不思議の国の魔法使い。
まず初めに、ここは不思議の国では無い。
そして、アタシは魔法使いじゃない。
魔法なんて本の中のモノ。科学が発達したこの世界にはファンタジーは必要ない。でもアタシはそんな世界で魔法を見た!
アタシが幼稚園に通ってた頃の話。ある日アタシは大きな物音で夜中に目が覚めた。いつも隣で一緒に寝ているはずのお母さんがいなくて不安になって体を起こして周りを見た。そしたら見えた、魔法が!
ゆらゆら、ふわふわ、浮かぶ、揺れる、お母さん。
暗くて見えなかったけれど確かにお母さんは宙に浮いていた。足を床につけないでふらふらと揺れていたんだ。だからアタシはすごく驚いた。
…アタシのお母さんは魔法使いだったんだ!
それからアタシはお母さんに会えなくなった。みんな心配そうにアタシに声をかけるけどアタシはちゃんと知っている。アタシのお母さんは魔法使いになったから魔法使いがいる不思議の国に行ったのだ。だから、なにも怖くない。お母さんが死んだ訳じゃないから。アタシも魔法使いになればまた会えるから。
回想シーンは終わり。時は戻って現在。
アタシはあれから魔法を見ていない。
アタシも魔法使いになれていない。
おかしいな、お母さんが魔法使いならアタシもそうなれると思ったのに。いつまで経ってもアタシは魔法使いになれない。
やっと、アタシは魔法使いになる方法を思いついた。お母さんみたいに宙に浮かぶ、空を飛ぶ魔法を使う方法を。
12階建てのマンション屋上。フェンスを乗り越えその先へ。あとは簡単。大きくジャンプ!
真っ逆さまに落ちていく。
ふわふわ、ゆらゆら、アタシ、空を飛んだ!
飛べた!魔法を使えた!
アタシはついに魔法使いになれた!
普通だったアタシの世界の閉幕。
これでアタシは魔法使いのいる不思議の国に行ける。冷たくて、真っ暗で、ものすごく痛いけど、お母さんに会えるなら、なにも怖くない。
アタシは魔法使いだから。
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