第4話 俺らのリーダー①
株式会社SK商事 東京本社
決して大きい企業では無いが都心に3階建てのビルを構えていて、支社も埼玉県、神奈川県、大阪府、インドネシアに4つ展開している、それなりの会社だ。
それほどまでの成長を可能にしたのが、東京本社の新卒優良人材採用試験である。
採用人数は毎年最大2人
最低学歴は6大学卒
筆記試験はもちろん
面接は日本語と英語を各1回ずつ、役員と役職がそれぞれ行うので計4回。
それを通過したのち、実際に本社で5日間の研修を行い合否が決まる。
そのため、ちょっとした上場企業よりも難関だと学生の間では有名だった。
無謀とも思える試験だが、めでたく採用されれば高額の給料と賞与。それに加え本社勤務では金額上限無しの住宅手当が約束されている。
その為か、もしかしたら採用されるかもしれないと望みをかけて毎年数千人規模の応募が集まる。
2020年4月
冬の寒さが戻ったある日。
エリートが集まる本社は少し騒ぎになっていた。
その理由は、入社して2年の社員が実績を評価されて異例の早さで課長に昇進する事件が起きたのだ。
それだけではなく、その社員は新卒試験の合格者ではなく中途採用試験からの出身だった。
中途採用は毎年1人しか入社できないので、なおさら話題となった。
その人物は
月城 京也 当時27歳
彼だった。
辞令
○○課
月城 京也 殿
役員会議の結果、インドネシア支社の業績向上に大きく貢献したことを評価し
2020年4月○日をもって○○課 課長職に就くことを命じる。
掲示板に張り出された辞令を前にして社員達が京也に声をかけた。
『やったな月城!』
『おめでとう。』
『やったな!』
『これからもよろしくね月城課長。』
『皆さんありがとうございます!頼りないとは思いますが、よろしくお願い致します。』
祝辞の言葉をくれた社員に挨拶をしていると、社内アナウンスが流れた。
(月城課長。月城課長。○○取締役と○○執行役がお呼びです。3階、役員会議室にお越しください。)
アナウンスを聞いた部長が言った。
『残念だ、月城。辞令取り消しの面談だな。』
『マジすか?そんな事されたら自分もう立ち直れないっすよ。』
『冗談だよ!悪い話じゃない。お前にとってさらにいい経験になるだろ。行って来い!』
『冗談でホッとしましたよ。行ってきます。』
会議室に向かっている最中、京也は面談の内容を予想した。
まさか、また出向か?
インドネシアから帰ってきたばっかりだし出向なら断るか。
ん?取締役と執行役って言ってたっけ?
って事は、みんな大好き金一封か!?
そんな漫画みたいな事あるわけねーな・・・
部長は良い経験と言っていたし・・・
会議室に着き、ドアの前でネクタイを締め直した。
ある程度、色んな場数を踏んできた自負はあるが昇進直後というのもあって緊張していた。
大きく深呼吸をして、ノックをした。
コンッコンッコンッ
『どうぞ。』
ドアを開き、中に入る。
『失礼します。月城です。お待たせして申し訳ありません。』
取締役『突然すまないね月城課長。まずは昇進おめでとう。』
執行役『おめでとう』
『ありがとうございます。有り難く頂戴し、今後もお役に立てますよう励みます。』
取締役『まぁ、まぁ、そう固くならないで。楽にして良いよ。そこに座りなさい。』
『はい。失礼します。』
取締役『これから私と○○執行役の2人で面談するけど、彼は今回の証人として同席してもらってる。だから私の話だけに集中してください。』
そう紹介をされると執行役は軽く京也に頭を下げた。
『わかりました。それで話というのは?』
『今回の辞令はインドネシア支社の件で評価をしたんだけど、月城課長は今後も自らをレベルアップしたいと考えてるかな?』
『はい。先程も言いましたがお役に立てるように励む所存です。』
『そうですか。立場上、会社のためにそう言ってくれるのは嬉しいよ。でもウチのためだけじゃなく自分の事も考えないと人として成長は出来ない。と、ありきたりだけど私は思ってます。』
『もう一度聞きます。自らをレベルアップしたいと考えてますか?』
んーーーと待てよ。
何言ってんだこの人は?
業績でも課長としてでもなく、個人的な成長って事か?
ダメだ、接待スポーツしか浮かばねぇ。
聞くか。
『出来るならばしたいと思いますが、どのような方法なのでしょうか?』
『1個目は近年業績が下がっている大宮支社の回復。それから2個目は大宮支社のある1人の社員を本社に戻れるまで教育してほしい。』
やっぱり出向かぁ
オマケに社員教育まで・・・
それも1人とか、そんなの大宮支社の人間がやるのが普通だろ。
ん?戻れるまで?
どういう事だ?
元々、本社に居たのか?
それなら左遷に近いんじゃ?どうしてそんなやつを本社に・・・
『あの、お言葉ですが、なぜ1人だけの社員教育なのでしょうか?それと、戻れるまでという意味をお聞きしても宜しいでしょうか?』
『構わないよ。彼は元々、本社に新卒入社してね。当時の私の部下だった。仕事は優秀でね。月城君と同じように課長まで昇進したんだよ。』
やっぱり元は本社の人間か。
それも同じ課長で取締役の元部下か。
多分個人的に戻したいんだろうなぁ。
近々、事業拡大で部署増えるって聞いたし推薦したいとか、そんなんだろうなぁ。
『なるほど。しかしその方はなぜ大宮に?』
『ここまで話したからには、私が知っている彼を話しましょうか。』
取締役はそう言って机の上で手を組んだ。
『彼の名前はハンダ・・・、今は大宮でヒラをやってるよ』
第4話 僕らのリーダー① 終
〜作者より〜
4話もご愛読いただきまして、ありがとうございます。
今回は月城君が大宮支社に来る前の回想となりました。すごいねー!
頭良いんだね、月城君。
本当かっけーなー(笑)
個人的にファンです。はい(笑)
今後、登場人物が全員出てきて好きなキャラ投票とか出来たら嬉しいです。
次回も引き続き回想になりますが、永遠君の過去も少し出てきそうですね!
次回もお楽しみに。
TEAM ノーナシ
ノーナシ人間 芦田 篝 @kagari_ashida
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ノーナシ人間の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます