未定

@osora3

第1話

時間だけは平等だ。

なんて戯言を本気で言ってる奴は、きっと本当に辛い環境にいた事がないのだろうなって私は思う。

裕福な人間と貧乏な人間に同じ時間が流れていると?

かたや苦労を知らず、かたや幸せを知らず…

数字的には同じだとしても、内容は全然違う…

生物ってのは生まれた瞬間から不平等を押し付けられる。

平等に流れているはずの時間でさえも…


〜とある上空〜


「…い」

「おいっ!!」

聞き慣れた声が聞こえる。


「いくら戦地まで遠いからってボーッとするなよ」

「いつ敵の索敵範囲に入ってもおかしくないんだ!」 


マイク越しに溜息混じり話しかけてくるのは、同じ部隊の隊員である「アレックス」だ。

周りを警戒している素振りをしているが、彼も長い飛行でつまらないんだろうか

マイク越しからでも伝わる不服そうな溜息が時折聞こえてくる。

そのため息を聞いているだけで、こっちもイライラしてくる。


「あ、ゴメン…」

「あまりにも似たような景色が続くし、敵の反応もないんで考え事してた」


私も少し苛立った口調でそう返した。


私達は今、戦地へ向かっている。

味方の支援にでも行くのかって?

違う…

私達は傭兵だ。

敵でも味方でもない奴らの手助けに向かってる。

金が欲しさに…


「ホントにしっかりしてよ?」

「雇用主であるアイツらが死んだら一銭もはいらないんだからさ!」


こっちのウルサイのは、私の双子の妹の「リオ」だ。

私がクランシー・ニ・エーバ。

妹がリオート・ニ・エーバ。

正直どっちが妹で、どっちが姉かなんて誰が決めたんだろうか…

物心ついたときからいっつも一緒にいたし姉妹って事は鏡を見ればわかるけど、いつ生まれてどっちが先なのかもわからない。気づいたら私が姉になっていた。

仲はそれなりにいい方なんだと思う。この前も基地で二人で歩いてたら仲間に「お前らっていつも二人でいるよな」って言われた。別に意識してるわけじゃないけど産まれたときから二人で生き抜いて来たんだから自然と一緒にいることが多くなる。


「今回って結構報酬良いんでしょ?」

「私そろそろ新しいパーツ欲しいんだよねぇ」

「クランだってそろそろ変えたいでしょ?」


我が妹ながら能天気すぎる気がするが…

まぁ、確かにこの機体の所々''ガタ''が来ているところは多い。

反応も悪くなってきたし、いっそ新しい機体に変えたいくらいだ。


「あんたは、バカみたいに突っ込んでいくからすぐ壊れるんだよ」

「それに連れ回される私やアレックスのこと少しは考えて動いてよね」


「なっ…ホントにクランてば冷たいよねぇ」

「せっかく私がこのどんよりした空気を和ませようとしてるってのにさ…」


「別に頼んでないし…」

「むしろ…」


私が言葉を続けようとしたとき 


ビーッ!ビーッ!ビーッ!


けたたましいサイレンの音がコクピット内に鳴り響いた。

この音は敵機が近づいて来たときの音だ!


「敵機確認!!」

「数は…タイタンタイプが5機だ!!」


アレックスが嬉しそうに声を上げる。

タイタンタイプか…。

今回もつまらない相手のようだ。

タイタンタイプ…。

ここ数年流行りだしたBD(バトルドレス)で、よく見かけるがまともに扱えている奴をまだ見たことが無い。

性能は確かに高いが、その分パイロットの技術がお粗末になり最近は戦闘がただの作業となっていてつまらない。


「ようやく遊び相手が現れたみたいだなっ!!」

「退屈してた分楽しませてくれよ?」


アレックスがそう叫ぶと同時に機体の右手に装備してある滑空砲を2発放った。


ガウン!ガウン!


重々しく放たれた砲弾は、一発は外れたが2発目は命中した。

ドカンッ!と耳を覆いたくなるほどけたたましい音と同時に敵の機体は大爆発した。

どうやらエンジンをうまく撃ち抜いたようだ。


「どうだ!俺の射撃の腕はよ!」


「たまたまでしょ?」


アレックスが自身満々に発した言葉に対し私は冷たくそう切り捨てた。


「ひでぇな、少しくらい褒めてくれてもいいだろ?」


「褒める要素がない」


「私はすごいと思うけどなぁ…」


そんなやり取りをしていると、相手も打ち返してきた。


バラララッ!


相手の武装はマシンガンのようだが、やはり制御が上手くできていないのか全然狙えていない。

4機ともだ。まぁ、これだけ高速で移動していれば確かに当てるのは難しいだろうが、それにしたって下手すぎないか?


「そんなんじゃ、一生当たらないよ…」


私は、背中のサーベルを抜きながら呟いた。

属に言う刀って奴で刀身が細く切先が鋭くなっている。最初は色々使っていたけど最終的にこいつが馴染んだのでずっとこいつを使っている。


「恨みはないけど仕事だから…」


そういって急接近して、相手の胴体に向けて振り下ろした。まっすぐに振り下ろされた刀身は正確に相手の胴体を真っ二つ切り裂き、その"元"BDは綺麗な断面を見せながら空中の中に消えていった。


「あと3機…」









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