第3話:依頼
ミネルバはこの世界、異世界の金銀財宝を見せてもらったが、地球と同じ金銀財宝に見えたので、ひと安心した。
幸いこの国は皇国を名乗るほど豊かで大きく、金銀財宝ならばある程度の量を賠償に渡すことができるという。
そこで皇帝を名乗る王冠を頭に載せた男から、賠償でもらえる金銀財宝の交換比率と量を確認した。
それは何故かと言うと、ミネルバが読んだ小説の中には、異世界と地球を往復して、その金銀の交換比率の違いで儲けるという話があったのだ。
案の定と言うべきか、地球と異世界では金と銀の価値が全く違っていて、異世界の方が銀の価値がとても高かった。
そこでミネルバは、異世界では同じ価値だが、地球に持って帰れば二倍の価格になる、金を賠償金としてもらうことにした。
「それで、私に頼みたい事って何なの?」
賠償金の話がミネルバの望む額の百倍くらいになったので、別にぼろ儲けするつもりでいたわけではないのだが、結果的にそうなっただけなのだが、それでも何か悪いことしたような気になってしまって、直ぐに頼みを聞くことにしたのだ。
その辺がミネルバのお人好しな所だった。
同時に、せっかちで、何でもテキパキと片付けたい性格によるところでもあった。
「おお、ありがとうございます、聖女様」
皇帝の話によれば、この国を含めた大陸中の国が、魔獣と魔人の侵攻に苦しめられているという。
それをミネルバに斃してくれという無茶な話しかと思えば、そうではないという。
この国にも勇者もいれば聖女もいて、何とか有利に戦っていたという。
だが、その肝心要の勇者と聖女が、この国の皇太子を裏切ってしまい、皇太子がショックで部屋に閉じこもって出てこないというのだ。
「ちょっと待ってよ、なによ、その勇者と聖女は!
勇者は主君で恩人の皇太子の婚約者を寝取って妊娠させたというの?
聖女は幼馴染で婚約者の皇太子を裏切って、勇者と寝たっていうの?」
信義に厚く、倫理道徳に厳しいミネルバ激怒した。
ミネルバの基準だと、そういう破廉恥な者は、追放破門にしなければいけない。
皇帝もミネルバの言葉に同意して、普通の場合ならば、処刑されて当然だと言ったが、同時に今は人類滅亡の可能性がある危急存亡の秋だとも言ったのだ。
勇者個人や聖女個人を云々する時ではなく、人類が一致団結し、協力して魔獣と魔人を撃退しなければいけない時だと。
「ふうううう、それがよく分かっているからこそ、勇者と聖女は平気で不義理を働き、思い悩んだ皇太子が心の病になったのね?」
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