第二幕(会話)

第2話  裏庭

【会話モード】


  校庭の裏庭。四角い箱が上下一つずつにある。

  男の子がベンチ(四角い箱)に座っている。空を眺めている。

  そこに女の子が上手から入ってくる。


女の子  どう。


男の子 ・・・なんだよ。おまえか。なんだよ、どうって。


女の子 なんとなく。


男の子  なんだよ。どうしておいらの場所にくるんだよ。


女の子 秘密の場所でもなんでもないじゃない。ただの小学校の裏庭。


おいら ここはおいら以外ほとんど誰も来ないんだ。おいらの場所なんだよ。


女の子 おいらの場所ねえ。

    そう言われると、おいらの怨念が充満しているような・・・。

    (ころっと態度が変わり)というより、先生がそのおいらを呼んで来いって

    いうから来ただけ。おいらをね。


おいら おいらって、気安く呼ぶな! おいらにはちゃんと名前があんの。


女の子 名前なんてあったけ?


おいら 馬鹿にすんな。


女の子 授業が終わるとすぐにここ来てるみたいだけど、

    掃除にもクラブにも出ないで何やってるの?


おいら 何にも。


女の子  何にもって、何かやってるんでしょ。


おいら 何にもだよ。


女の子  用事がないなら、教室戻るよ。みんな掃除してる。


おいら おいらは掃除はしないんだよ。


女の子 そんなの通用する訳ないでしょ。


おいら おいらの主義なんだ。 


女の子 馬鹿言ってんじゃないの!


おいら そういえばよう・・・


女の子 何?


おいら 昨日、イベントがあっただろ。


女の子 (遠くを指さしながら)ああ、あそこの教会でね。


おいら (ある一点を指さしながら)

    あれ見て。誰か風船から手を離しちゃったんだろうな。

    教会の屋根の十字架のところに風船が引っ掛かってる。


女の子 2つ。赤と青の風船。


おいら 十字架に絡まってなかなか風船の紐が取れないんだよ。


女の子 そうね。


おいら あれが気になっちゃって。いつほどけるかなあって。

  すぐほどけそうなんだけど。

   (遠くを見ながら)あーあ、・・・逆に風で十字架に絡まっちゃってる。


女の子 あれは当分あのままね。

    それはそうと、さあ、さあ! そんなことに見とれてないで行くわよ。


  女の子が、おいらを連れて上手にはける。

  しばらくして、上手から二人が出てくる。


おいら なんだ、もう掃除終わってたよ。


女の子 さっきまでやってたの!


おいら おいら無駄骨だったよ。


女の子 おいらに言われたくないわよ。

    そもそもはおいらが悪いんだから。


おいら おいらのことをおいらと気安く呼ばないで欲しいね。

    おいらをおいらと呼ぶなら、お前は「あたい」だ。

  自分のことを「あたい」って呼べ!


女の子 あたいですって! 私は今まで自分のことを「あたい」だなんて言った

    ことはないの。それ、超ダサい。


おいら あたいって決めたんだから、あたいだよ。


女の子 私は、わたしです!


おいら (突然空を見上げて)あっあ!


女の子 何よ!?


おいら (客席上部を見上げて)・・・あっ。 赤い方の風船が飛んでった。


女の子 夕日もきれいね。


おいら  ・・・夕陽に消えてっちゃう。



女の子  (向き直り)

    ・・・そういえば、担任の青木先生、おいらのことを呼んでたよ。


おいら 何だって?


女の子 さあ〜~?。


おいら おいら、何にもしてないぜ。


女の子 さっきの授業出てなかったからじゃない。


おいら 授業くらい出なくったって関係ないじゃん。


女の子 小学生は授業に出ないと駄目なんだよ。大学生と違うんだから。


おいら 大学生の方が授業出ないといけないんだぜ。


女の子 どうして?


おいら  授業料掛かるから。

    小学生は無料だから、出ても出なくても親の懐は痛まないんだよ。


女の子 宿題一杯溜まってるよ。家帰ったらいっぱい時間掛けないと終わらないく

    らい毎日出てるんだから。


おいら あたいみたいに毎日キチンとやってるから、ドンドン宿題が増えるんだよ。


女の子 だから、あたいじゃないの!


おいら センコーと言うものは我々の敵なんだぜ。

   生徒を困らせることに快感を感じてるんだ。

   生徒が宿題をキチンと終わらせてくると、次はさらに量を増やして

    どうだー!って、試してるんだ。

    それを調子に乗って宿題をやるやつがどこにいるんだよ。

    他のみんなはあたいがキッチリ宿題をしてくるから傍迷惑(はためいわく)

    してんだから。


女の子 だから、あたい、あたいって言わないで! 

    ちゃんと名前があるんだから。


おいら あたいはあたいで、いいんだよ。


女の子 あたいなんて、偉そうに言わないでよね。


おいら あたいが嫌だったら、お前を「ウンコ」にしてやる。


女の子  「ウンコ」も嫌。


おいら 「ウンチ」より、いいだろ。


女の子 問題外!


おいら  じゃ!!! これからは「あたい」っていうことで。


女の子  いいいや(嫌)!! 


おいら いいの、いいの。


女の子 それより宿題してこないの「おいら」だけだよ。


おいら キチンとやってるのは、「あたい」だけ!


女の子 あ! そういえは先生がおいらを呼んでるんだった。


おいら だからセンコーに呼ばれるおぼえは全くないから。


女の子 単位、落としちゃうよ。


おいら 小学校に単位なんてないし。


女の子 退学になっちゃうよ。


おいら 馬鹿言え!


女の子 本当だよ、本当に退学になるんだよ。


おいら 小学校は義務教育だから、退学になんかならないの。

    そんなの聞いたことないよ。


女の子 え!? 知らないの?


おいら 本当か!?


女の子 嘘よ、つべこべ言わずに行くの!


  女の子 、おいらを押して上手にはける。

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