魔女の後継者（廃稿）

第4話 村雪有紀

　アイナの言葉を聞いて、二人は椅子に腰を下ろした。

　達也はアイナが何を聞いているのかわからず、戸惑っていた。

　そして、テーブルの上で肘をつき、両手の甲に顎を乗せて、彼女は言った。

「あなたの欲望は何だか？ 」

　質問されても達也は答えず、アイナは返事を待った。彼は自分の欲望が何なのかわからず、心の中で自問自答していた。

「私の欲望は......」

「わかない。」

「！ 」

　自分の欲望が何なのかすらわからない人がいるという彼の答えに、アイナはショックを受けた。

　彼は言い続けた。

「自分の願望がわかったら、教えてあげよう！」

　それを見たアイナは口角を上げて笑顔になり、アイナは「面白い！」と言った。

　笑い終えると、彼女は椅子から立ち上がって空き地へと歩いていった。

　達也も椅子から立ち上がってアイナのところに歩いていくと、アイナの意味がわかった。

　達也は、後継者になるためには何をしなければならないのかとルナに尋ねた。

　彼女は簡単に言った。

「地面にひざまずいて魔女に額にキスされるだけでいいんだよ。」

　ルナは冗談だと思ってエミリーに聞きに行ったけど、まさか同じことを言うとは思わなかった。

「地面にひざまずいて魔女に額にキスされるだけでいいんだよ。」

　達也は後継者になるのは難しいと思っていたが、意外と簡単になった。

「方法を知っておくべきだよね？」

　念のため、アイナは式が始まる前に達也が次に何をすればいいのかわからない時のために、達也に尋ねる。

　達也は次に何をしようとしているのか分かっていると言って頷いた。

　彼がうなずくのを見て、アイナはウインクした。 その目には真剣さが表れていて、それが達也の寂しそうな顔を真剣な表情にしていた。

「儀式を開始しく。」

　達也は片膝をついて、わずかに頭を上げ、目を閉じた。

　アイナも目を閉じて、少し身をかがめて達也の肩に手を置いた。 唇を彼の額にゆっくりと押し付けるようにして、彼女の顔はゆっくりと達也に近づいていった。

　アイナが額にキスをすると、彼の周りに円形の黒い光が現れた。 円形の黒い光が二人を取り囲んだ。

　額の柔らかな感触が達也の心に届いた。その瞬間、達也は静かに目を開き、アイナの顔に触れそうになり、達也は心の中で言わずにはいられなかった。

「蓋を間近で見たのは初めてだったのだが、有紀にとてもよく似ていった。 こんなに綺麗な方だとは思わなかったし、唇も柔らかかった。」

　アイナは目を開け、ゆっくりと頭を後ろに引き寄せて背筋を伸ばした。 唇が額から離れると、彼女の周りの黒い光が消えた。

　達也が立ち上がって手で額を触ると、アイナは彼の行動を理解できず、口を開いて言った。

「何をしているの？」

「こんなに唇が柔らかくて、有紀にそっくりだなんて信じられかない。」

「あなたは本当にエロだ。」

「何だ！私は男の子だ、それは抵抗でかない！」

　二人の冗談が終わった後、達也は自分の体の異変に気付き、真剣にそれを感じていた。

　達也は目を閉じ、魔力と呪力が飛躍的に上がるのを感じた。

「私の魔法と呪力...」

「魔力ストックと呪力ストックが増えったね。 魔力ストックと呪力ストックの株が上がったのは、2年間の修行の成果と後継者になった効果があったからだ。」

　達也は右手を上げて雷を放ち、それが何倍にも強くなったことを知り、アイナの言葉を確認した。

「では、あなたの願いは何ですか？」

　アイナの突然の言葉に達也の心は追いついていなかった。

「願い？」

「知らないのか？後継者になると、魔女から欲しい物が手に入りく。 1つしか手に入れることがでかないが。」

　彼女の説明を聞いて、達也もすぐに「必要ない」と言った。

「！」

　「必要ない」という言葉を聞いて、アイナはすぐにパニックになった。

「本当に必要ない、本当に？」

「必要ない、今は。」

　達也はポケットから霊符を二つ取り出し、アイナにそれを見せた。

「私はこれらの2つのエースを持っているので。」

　達也の手に握られた二つの霊符を見て、彼女は真剣な表情になった。

　この2つの霊符は非常に強力な魔力と呪力を持っており、1つは魔力でしか発動できず、もう1つは呪力でしか発動できなかった。

「わかった。」

　達也は2つの霊符を持ち帰り、儀式は終わり、ここには居たくないと、その場を離れることにした。

「アイナありがとう！他に何もなければ行く。」

　そう言って達也は引き返し、木戸の方へと歩いていった。

　ゆっくりと去っていく彼を見ながら、アイナはため息をついて言った。

「あとはお任せしく。」

「ありがとう！アイナ。」

　達也の足が木の扉から出ようとした時、その場で動きを止めて立ち止まった。

　聞き覚えのある声ですぐに振り向くと、背後にはアイナが立っているはずだった。 しかし、達也が見たものは。

　彼女は長い白髪をポニーテールにして、茶色がかった赤い瞳、薄紅色の頬、黒いスカート。

　達也が口を開くと、目尻からゆっくりと涙が流れ、頬から地面に滴り落ちた。 呆然としているのか、悲しんでいるのか、彼にはわからなかった。

　口を震わせながら言った。

「あなたなの？......有紀。」

「私よ。達也君。」

「改めて自己紹介しく、私は强欲の魔女、村雪有紀だ。 」

　達也はすぐに駆け寄ってきて、有紀を強く抱きしめた。 だって、有紀は幼馴染で、４年も会ってなかったんだもん。

「お帰りな！」

　有紀は達也に腕を回し、二人は二分ほど抱き合ってから腕を離した。

「もう死んでるんじゃないの？ なぜここにいるのか、なぜあなたは强欲の魔女なのか？」

「だって、私は600歳の魔女だから！？」

　達也は信じざるを得なかった。 有紀はまだ生きていたので、達也の前に立っていた。

「達也君に伝えたいことがあるんだ、よく聞いてくれ。」

「それは何だか？」達也は真面目に言った。

　有紀は急に真面目になったが、頬が深紅に染まり、とても恥ずかしそうにしていた。

　5分後、ようやく有紀が言った。

「達也君、600年も好きだったんだよ！」

「私は君が好きだ！」

　2年ぶりに会った幼馴染から突然の愛の告白に、達也は呆然と立ち尽くし、いきなり「えっ！？」

「600年前の私を救ってくれたからだ！」

　この時点で達也は、有紀が何をブツブツ言っているのかわからず、本当に立ち止まってしまった。