼します。お茶とおしぼりです」


「コーヒーの方がよかったですか?冷たいお茶もありますんで」


「灰皿です」


「いえ、お気遣いなく…」


 飯塚に失礼のないよう動く組員たち。地元では有名な暴走族『藻府藻府』九代目ヘッド京山のツレである飯塚も肝っ玉は据わっている方だがさすがにビビる。住友がフォローをいれる。


「先日はどうも。改めまして健司の上司をやらせてもらってます住友です。本日もご無理を申し上げまして。それを快く引き受けていただきありがとうございます。他の連中もどうも不器用なもんで。今日は遠慮なくご指導のほどよろしくお願い致します」


「はい。こちらこそ、どこまでお力になれるか分かりませんが何卒宜しくお願い致します」


「こちらがうちの社長の神内です」


「初めまして。神内と申します。本日は大変なご無理を聞いていただきありがとうございます。あ、座ったままで大丈夫です。どうぞ楽にしてください」


 『肉球会』組長神内からの丁寧な挨拶に立ち上がって頭を下げる飯塚。両掌に汗を感じる。


「じゃあ、住友。仕切ってくれるか」


「はい。飯塚さんもすでにご存じのように私どもは今後、『ユーチューブ』で収益を得たいと考えております。ただ、いかんせん全くの素人でして。今回ご縁がありまして、実際にその世界でご活躍されておられる飯塚さんにいろいろとご指導いただきたく本日はお時間いただいた次第でございます。私も含め、飯塚さんにお聞きしたいことを用意しておりますので。くだらないことをお聞きすることもあるかもしれませんが何卒よろしくお願い致します」


「はい。僕も出来る限り皆様のお力になれるようにと今日はお邪魔させていただきました。皆さんが目指されている『ユーチューバー』には足元にも及ばない無名な存在ですが、こちらこそ何卒よろしくお願いします」


 飯塚も住友同様、愛煙家だがさすがにこの場でタバコを吸う気にはなれない。言葉は冷静だが体中に変な汗をかいている。組事務所に入るのも初めての経験であり、ましてや明らかな筋ものたちに囲まれれば、いくらツレである京山が同席していようと、お気遣いなく振舞うことは不可能である。『肉球会』が堅気の衆に対して絶対に乱暴なことや理不尽なことなどしないことは知っている。それでも嫌な汗をかいてしまう。


「じゃあ、順番に質問のあるもの」


 住友の言葉で会議がスタートする。

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