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卒塔葉しお
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──『ピンチの時に入るべし』
メッセージカードにはそう書かれていた。
いつものように学校に行く支度をしている僕に、差出人不明の白いタンスが届いた。
「あんた、またAmozonで注文したでしょ!こんなもの家に運んでどうするの! お小遣いあげたばっかですからね」
「んー…… 部屋に運んどいてよ、じゃ」
「あっ、ちょっと!」
口うるさい母を交わすように弁当を持って勢いよく玄関を出た。
その晩のことだ。
2階の自室で宿題をしていると、1階からバリンという破裂音が聞こえてきた。
何事かと1階へつづく階段を降りると、
父さんと母さんが血を流して倒れていた。
すぐそばには黒目出し帽の男がハンマーを握って仁王立ちしている。
状況を理解するのに1秒もかからなかった。
僕は降りかけてた足を止め、急いで2階の自室に戻り、
とっさにあの白いタンスを開けて中に飛び込んだ……!
(しまった……!
こんなタンスの中に逃げ場なんてないの
に!!
せめて武器のひとつでも持っていれば、幾
分かはマシなものを……!!
父さん……母さん……
ちくしょう!!どうする……っ!?
そうだ、警察!
いやいや、今そとに出たら殺されるかも知
れないんだぞ!?
くそ……っ!!!
誰か助けてくれ……っ!!)
そこで僕の意識は途絶えた──……。
……。
……あ。
僕は、眠っていたのか……?
……あれから何時間たった?
外からは物音ひとつ聞こえない。
僕は、意を決して外に出ることにした。
するとそこで見たものは──……
──それはそれは広い草原にでた。
この世の果まで来てしまったかのような、
現代社会には有り得ないような眩い光景。
僕は自分の目を疑った。
夢でも見てるんじゃないかと思ったが、どうやら現実のようだ。
「おーい、誰かー!誰かいないかー!!」
澄みきった青空と、所々生い茂った草木だけが終わりなく続いている……
「なんだよ、この場所……っ」
僕は恐怖からもう一度タンスの中に入り、
「戻れ!」と強く願った。
戻れ戻れ!
戻れ戻れ戻れ!
戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ戻れ……
──いつからいたのか。
気が付くと自室に戻ってきていた。
「戻って……きたのか……?」
僕は慌てて1階へ向かった。
リビングのドアを開けると、お父さんとお母さんがテレビを観ていた。
見慣れた我が家の日常風景だ。
安心から緊張の糸が切れたのか。
めまいで目の前がぐらつく……
とりあえずソファーに座ることにした。
カレンダーは今日の日付のまんまだった。
その時だった。
ベランダからバリンという破裂音が僕の耳を劈(つんざ)いたのは……
The End__
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