違法広告

いっけなーい!遅刻遅刻!


私○○!華の17才!お茶目でチャーミングなママと脳髄に響くイケヴォパパとの3人暮らし!


“ああああああああああああああああ!!!”


そうそう、丁度こんな声―


“ママ!○○!愛してるぞ!幸せに暮らせ!ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!”


逆さのパパと目が合った。


グシャアッ




「こりゃどう見ても飛び降りですわ」


『死に際に家族の幸せを願う奴がか?』


「娘さんから話は」


『何の反応も無え。まるで屍だ』




【…………………】


『隣良いかな』


【私も死ぬ】


『何を―やめろ!』


ブチブチブチィ


『舌噛み切った位じゃ死ねんぞ』


【刑事さん…指…指!】


『こんなもんはな。骨さえ残ってりゃ簡単に直るんだよ』


【ごめんなさい…ごめんなさい…】




『殺す』


「JKの口に指突っ込んだあげく殺人予告ですかい。エリートの所業かね」


『17才が舌噛んで死ぬ世界なんざあっちゃなんねえ』


「同感で。ホシの見当は」


『事件時現場には誰も居なかった。ガイシャが「自分の意思で」「自分の意思に反して」跳んだってこった』


「禅問答ですかい」


『ガイシャの過去を洗え』


「了解」






『「同様の事件多数」「ガイシャは全員リストラ候補」。分かった。今日は寝ろ』


《次のニュースです。謎の飛び降り事件多発。映像をご覧下さい》


《“ママ!○○!愛してるぞ!幸せに暮らせ!ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!”》


《一連の事件を一部では「家族愛自殺」と呼び―》ブツン


『魂の叫び…か』




『どうだ。その後の進捗は』


「何も。ガイシャの家族は会社の見舞金と生命保険で不自由無く暮らしてるとか…「家族愛自殺」を切っ掛けに家族愛ブームが起きてるとか…そんな所ですかね」


『何でもかんでもブームにしやがる』


「家族愛は良い事じゃないですか」


『過ぎたるは及ばざるが如しって事よ』


《もしも自分が明日死んでしまったら…?家族に希望・安心を。××保険》


『屍肉に群がるハイエナじゃねえか』


「経済はそうやって回ってるんすよ」


『…。ガイシャの会社と契約してる広告代理店を洗え。念の為だ』


「了解」







“こんにちは。ご用件は―”


『貴社の稼ぎ頭と話がしたい。△△だったか』


“アポの方は―”


「我々こういう物でしてね」


“警察…!かしこまりました。少々お待ちを”




[時間が無い。手短にお願いします]


『「家族愛自殺」。名付け親はアンタだってね』


[物事には分かり易いラベルが必要です]


「ガイシャが所属する会社の広告は全て貴方が担当…凄い偶然だ」


[実力です]


《[第一回「家族愛自殺」。一社当たり数千万の費用で全局のニュースを独占出来る。費用対効果に非常に優れています。結果如何では第二回・第三回の検討も―]》


[…どこでこれを]


『司法取引。横領の証拠チラつかせたら途端にコレよ』


[…あんのクソ常務が]




「人の命を何だと思ってんだアンタは!!!!!」


[キー局でゴールデンタイムの番組スポンサーとして3ヶ月間CMを放映する…幾ら掛かると思います?]


『さあな。一千万位か?』


[一億。CM製作代人件費諸々合わせて二億です]


[「家族愛自殺」は全局合わせて100時間程度放映されています。費用は一社当たり数千万。売上は平均前年比1.3倍。理想的な数字です]


「腐ってやがる…!」


[断末魔に勝るキャッチコピーは存在しない。貴方達が一番実感しているのでは?]


『確かにな。だがこんなもん一過性だ。第二回とやらを実行しても「またコレか」で終わりよ』


[…。貴方は随分こちら側の様だ。また新しい「何か」が産まれますよ。人間の想像力は無限大ですから]






『△△が罪を認めたそうだ。控訴もしないとよ』


「やりきれねえっすわ」


『人世は理不尽の連続よ』


《次のニュースです。東京都心部にUFOらしき物体が―》






おわり

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