第19話おれおれだよ!いくらちゃん
「あ、たいこさん。またスマホが鳴ってますよ。ばーぶー」
「ごめんね。いくらちゃん。運転中だから代わりに出てくれる?」
「はーい。非通知ですね。心当たりはありますか?ばーぶー」
「さあー、分かんなーい」
(ぴっ)
「はーい。もしもし。ばーぶー」
「あ、『おれおれ』!」
「あのお、大変失礼ですが。電話の持ち主は運転中でして。申し訳ありませんが私でよければご用件承りますがよろしいでしょうか。ばーぶー」
「そうなの?『おれ』って言えば分かるから。スピーカーモードとかできないかなあ?」
「はーい。少々お待ちください。たいこさん、なんか『おれ』って言えば分かるからと言ってますが。どうしましょう。ばーぶー」
「あらやだ。私は不貞なことしてないわよ(やっばー、心当たりがありすぎて分かんなーい)!折り返すから連絡先聞いといてくれる?」
「はーい。あ、お待たせしました。申し訳ございません。本人から折り返すとのことですのでご連絡先を頂戴してもよろしいでしょうか?ばーぶー」
「いやいや、『おれおれ!』『おれ』って言えば分かるから!急用だから!マジでやばいから!」
「はーい。少々お待ちください。たいこさん、なんか急用だそうです。本当に大変らしいそうです。どうしましょう?ばーぶー」
「(急用?最近はそんな遊んでないし。誰やろ?うわー、電話代わりたいなあー。でも、いくらちゃんいるしなあー。さすがにまずいよねー)すぐ、折り返すって伝えてくれる?」
「はーい。あ、お待たせしました。申し訳ございません。早急に折り返しお電話差し上げるそうですのでご連絡先を頂戴してもよろしいでしょうか?ばーぶー」
「だーかーらー!『おれ』って言えば分かるから!マジ、やばいんだって!このままじゃ『おれ』けいさつに捕まっちゃうから!会社のお金を使っちゃってさあー!」
「はーい。少々お待ちください。たいこさん、なんか会社のお金を使い込んだのがバレて、このままではさつにがらを拘束されるそうです。ばーぶー」
「(え?そんなやつおったっけ?うーん。でもめんどくさそう。もういいや)いくらちゃん。てきとーに切っちゃっていいよ」
「いいんですか?ばーぶー」
「あ、大丈夫。多分間違い電話だから」
「はーい。あ、お待たせしました。大変申し訳ございませんがそろそろ『10円玉』がなくなりますので。あ、すいません。もう切れそうです。あ、あ。ばーぶー」
(けいたい、ぴっ)
「いくらちゃーん。公衆電話じゃないんだから」
「はーい。すいません。いつもの癖でして。ばーぶー」
とりあえず「おれおれ」を回避したいくらちゃんであった。
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