第2話 偽物
2021年4月6日
7時00分
アラームが鳴る。
朝か。
今日も、いつも通り・・・
違う。
はぁーーーー
会社に行くとアイツいるんだよな
行きたくねぇ...
7時30分
やべぇ
流石にそろそろ準備しないと
アイツ
まわりに俺の昔の話とかしてねーよな
いや、されてたとしても普段通りの俺で気にせずいこう。
こうするって自分で決めたんだ。
どうせ裏切られる。
どうせ悲しむ事になる。
どうせ誰も居なくなる...
......覚悟を決めろ!
ハンダ トワ
覚悟を決めて彼は会社へ向かった。
外に出ると意外にも足取りは軽かった。
これも春という季節のイタズラだろうか。
暖かく、桜は綺麗で町は笑顔で溢れている。
通勤途中の景色は昨日と変わらず彼を安心させた。
良かった。
町が良く見えてる。
まだ俺も少しくらいはあるんだな。
…感情…
会社に着いた。
いつも通りの入り口を通り
いつも通りのエレベーターに乗り
いつも通りのオフィスに入り、デスクに座る
『おはようございます。』
『あ、はい、おはようございます・・・』
『おはよう!ねぇ、また絆多さんに喋りかけられた?』
『おはよう、また挨拶されたよ。』
『マジ?!何されるか分からないから気を付けなよ!』
『大丈夫だよ!だってほら、何かあったら月城課長がいるじゃん!』
『確かに!』
まーーーーた、それか
目が合ったから挨拶
てか、普通挨拶ぐらいするだろ。
いやいや俺らしくもない、気にするな。
何も考えずに仕事だけに集中しよう。
これで良い。
今日も1日平和に・・・
『あ!月城課長、おはようございます!』
『おはよう‼︎今日もよろしくね!』
『はい!社内で分からない事があればワタシに聞いてください。』
『うん!ありがとう。』
『そうだ、絆多君。一緒に喫煙所行こうよ。』
社内の空気が変わった。
それもそうだ。
上司を除き、挨拶どころか仕事のこと以外で彼に話し掛ける人なんて居ない。
恐怖の対象
そんな〈物〉になっている彼に朝から話しかけ、しかも始業までのリフレッシュタイムに誘ったとなると大宮支社では前代未聞なのである。
『すごーい、絆多さんと喋ってるよ。』
『やっぱり知り合いなのかな?』
小声で社員が話しているのが聞こえた。
あーーーー
全然平和じゃねー。
なんなんだ!?コイツは朝から!?
話すなら仕事終わりでもタイミングはあるだろ!
『すみませんが遠慮しときます。下の喫煙所で吸ってきてるので。』
『へぇー!下にも喫煙所あるんだ!?俺分からないから教えてよ?』
『さっきの人に聞いてみては?』
『いや、、、あー・・・』
『せっかく課長が誘ってるのに断ったよ、あの人』
『ねぇー!気にしてくれてるのにねー!』
『それより本当に課長って絆多さんと知り合いなのかな?』
『あの感じだと違うんじゃない?』
"チッ"
本当人間ってのはメンドくせー!
分からない所で人の悪口ばっか言って、目の前の奴には良い顔をする。
そんな共感したように話してたって、お互い考えてることは何も分かんないんだぞ!
ま、アイツらはいーや
このままだと京也まで悪く思われるかもしれない。
それは避けるか。
『……1本だけ。1本だけなら付き合います。』
『おっ!マジ!?ありがとう!いやー、話したかったんだよね。絆多君と。』
喫煙所に向かってる最中、会話は無かった。
前を歩いていた京也は振り返らずに前だけを見て歩
いていた。
何気なく付いてきたがこいつ…
なにが"教えてよ"だ。
確かに下とは言ったが喫煙所の場所知ってんじゃん。
だとしたら目的は...
思った通り、京也は喫煙所の場所を知っていた。
中に入り火をつけた時に京也が口を開いた。
『まずは久しぶりだね。』
『ん。』
『ハハッ、随分そっけないな。永遠が中3の時に遊びに戻ってきてぶりだから、、、13年だぞ!? 13年!!それで、その反応か!?』
『じゃあ、何が正解なんだよ?跳ね回って喜べば許してもらえるのか?』
『許してもらえるって?ハハッそれじゃ俺が責めてるみたいじゃん?』
やっぱ昔話か。
クソ、調子狂うな。
『いつからそんなに捻くれたんだよ?昨日から見てるけど無口だし、表情変わらないし、仕事だけして誰とも交流を持ってないし、視察で来た時の噂は本当だったのか・・・』
『・・・』
視察?
いつだ?
噂?
なんの話を
『ノーナシ。そう裏で言われ・・・』
『1本。吸い終わったんで戻ります。』
『なんだよ?逃げんのか?昔は明るくて・・・』
ヤメロ
『みんなの中心で・・・・・・・・・
ヤメロ!
『誰よりも周りのことを考えて・・・・・
ヤメロ!!
『みんなに尊敬されるような・・・・・・
ドンッ!!!!!!
気付いた時には京也の胸ぐらを掴んでいた。
ある程度察しはついていた。
こうならないように
耳を傾けないように
気にしないように
上手いこと躱すつもりだった...
しかし、聞きたくもない昔話され
"ハンダ トワ"が"絆多 永遠"だった時のことを
あの頃の感情を
あの頃の出来事を思い出しそうだった。
『昔の話はやめろ。二度とするな。』
『スーツ...伸びるから離して?』
その時喫煙所のドアが開いた。
第2話 偽物 終
〜作者より〜
はじめまして、作者の芦田 篝です。
2話を見てくれて、ありがとうございます。
今回から少し表現方法が変わったのと、せめて一言コメントは付けた方が良いだろうということになりましたので、この場を借りて解説していきたいと思います。
いやー、永遠君ね
だいぶ、こじらせてますよね(笑)
今回で彼の性格が少し皆様にも伝わったんじゃないでしょうか?
何があったのか??
気になるとは思いますが、それは過去編で!
京也君もね
何か知ってそうな雰囲気です。
彼は本当に人事異動が理由だけで来たのでしょうか?
これも今後回想でやりますが京也は明確な理由を持って大宮支社に来ました。
それも今後読んでくれればと思います。
モメているふたりを誰が見たのか?
次回もよろしくお願いします。
表現変更
語り手の主人公の表現
絆多→彼
TEAM ノーナシ
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