Sword&Dragon

《は?有給?》

「…ハイ」

(15日納期!のカレンダーチラ見)


《…15に?》

「ハイ…」

《マジで?》

「ハイ…」


(競馬新聞見ながら)

《ま…いいけどさ。前日までにやる事やりゃね》

「アリガトウゴザイマス…」


(チャイム鳴る)

「お疲れ様です」

(二人話し合い集中⇒主人公見てない)


(バタン(扉が閉まる音))

《………》(不機嫌そう)




(コンビニ内)

⦅ありがとうございやした~⦆

(足早に去る 魔剤のアップ)


(扉開ける)


(靴脱ぐ)(缶ビール山のアップ)


「いただきます」

(納豆・ヨーグルト・レトルト飯のアップ)


「どっこいしょ」(机の移動)

(VR移動スペースを確保するため)


(VR眼鏡付ける)(ボタン押す)




ドワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

(でかいスタジアム LOLみたいな)

(中央で二人の剣士戦っている)


“あーっと決まった!WhiteSword選手の回し後ろ斬り!”

“どうですか解説の△△さん!?”

[フガフガ…]


【だりゃあああああああああああっ!】


“WhiteSword選手の勝利~!”

“決勝に駒を進めました!ではまた来週!”




(選手通路内)

【ふぅ…】

「お疲れ」

【ん?】


【あれ~BrackDragon!来てたの!仕事は!?】

「定時で上がりゃこんなもんだろ…」


【っしゃ飲み行くぞ!我を讃えよ!】

「へいへいおめっとさん」


(古びた屋台のカット)




(ガラガラ)

【おやっさん!二人席空いてる!?】

{あたぼうよ!…って!WhiteSword選手!?}


{ヨッ!期待の星!}

【いやいや…】

「おっさんそれセクハラやぞ」


⦅マジで!?WhiteSword選手!?⦆

⦅俺サイン貰いに行こ!⦆


⦅サイン!サイン!サイン!⦆

(WhiteSword選手苦笑いで対応)

(BrackDragon外に押し出される)


(BrackDragon席に座り様子見る 不満げ)


【遅くなった…ゴメンね】

「いや…いい。それより飲もう」

「ここは生牡蠣が旨い」

【知ってる】




【ゴクゴクゴクゴクゴクゴク】


【ブハ~ッ!この為に生きてるな】

「どっかで聞いた台詞…」


【ところで。どーよ調子は】

「まあボチボチさね」

【期待しとるよ~?日本3位さん?】

「日本1位に言われると煽りにしか聞こえん…」


【いやホントによ~?あのメンツで今もソードラ(Sword&Dragonの略称。二人がプレイしているゲーム)やってんの××位だからさ】

「…そうだな」




(回想)(5年前)

「っしゃあああああ!Sword&Dragon先行体験権ゲットォ!」


(深夜4時)

(魔剤飲むカット)


「カタカタカタ…成程。ダガー投げの射程が3.8m…」

(腕を振りながら(身体とキャラの動作が連動する))


⦅Challenger!⦆

「他先行プレイヤー…か」

「分からせてやりますか」

「†BrackDragon†の“力量”って奴をヨォ!」


(格好良いバトルシーン)

「…つええ…!」

「身体能力も反射速度も桁が違う…」

「俺の攻撃を“見てから”防いでやがるッ!」




⦅You Lose!⦆

「……………………」

【GG。目は良いが本体性能が足りんね】


「何者だテメエ」

【WhiteSword。格ゲーと剣道を少々】

「それでか…!」

【格ゲーだけじゃ身体が鈍るからね】




【ところで…あの技は何?】

【投げダガーの射程が伸びた様に見えたけど】

「あれは…グリッチみたいなもんだ」

「バトル中にコントローラーを投げると座標認識がバグって0.3m到達点が伸びる。それだけの話だ」


【え…投げるの?コントローラーを?】

「ああ」

【物理的に?】

「勿論。公式の3倍程度の長さの手首ストラップが必要だ」

【投げた後のコントローラーは?】

「手首ストラップを引っ張って手元に戻せば良い」

【そんなストラップどこに売ってんのさ】

「作った。材料はホムセンで売ってる」


【…アハハハハハハハハ!】

「何故笑う」

【このゲームさ。私の周りでガチでやってる人いないんだよね】

【VRだからかな。一緒に練習しない?】

「…良いだろう」




「…あったな。そんな話」

【あの時のスカした喋り方wwwwww】

【「…良いだろう(ドヤァ)」じゃねんだよwww】

「忘れてくれ…頼む…」


【で本発売から3ヶ月連続で日本ワンツーフィニッシュ!】

「ゲームの知名度が低すぎただけだろ」

【⦅おめでとうございます!⦆⦅強さの秘訣は!?⦆⦅仲間に入れてくれませんか!?⦆とかさ!まさにアイドル気分!】

「(聞いちゃいねえ…)」


「Black&Whiteギルド黄金時代…か」

(天井見つめながらタバコ)

