第2話
12月の、中頃の話。
この日は平日ながら地区予選が行われた。そのあと、一部の部員でご飯を食べに行くことになった。
少し、恋バナになった後。
「そういえば告白ってまだしてないの?」
と、チームメイトの柴敦貴に聞かれる。
「いや、まだ」
「えーなんでー?」
「なんでって別にそんな簡単にできるもんじゃねーだろ」
と話していると、俺が最近恋しているという話を知らない人達が、え、何何?と話してくる。知ってるの、部員の中でも真宙と敦貴と飛雄馬だけだったりするから。
「え、良則好きな子いるの?」
と先輩たちまでつっかかってくる。
「しかも2年生なんですよ、」
真宙は余計なことをばらすし。
「でも今まで割とモテるから恋愛できたって感じだったけど、良則から好きになるって話新鮮な気がする。しかも年上って」
と2年生の恭太先輩に言われる。
まあ実際そうだ。中学の時は告白されて付き合ったことが2回。
でも、自分から人をこんなにも好きになるって人生で初めて、かもしれない。今までは自分の中では可愛いなーと思う程度だった人はいたけど。
「でも良則は告白したほうがいいと思う」
と敦貴に言われる。
「そう思う?」
「そこまで好きなら絶対したほうがいいと思う。結果はどうであれ、そこまで本気なら、振られるより告白しないままのほうが絶対後悔するから。って俺の経験談が言う」
敦貴もたしか中3の時好きな人がいたのだが、告白できずに終わったと言う。というのも、告白しようか悩んでずっと引きずってたら、相手に彼氏ができてしまったと。それで結局言えないまま終わったようだった。
「で、その後悔が未練に繋がるから、ずっとモヤモヤしっぱなしなのさ」
結果的に、恋愛って難しいね。特に、追いかける側だと。
「まあ、冬休み前には、告白できたらな…」
と言うと、みんなに お?! と言われる。
「頑張れよ、相談ならみんな乗れるから」
矢口先輩にも言われる。意外とこの部活、恋愛経験濃い人多いからな。
そうして時が過ぎ、二学期終盤が迫ってきた。世間はクリスマス前だ。
もう冬休み。その冬休みは合宿がある。今年は選抜予選が2月開催のため、冬休み中に大会がないのは珍しいらしい。
この日は図書当番ではあるが、部活がオフなので、放課後の掃除当番を終えたあとはそのまま帰宅となる。
「あれ、今日部活ないの?」
と美紅先輩に聞かれる。
「今日はないですよー。だからこのまま帰れますよ」
「途中まで道一緒だよね?一緒に帰る?」
「そうしましょー。多分話すのも二学期最後だと思うし」
少しだけとはいえ、方向が同じなのである。なので、その少しまでの間、一緒に下校することになった。
…正直これは、チャンスだと思った。
「そういえば、もうクリスマスか…」
と呟く美紅先輩。
「俺はクリスマスも部活ですよ。いや、部活しかないですね」
「それが部活生の宿命だよね。私も中学の時クリスマスに大会あったりとかしたなー。」
なんて他愛のない話をしたり。
今、言うべきなのか言わないべきなのか。
話しながらずっと、そんなことばかり考えていた。本当に、どうしようと。
でも、冬休みまでに言うって決めたんだから言うしかない。それも、今しかない。そう思って俺は、勇気を出した。
「俺、美紅先輩のこと、好きです。」
と俺は言うと、
「え?!」
とびっくりする美紅先輩。
「ごめんなさい、急に。俺、最初からずっと美紅先輩のことは可愛いし話しやすいとは思ってたんですけど、気づいたら好きになりました。過去の恋愛でこんなに人を好きになったことないってくらい、今は本気で美紅先輩のことが好きです。」
後半は勢い任せで、言葉もおかしくなってしまったけど、全部言った。美紅先輩はびっくりしたあと、黙っていた。
「正直、私、良則くんのことはただの後輩、としか思ってなかったの。恋愛対象に見ることができなくて。なので、今回はごめんなさい。でも、ありがとう。」
…結果は振られてしまった訳だけど、でま、この、ありがとう、と言われた時の笑顔を見て、もっと好きだと思ってしまった、なんて。
「ありがとうございます。でも、これからも仲良くしてほしいです」
「当たり前じゃん。三学期もよろしくね」
そのまま分岐点に着いたので、ここでお別れ。そして、二学期が終わるのと同時に、俺の恋も終わったのであった。
「うう…、」
1人になったあと、突然涙が出てきて、そのままその場で号泣してしまった。
今までの恋愛経験だと、こういった辛い思いをすることはなかった。どうしてかって、自分から面と向かって向き合おうとしたことはないから。全ては流れで何とかなっていたから。
でも、そんな自分をここまで本気にさせてくれたのが今回の恋。恋愛で泣いたのは、本気で泣いたのは初めてだった。
「自分で思ってたよりもずっと、本気だったんだな、俺のくせに」
とつい1人で、呟いてしまったくらい。
でも、俺自身成長できたと実感できる恋だった。好きになって良かった、と思う。
そしてこの時の俺は知らなかった。今後、この話には続きが生まれたことをーーーーーーー
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