第3話
告白して、振られたけども、後悔は全くしていないし、むしろして良かったって心から思える。告白する勇気を出してくれた仲間にも感謝だし、だからこそ振られたってことはその仲間にはすぐに伝えた。
あれから1ヶ月程経つけど、正直、立ち直れていない。簡単に忘れることができない。どうしたものか。
完璧に、今までの自分の恋愛観をぶち壊されている気がする。むしろこれが、自分の本当の恋愛のやり方なのか。
中学時代の自分の恋愛は、何だったのか、って思ったよね。
冬休み入ってすぐに、真宙たちが慰め会みたいなのを開いてくれた。そこで俺、また泣いてしまったし、恋愛に対する本音なども全部言った。
「でも、本気の恋を見つけたっていうのは、素晴らしいと思う」
と真宙に言われる。
「たしかに俺も良則見てたら、自分の恋愛観とか考えるようになったもん」
と飛雄馬まで。
「いや、俺そんな参考になるような事してないよ?!」
「それがなってるんだよ。これが本気の恋愛なのか、って思った。」
自分でも実感しているし、周りも言っている。それくらい俺の美紅先輩へ対する想いは、とても大きいものなんだと。
そう思うとまだ、好きが消えないんだよなぁ。振られて冷めるなんてありゃしない。
なんて思っていながら三学期に突入し、最初の登校日の出来事だった。
この日は部活があり、終わると夜の19時。部活を終えてスマホを見ると、メッセージが1件。それも、20分前だった。
「ソフテニ部活やってるとこ見たけど、部活何時までかな?終わったあと、話がある」
と言うメッセージが、美紅先輩から送られていた。
突然のことでびっくりした。あの日以来、メッセージでも話してもなかったし。
とりあえず俺は会うことにした。美紅先輩はずっと居残りしていたらしい。その時に、俺らが部活をしている姿を見つけたようだった。
普通科のフロアに行き、先輩のクラスである、2年C組に行くと、美紅先輩が1人で教室の中にいた。
「あ、ありがとうね、急だったのに」
「いえいえ、というかびっくりしましたけど…」
「だよね、ごめんね。あの日以来話してなかったのにいきなり」
今2人きりだしここで話すね、と言われ、そのまま教室内で話を聞くことになった。
「良則くんの告白のことなんだけど、あの時はすぐに断ってしまったけど、断ったの撤回して、一旦保留にしてもいいかな、って、随分勝手なことを思ってるんだけど」
「えっとそれはつまり、どういう意味で…」
「1から向き合い直したい。そして、そこからちゃんとした答えを出そうと思う。」
つまり言うと、俺にもまだ光はあったということだ。
「正直告白断ったの後々になって後悔していたの。それまで恋愛対象として見れないのは確かだったけど、でも良則くんなら本気で向き合うことができたら、可能性はあると思った。本当に自分勝手でごめんね」
そんなの、NOとは言えないよ。むしろ、ありがとう、としか言えない。
振られてからずっと忘れられてなかったけど、それでも良かったんだ。
「俺は、今も変わらず…いや、振られた時より今の方がもっと好きですよ。だから、待ってますね」
「…ありがとう。よろしくね、」
「ちゃんと惚れさせて見せますね」
「なにそれ、」
こうなりゃ、俺が頑張るしかないよな。
美紅先輩が俺に惚れるようなくらいの、男にならないと。
「だから、先輩後輩関係なく話したい。敬語外して、美紅って呼んで欲しい。私も良則って呼び捨てで呼ぶから」
「…いいんですか?じゃあ遠慮なく行きますよ?」
「むしろ遠慮いらないから。もっと仲良くなりたいからさ。」
もうとにかく嬉しすぎて、にやけ散らかしてる気がする。1ヶ月くらい経つけど、ずっとどん底な気分だったから。
「じゃあ、改めてよろしく、ね」
「よろしく。」
…中々照れくさすぎてすぐには慣れないけど。
美紅って、呼び捨てで呼べるかな。……頑張ります。
「このまま、一緒に帰りたい」
と俺は言うと、
「いいよ。久しぶりに話そう。」
と快く了承してくれた。
帰り道、他愛ない話をしたあと、美紅からある話をされた。
「言い訳に過ぎないことなんだけどさ。良則のこと、恋愛対象として見るのが怖かったっていうのもあるんだ。こんなに優しくて笑顔で、私が出会った中でも1番素敵な男性だったから、このままの関係で良いって」
と。
親密になった男性とは最終的に悪い方向に関係が進むことが多い、ということは以前から聞いていたから。そう言うことなんだろう。
「なんか、嬉しい話だね。そこまで言われたら俺も、もっと良い男になれるように頑張る。今まで美紅のこと傷付けてきた男の人なんかよりも、美紅のこと沢山幸せにしたい。」
なんてカッコつけて言ったけど、呼び捨てに慣れてないし、恥ずかしいこと言っちゃったし、数秒後に結局、顔を真っ赤にしてしまった。
「顔真っ赤だね、良則」
「ごめん、こういうの慣れてなくて。自分からこんなに女子のこと好きになったの、初めてだから。」
過去の自分だったら絶対にしていなかったし、言ってなかったことだろう。
「本当に、ありがとう。」
「こちらこそ。本当に嬉しかった。」
そしていつもの分岐点に着き、バイバイ、と言って別れた。
それにしても、今の自分はとてもにやけちゃっていると思う。それくらい、幸せな気持ち。
俺の恋はまだ、終わっていなかった。
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