第7話くれぐれも失礼のないように

 『肉球会』の事務所に組員が集まる。


「そうか。ぼったくりか」


 神内組長が口調こそ変わらないが厳しい表情で言った。


「すいません!わしがしっかりシマウチに目を光らせてなかったからです」


 若頭である住友がすぐに大きな声で言った。


「いえ!おやじ!かしらが悪いんではなく、自分らがしっかりしてなかったからです!」


 若頭補佐である裕木の言葉に他の組員も同じような言葉を発する。神内同様、厳しい表情で舎弟頭である二ノ宮が言う。


「これは他にも出てくるかもしれんなあ。他の組織かもしれんし、今は『半グレ』か?まあ、今回の件で、もう一度襟を正す意味でもシマウチをしっかり見張るように。ええな。『肉球会』の看板、兄弟のメンツにかけてもそこは徹底するように。ええな、住友」


「はい。おじき。『徹底』します」


「それについてはとことんやるように。あと、必ず報告は迅速に。この件は以上だ。で、例の新しいシノギの件やが。みんな考えてきたか」


「へい!」


 今日の集まりまでにそれぞれが『ユーチューバー』について勉強し、どんなことをすれば人気ユーチューバーになれるかアイデアを考えてくることになっていた。神内組長が続ける。


「幸いにも健司のツレで現役ユーチューバーをされている飯塚さんというお方がこの後、お見えになられ、いろいろとご指導いただける段取りになっておる。分からんことや質問があればどんどんするように。くれぐれも失礼のないように。分かったな」


「へい!」


「じゃあ、後の仕切りは住友に任せる。ええな。くれぐれも失礼のないように」


「分かっております。お、健司。飯塚さんはこの後お見えになるんやな。本当にお迎え出さなくてええんか?」


「はい。そろそろだと思います」


「すまんな。他にもうちのフロント企業にも詳しい人間は何人かおったが現役ユーチューバーである飯塚さんが一番適任だと思ったんで。ええな。おやじが言ったように飯塚さんはわざわざわしらのために足を運んでくださっている。それに堅気さんや。失礼のないようおもてなしするように」


「へい!」


 京山の携帯が鳴る。


「すいません。飯塚からです。失礼します」


 電話に出る京山。


「ちょうど到着したそうです」


「おい、お前ら!お出迎えや。繰り返しになるがくれぐれも失礼のないように」


「へい!」


 屈強な男たちが立ち上がり、堅気の飯塚を出迎える準備をする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る