第2話 隣の席の委員長

席に着いて授業で使用する教科書を準備していると、一人の男子が話しかけてきた。


「噂はマジだったんだな、仰」

「まぁ、ね……。誠哉も耳が早いね」


牧志誠哉。高校1年生から3年生まで同じクラス継続中の俺の親友、いわゆるマブダチである。

身体は細く引き締まっており、明るめの茶色の髪、柔和な笑みを浮かべるイケメンであるコイツは限りなくモテる。

実際うちの高校の近くの女子校に同い年の彼女がいて、それは多くの人の知るところである。


「朝来てみれば誰もが話してるんだ。そりゃ嫌でも分かるってまでもんさ」

「まぁ莉子は何かと目立つからね」

「はぁ。まさかとは思ったがまだ気が付いて無いのかよ。ま、その純粋さがお前の良いところでもあるんだけどな」

「へ?誠哉、それどういうこと?」

「さぁな。ま、頑張れよ。これから大変になると思うしな」


そう言って誠哉は自分の席に戻っていく。俺は窓際の一番後ろだが、誠哉は廊下側の一番前と真反対だ。

俺は1度止めていた準備を再開する。

すると


「おはよう!仰くん!」

「おう、美波。おはよう」


挨拶してきたのは結城美波。

俺の右隣の席に座る女子で、クラス委員も務めている。

彼女も誠哉と同じく3年間一緒のクラスの一人で、一応互いに下の名前で呼び合う仲である。

肩辺りまで伸びた綺麗な黒髪、おっとりした癒し系の顔、しかしスタイルは良い。出るところは出て、細いところは細い。

そしていつもオシャレな眼鏡をつけている。

誰が見ても納得するレベルの美少女である。


普段なら朝は挨拶をしたら他愛ない会話をしたりするのだが今日は違った。

何やら美波は隣でスマホを握りしめて何やらブツブツと呟いている。

なんか辛いことでもあったのかと思っていると、突然美波がこちらを振り向いて言った。


「あ、あのっ!仰くん!」

「お、おう。どうした?」


突然の美波からの呼びかけに驚いてしまうが、美波の目はなんというかガチだった。

そして続いた言葉は、先程の名前を呼んだボリュームとは真逆、静かな声で囁くように言われた。


「莉子さんと別れたってほんと?」

「あぁ、本当だよ。俺には飽きたんだってさ」

「そ、そうなんだ……。(やった……!)」

「ん?なんか言ったか?」

「な、なんでもないっ!」


すると丁度チャイムが鳴り、現代文の教師が入ってくる。

俺と美波はそこで会話を中断して授業へと意識を向けた。

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