いるかもしれない
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僕の名前は、目白諒(めじろりょう)
何処にでもいる大学生だ。
「あっ、これもいるかもしれない!」
そう思ってまた無駄にタイムセールの品を買ってしまった……
だって、“いるかもしれない”と、思ったから。
時所、共に変わり、
大学の社会心理学講義5分前のこと。
その日、講義で使う予定のプリントを失くした女の子がリュックの深淵とにらめっこしていた。
よく見るとうっすら涙目になっているか。
話したこともないし、知らない子ではあるが、困った女の子は見ていられない主義なので予備のプリントを渡すことにした。
「いるかもしれなかったから、
余分にコピーしておいたんだ」
そう言ってプリントを差し出すと、
彼女は『いいの? ありがとう……』と涙を拭いて喜んだ。
そんな彼女の姿を見て、僕は確信した。
これは、このトキメキは……!
そうだ、そうに違いない……!
それから幸か不幸か、縁があったのか。
彼女とデートをすることになった。
道中で転んだ彼女をおぶって、彼女の家まで送った。
家には誰もおらず、
部屋の中央に無機質に椅子が置かれいるのであった。
椅子に意識を奪われていると、後頭部に鈍い音と痛みが広がり、
僕は意識を失った……
目が覚めると、椅子に拘束されていた。
手も足も、ガムテープで固定されていて上手く身動きが取れない……!
彼女の話によると僕が好きすぎるのでずっとそばにいて欲しいらしい。
つまりは、僕を監禁すると言うのだ。
しばらく黙っていた僕は、厳かに彼女にこう告げた。
「僕を探しに来る人がいるかもしれない……」
言い終わった直後、木製の玄関は蹴り壊され、中に警察がなだれ込んできた。
晴れて彼女は暴行の罪で現行犯逮捕されたのであった。
これで安心だ。
僕を疑って付けてきた警察の目を、彼女へ逸らすことができたのだから。
僕の名前は、目白諒(めじろりょう)
何処にでもいる連続殺人鬼だ。
〜END〜
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貴方の近くにも、一般人の顔被った何者かがいるかもしれない……
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