ウェント・ドス
昼
「…」
【目が覚めたか】
「貴様は…!」
【寝てろ】
「戦友の敵…がああっ!」
【毒矢だ。死ぬぞ。安静にしてろ】
[おじちゃんだいじょぶ?]
(自分の子供と被る)
「ああ…大丈夫だ」
[スープたべて!おいしいよ!]
(豆が入った薄いスープ差し出す)
「…ありがとう」
夜
「なぜ私を助けた」
【それが祖の教えだからだ】
「随分と暢気な宗教だ」
【人はմիջավայրը…人を取り巻く環境に総てを規定されている】
【個人は環境のいれもの。貴方に罪は無い】
「戦友に同じ台詞を吐けるか」
【それは…すまない。自分の身は総てに勝る】
「自己を守って戦争が出来るか」
【自己有りて初めて他人を守れる。祖はそう申された】
【貴方が居なければ守れない物…一つや二つあるだろう】
(子供と妻の回想フラッシュバック)
「…」
[ねー!ねむい!おはなしして!]
【分かった分かった!じゃあ今日はտիկնիկայինの話を―】
朝
【おはよう】
(主人公けだるげに起きる)
【今日の飯はԿարմիր հյուսիսային եղջերուだ】
「…」
【毒は無い】
(主人公かぶりつく)
「鹿…ではないな。獲ってきたのか」
【昨日の昼。猟の仲間は皆死んだ】
「…………………」
【Մի ատեք մարդկանց。個人は悪くない…ではないが。まあ大体そんな意味だ】
【彼奴らとも酒を酌み交わせば友になれると思っている】
「強いな」
【弱いさ。「そうあれかし」と思考を止めた】
【今はもう彼奴らを憎んでるかすら分からん】
昼
(一面のԿարմիր հյուսիսային եղջերու)
「すげええええええ!」
[おとななのにこんなんでおどろいて!バッカでー!]
【群れの大移動だ。冬に備えて南を目指す】
【今日は一頭獲ったら帰ろう】
「何!?十頭二十頭獲れば良いではないか!」
(子供あきれた目でこっち見る)
[バカだな~…食べきれないだろ]
「いやしかし!」
【いつでも獲れる物をわざわざ今獲る必要は無い。腹が減ったらまた来よう】
「…それで成り立っているのか」
【まあね。ここら辺は恵まれてるよ】
夜
(食後の食器カット)
[ふ~!腹一杯!]
【必要な分だけ喰えって言ったろ…全く】
「育ち盛りだろう?仕方ないさ」
[おじさんのゆーとーり!]
【分かった分かった】
(家の外観カット)
【…起きてるか?】
「ああ」
【星を見よう。酒もある】
「クソ…病人を…歩かせやがって…」
【着いたぞ】
「…………………」
【言葉を失ったか】
「これは…綺麗で…壮大で…荘厳で…」
【澄んだ星空とオーロラ。ダイヤモンドダスト。君達の言葉ではこう呼ぶんだったな】
「ああ…言葉は…しかし…これは…」
【この感情を表す言葉を私達は持っている】
「何だ」
【Հոգեբանություն】
「ウ…ウ…ウェ…?」
【Հոգեբանություն】
「ウェント…ド…?」
【Հոգեբանություն】
「ウェント…ドス…」
【少々違うがな。大体そんな感じだ】
「ウェント・ドス…か」
【気に入ったようだな。こいつはどうだ】
【ウチの麦から作った麦酒だ。うまいぞ】
「もう呑めないィ…」
【まだまだ青いな】
【…貴様の仲間を呼んで…私達の仲間も皆呼んで…この景色を見て…「ウェント・ドス」を感ずれば】
【貴様等と争わずに済むのではないか…毎日そればかり考える】
「ハハ…バッカみてえ」
【確かにな】
「嫌いじゃないぜ」
【そうか】
朝
バァァァン
「五月蠅いな…何だ朝っぱらから」
⦅○○!○○!無事だったか!?助けに来たぞ!?⦆
{怪我は無い!?毒矢に刺されたって!?}
「ああ…俺は…大丈夫…」
ザーッ《ゲリラ確保。色黒壮健。対処求む。you copy?》
⦅I copy. 拷問後銃殺。ご苦労⦆ザッ
{貴方を拉致したゲリラも捕まったって!}
「拉致…?私はあいつに助けられ―」
{ちょっとしっかりしてよ!}
{敵をわざと助けて寝返らせるのが彼奴らの常套手段って講習で何遍も聞いたでしょ!?忘れたの!?}
「わざと…?」
{そう!彼奴らは私達を沢山殺してる!只の詭弁家よ!}
「それは自分を守る為―」
⦅○○君⦆
⦅少々あちらの思想に毒されている様だ。少し休み給え⦆
夜
(ベッドの上 スマホで観光サイト見ている)
{見舞いに来てやったわよ~}
{観光サイト…そーいやここら辺オーロラが綺麗らしいわね}
「綺麗なんてもんじゃない…ウェント・ドス…」
{ウェント・ドス…?何それ}
「何…か。綺麗でも…壮大でも…荘厳でもない…超自然的…?」
{何言ってんのかサッパリだわ}
{疲れてんのよ。さっさと寝な}ガラガラ
「ウェント・ドス…」
おわり
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