第1話




(飛雄馬)



自分はいつからこんな人になったんだろう、って最近思う。というか、最近なんだけどさ。


最近は、他校の人で、同じ中学の人だけど、高校生になってから急激に仲良くなった人と、体だけ、関係を持っている状態が続いている。


単純な男は、それについて行かないわけがないだろう。付き合えなくても、好きな人のこと抱けるんだから。俺も単純な男の1人だ。その言葉に、ついて行った。



それから2ヶ月くらい経っただろうか。そろそろその女の子とも色んな意味でマンネリ気味だ。まあ、俺もこれ以上相手に何も求めるものもないし、この辺かな、とは思う。






そんなある日の、放課後のことだった。

部活終わり、教室に忘れ物を取りに行ったあと、玄関にて


「飛雄馬?」

と声をかけられた。


「萌奈か。…いつぶり?」

「高校上がってからまともに話した記憶ない」

「確かに。特進と教室全然離れてるもんね」


彼女の名は、小山萌奈。同じ中学出身で、西星高校の特進科の1年生。小学1年生から中学も同じで、中学の女子の中ではかなり仲良いほうだった。


というか自分の通っていた小学校は小規模学校というのもあり、学年にほんの数人、全校生徒の数も40人いるかいないかの学校だったから、仲良いってのもある。



…そして俺たち、過去に色々とあった。



「話聞いてるよ。最近ヤリチン化してるんだってね」

「別にそんな大人数と関係持ってる訳じゃないし」

「でもヤろって言われるままにヤるあたり」

「どこまで知ってんの」

「全部。だって聞いてるもん本人から」



こいつは…。ったって萌奈も変わらんけどな。


「そういう萌奈も人のこと言えないらしいじゃん。…あ、別れたのか」

「うるせ。悪かったね、」



つーか今思えば俺たち似た者同士だよな。萌奈だって前まではこんな人じゃなかった。俺の友達と付き合ってたけど、純粋で一途な人だった。変わったのは、俺とのあの日以来だろうな。



「でも俺はもうやめるつもりだけど。このままじゃ前向きすらできないもん」

「その通りだと思うけど。飛雄馬はまだ救いようがあるね」

「なに、萌奈は救いようがないの?」

「そういう訳じゃないけど。」



まあ中3の時、あんなことになった相手なだけあるわ、萌奈も。




俺と萌奈は昔から家族ぐるみの仲で、お互いの家に行き来することも多かった。料理を持っていったりとかでもね。


それで中3のある日、ノリで体を重ねたことがある相手でもある。それがお互い初体験だったし。でもそれっきりで、次の日以降は何もなかったかのように接していた。今もそう。






このまま一緒に帰ろうってことで、バスも一緒、バス降りてからも話しながら歩いていた。


部活のことや、お互いのクラスのことなどを話して。ちなみに萌奈も中学時代はソフトテニス部でした。





「なんか、カップルみたい」

と萌奈が笑いながら言う。


「確かにな。でも萌奈とこう歩いてたら1年前思い出す」

「…そういうこと思い出さなくて良いのに」

「思い出しちゃったんだよ、フラッシュバックされちゃった」



俺と萌奈がノリで一線を超えてしまった時も、こうやって一緒に下校した日だった。時期もちょうど1年前だろう。恋バナとかしてて、そこから俺たちも、してみる?みたいなノリだったから。




「ノリであんなことできるなんて飛雄馬くらいだからね。」

「俺ならできるんだ。」

「できたのが1年前じゃん」

「じゃあ今は?」

「…それは、知らない」

「そしたら、してみる?」



俺がふざけて言った言葉に、びっくりして言葉が出てこない萌奈。


俺も半分冗談だったけど、そんな萌奈の様子を見て心に火がついてしまった。単純な男だからな。全部そういう方向に流れでしまう。



「冗談だから、って言おうと思ったけど、そんな顔されたらマジになるから。」


そして、俺は萌奈のことを後ろから抱きしめた。理由は、特にないけど。

俺も、欲求に満ち溢れた男なんだ。ああ、どうにかしたいわ、本当に。




なんて思ってたら、萌奈はその場で泣き出した。


「あ、ごめん、悪かったって」

「飛雄馬は悪くない。私が勝手に泣いてるだけ」

「どうして。」


俺の問いには、萌奈は答えなかった。




「ごめん、ここから1人で帰るね」

と言われ、萌奈はそのままダッシュで俺の元を去った。






この時の萌奈の行動の意味を知るのは、数日後の話だった。




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部員の恋愛ノート☆ 凪沙 @nagisa_sei

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