きっと、ぼくは友達になれると思ってた。
ぼくには友達がいる。最近よく会う友達だ。
特に約束をしている訳では無いけれど毎日同じ場所で会う。仲が良い訳では無い、かと言って悪い訳でもない。そんなぼく達の関係は友達と言うのが丁度良かった。
友達はぼくの家を知っていて何も言わず、ぼくを訪ねてくる。そしていつも驚くことに気が付くとぼくの部屋や家の台所にいる。不思議なことに友達は足音1つしない。歩くのがゆっくりで静かなのだ。それから友達とぼくは握手をする。ぼくらの挨拶みたいなもので会うたびにしている。しばらくすると友達はいなくなっていて、これまた驚く。帰る時も何も言わない。無口でゆっくり歩くぼくの友達。
友達はいつも決まって雨の日に来ていた。雨が好きらしい。雨の日は気分が下がるし、湿度が上がって過ごしにくいのに、なんで雨が好きなのだろう。ぼくの友達は不思議だ。けれど最近、ぼくの友達は雨の日じゃない日も来るようになった。今まで晴れている日は滅多に来なかったのに…。なにか心境の変化でもあったのだろうか、ぼくの友達は何も言わないから分からない。
ぼくは友達と会う度に握手をする。これはぼくと友達の挨拶みたいなもの、そしてこれがぼくと友達の会話。コミュニケーション。互いに触れ合って確かめ合う。今日もぼくの友達は生きている。
今日、ぼくの友達は外にいた。珍しい。昨日の夜に雨が降っていたからだろうか。学校に行く途中にゆっくりと歩いていたから驚いたけれど、隣を歩いていたぼくのトモダチはもっと驚いていて離れるように後退りしていた。そんなに驚かなくてもいいのに。ぼくの友達はぼくらには目もくれずゆっくりと歩く。
「気持ち悪っ、わたしアレ苦手なんだよね…」
ぼくのトモダチが呟いた。
「そうなんだ」とぼくは返す。
ぼくの友達は嫌われやすい。
湿気が好きで無口で進むのが遅い。
塩とお湯が苦手。
好きな物は知らない。
うーん、やっぱり
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