夜空・少女・人工の幼女⇒ギャグコメ

透き通る様な金髪、くるりと巻いた睫毛、ガラス玉の様な瞳、筋の通った鼻立ち。外国のお人形さんを一回りも二回りも大きくしたようなそれ。


一か月ぶりに家に帰ってきた父がキャリーケースにすしづめにして持ってきたそれは齢十何歳の可憐な美少女の私には少々お子ちゃまが過ぎるような代物だった。その不釣り合いな大きさをのぞけば。


私への誕生日プレゼント?ありえない。仕事人間の父が私の誕生日なんか覚えているはずがないわ。だけど…だけどついに父が奇奇怪怪な研究をほっぽり出して私達家族のためにサービスしてくれる心変わりを起こした可能性も否定は出来ないわね。それにしちゃセンスが悪すぎだけれども。


ここは聞くしかないわ。なるべく子供らしく。無邪気に。


「ただいまパパ~!これ何~?かわいい~!」


「おおエリカ、ただいま。これはね、エリカへの誕生日プレゼントだ!嬉しいだろ~~~!」


「え~ホント~!嬉しい!ありがと~!」


やはりそうね!父はついに私達家族に「家族サービス」なる物をしてくれているのだわ!正直このままいけば私の中の父のランクはポチ以下近所のおじさん以上になり下がっていた所だけれどもここで一気に株を上げてきましたわね!


贈り物のセンスに難がありすぎるけれどそんなもん後からでもなんとかなりますわ!大事なのは心ですわ!心!たとえしまむらで買った英字ペラペラTシャツだろうがバカでかい人形だろうがプレゼントしたいって心があれば十分ですわ!


「本当にありがとう!大切に飾るね!」


「おやエリカ。これは飾る物じゃないよ。耳の裏を見て。スイッチがあるだろう。押してごらん」


スイッチ…?飾る物じゃない…?嫌な予感がしてきましたわ。


「うん分かった!押すねッ!」ポチッ


キュイ~~~~~~~~ン…ドゴオッ!ブゥオン!ギュイギュイギュイギュイギュイイイイイイイイイイイイイン!


何ですのこれ。人形から鳴っちゃいけないオノマトペで溢れてますわ。


「何ですのこ


「危ないッ!離れろッ!」ガバアッ


カッコイイ…ってそれどころじゃありませんわ。一体何が


ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン…


「・・・・・・・・・・・・」


「起動に少々難あり…と。改善事案だな」


「何ですのコレエエエエエエエエエ!部屋が!窓がぶっ壊れましたわ!」


「紹介が遅れたね。こいつはうちの研究所で開発しているアンドロイド…きららちゃん一号だ」


「きららちゃん一号です☆キラって呼んでね☆」


キララじゃなくてキラですの…まさにKillerですわね…怖…


「よろしく☆エリカちゃん☆」


「な…なぜ私の名前を」


「エリカのデータは大体インプットしたからね。身長体重スリーサイズ好きな男の子まで。キラに聞けば何でも分かる」


この家にプライバシーってもんは無いんですの…


「製品化の前に実際に使用した時のデータが必要でね。そいつを集めるためにエリカに協力してもらおうって訳さ」


体のいい実験台じゃないですの!!!!!!!!!ふざけるなこの偏屈マッドサイエンティスト!!!!!!!!ですわ!!!!!!!!!やはりこの男に期待した私が間違いでしたわ!!!!!!!!!


「これからヨロシク☆仲良くしてね☆」


「冗談じゃないですわ!誰が貴方なんかと


「なかよくして…くれないの( ;∀;)?」


ぐ。。。かわいい。。。泣く子と地頭と幼女の涙には勝てんですわ…可愛さは正義…尊い…とても人工の幼女とは思えませんわ…てか泣く子と幼女の涙の意味被ってますわね…まあどうでもいいですわ。私もこのレベルの泣き顔を瞬時に出来る様にならなければですわね。完敗ですわ。


「そんなことないですわ。仲良くしましょう、キラさん」


「うん☆よろしくね☆」


「仲良くなれたようで良かった」


「へいへいよかったですわね」


吹き抜けになった部屋から夜空と星が見える。


ヒューン。


「あ…流れ星だ」


「この家が早く直る様願っておきますわね」


「なんで流れ星にお願い事するの☆?」


「流れ星にお願い事をすると願い事が叶うからですわ」


「すごーい!じゃもっと流れ星作って来る☆」


ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ


ボシュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ


「なんですのあの子…落ち着きがないですわね…ん?」


流星群。いや流星帯にまで見える程。夜空が流れ星で溢れた。


「きれい…ですわ…」


シュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ


「流れ星!沢山!作ってきた!☆」


「やべえこいつ」






おしまい

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