音楽で、芽が出ず燻り続け、本意ではないアルバイトで日々の糧を捻出している、この物語の主人公。
仲間たちは、そんな、叶わない夢に見切りをつけ、ひとり、またひとりと、その世界から去っていく。
夢を追い続けるべきか、現実を直視するべきかで、悩む主人公の、今日の仕事は失敗の連続だった。
そんな時、ひとりの若い客が、五線譜を買いに現れた。
店員として対応する主人公が、夢を追っているらしい客を、眩しそうに見ている姿からは、せつなさを感じてしまう。夢を追うのは、若い者だけの特権ではないはずなのに。
しかし、若い客が外した、ヘッドホンから聞こえてきたのは……。
たったひとりでも、主人公の音楽を認めた者に出逢えた……。
それだけで、がんばろうって思える。夢は叶うはずだと、前を向ける。まだ続けられると立ち上がれる。
そう……、それが、たった、ひとりだけだったとしても……。