第4話  降参


おいら なに。


女の子 私ね、(小声で)コウカン日記してみたいの。


おいら 何言ってるか聞こえないよ。はっきり言えよ。


女の子 私ね、交換日記してみたいの。


おいら (びっくりして)ぶ、コウカンニッキ!?

  ダメ、だめ、絶対に無理! おいら、

    文章を今まで書いたことがないんだから。


女の子 そんなことないよ。私、おいらみたいな超絶文章が上手な人と

    ずっと前から交換日記をしてみたかったの。


おいら 無理、無理!


女の子  読書感想文で、なんとか大臣賞みたいなのもらってたじゃない。

   全校集会の壇上で、校長先生からこんな大っきな賞状もらって。


おいら (とぼけながら)そんなのもらってたかな。いつの話?


女の子 この間の夏休み明けのことよ。


おいら そんなこともあったかなあ?


女の子 何言ってるのよ。小学校じゅうで超有名な話じゃない。


おいら そうなの?


女の子 そうよ。


おいら おいらもやるときゃ、やるんだよ。

    でもさあ、交換日記なんて今どき流行らないよ。

  昭和までは確かにやってたかもしれないけど。

    今、令和だぜ。


女の子 密かなブームなんだから。


おいら そんなわけねえだろ。戦前までの話で今は化石になってるの。

  そもそも交換日記をするためのノートとか用意してんのかよ。


女の子  してるわよ。


おいら どこに用意してるんだよ。


  女の子、ポケットから手のひらにスッポリと納まってしまうくらい

  小さなノートを出す


女の子 はい。


おいら こんなに小さいの!?

   文章なんて書けないよ。

    一字書いたらページ変えないといけない位じゃん。

   ダメだめ!


女の子 じゃあ・・・。

   (と言って、ごく普通の大学ノートを取り出して)

   これでどう? ちゃんとしっかり書けるわよ。


おいら なんかこれはおいらのイメージとは違うなあ。

   おいらの文章は、大臣賞クラスなんだぜ。

   大臣っぽい日記帳とかあるだろ。


女の子  (四角い箱の後ろから)こんな感じの?

  (古めかしいダイアリーを取り出す)


おいら  (イメージ通りのダイアリーが出て来てたじろぐが)

  なかなかいい線行ってるけど、おいらはもっともっと文章を

    書き込みたいんだ。

  文章が次から次から泉のように湧いてくるんだ。

   そんな厚みじゃ、3日も持たないよ。


女の子 分かったわよ!!

  

  女の子、上手にはけて、馬鹿でかい巨大な本を持って来て、

  おいらの前に叩きつける


女の子 こんなのがいいの!!!!?


おいら (たじろいで) わ、分かった。分かったよお。ま、参った。もう降参だよ。

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