「そういやKattyanはどうした?近頃顔見ないけど」

(ニヤケ気味⇒うなだれ顔)


【Kattyanは…結婚したんだって】

「マジか!あの女アバターで無限に自撮りしてたKattyanがか…」

「人間分からんもんだな」

「じゃSukekiyoは?」

【仕事が忙しいって】

「そうか…Albatrossは?」

【⦅俺はお前にはなれない⦆って言ってログアウトして…それっきり】

「…………………」

【…ハイ!この話は止め!飲も飲も!】




(××選手の部屋)

(カレンダー 15日に決勝!の文字と赤丸)

(1日~15日にチェック)


(ピピピピッ)

「よいしょ…っと」

(時計止めてのそのそ起きる)

「いただきます」

(レトルトご飯・納豆・ヨーグルト)


(戸を開けてランニング)

(帰ってVR機器付ける)

(対仮想WhiteSwordアバターと実戦練習)

(フェードアウト)




(スーパーのカツ丼のアップ)

「ごちそうさま」


(冷蔵庫空ける)

(魔剤一気飲み)


「どっこいしょ」(机の移動)

(VR移動スペースを確保するため)


(VR眼鏡付ける)(ボタン押す)




ドワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

(以下略)


(選手通路)

(無言 3コマ使う)

(心臓の音)


【よーっす!調子はどうかね】

(軽い笑み)

「ぼちぼちって所だな」

【そりゃよかった】




⦅試合開始!⦆

(右上隅に小さく)


【全 力 で 殺 せ る】

(顔のどアップで1ページ)

(般若・狂気・畏怖)




【デアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!】

(全力ダッシュ⇒面)

(受け止める)

ガキイイイイイイイイイイイイ…ン


「(攻撃が…重い!)」

「(本体性能が違いすぎる!)」


【オラオラオラオラどうしたどうしたどうしたァ!】

【私を倒すんじゃねえのかよ!】

【やってみろよオラァァ!】

(日本刀でひたすら斬りかかる)

(受け止めるのが精一杯)


【どうした!お前は!もっと!強かった!筈だろ!?】

(!に剣の効果音挟む)

【お前は!いつも!私の!想像を!超えた!何かを!やってくれる!】

【お前は!窮地を!絶望を!何回も!何回も!乗り越えた!】

【やれよ!yあってみろよ!オラアアアアア!】


「(泣いてる…?)」




ガキイイイイイイイイイイイイ…ン

カランカラン

(BrackDragonのダガーが吹っ飛ぶ)

(WhiteSword首に日本刀突きつける)


【おい…どうした】

【試合は終わってないぞ】

【まだ策はあるんだろ…?来い】


「(…気付かなかった)」

「(数年前の試合とはまるで別人だ)」

「(こんなにも多くの物を背負っていたのか…アイツは)」

「(…勝てない)」




【その目を止めろおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!】

【勝利を捨てた目!憐れみの目!畏怖の目!】

【Kattyan!Sukekiyo!Albatross!】

【私が剣交える者!すべからく私にその目を向け!】

【魂を抜かれた様に!Sword&Dragonから去って行く!】


(回想)

【え…?辞める?なんで?】

(俺はお前にはなれない)

(…………………)


ギリッ(唇かみしめる 血が出る)

【何故だ!私はただ強くあろうとした!それだけだ!】

【何故友達が!仲間が!私に心折られ辞めていく様を!見続けなければならない!】

【何度も!何度も!何度も!何度も!何度も何度も何度も何度も!】

【お前は違う!お前は強い!お前には才能がある!お前は永遠に私のライバルでいてくれる!そうだろう!?】




(BrackDragon目をそらす)

(諦観・畏怖・憐憫)


【…………………】

【…んざっけんじゃねえ!】

【あああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!】





(職場 カレンダーのカット)


(競馬新聞を読みながら)

⦅そういやさ。○○君は有給取らなくて大丈夫?15日⦆

「大丈夫です」

⦅そか⦆




(○○の部屋のカット)

(写真立てのカット)

(BrackDragon・WhiteSwordの2ショットスクショのカット)





おわり

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