第19話 通じ合う想い(勘違い)

 結奈が夕食の準備をしてくれている。何か手伝おうかと思ったが、Web小説でも読んで待っていてほしいと言われてしまった。


 まぁ、料理なんてした事ない奴が手伝っても邪魔なだけだろう。

 結奈手伝いができるように少し練習した方がいいかもしれない。それに結奈と一緒に料理をしてみたい。


 ソファーに座りスマホでWeb小説のページを開く。

 ランキングの作品の題名と話数を見ていく。


「お?」


 そこそこ上位に十話ほどで完結しているラブコメ作品が目に入る。題名がちょっとあれだが、夕食が出来るまでだしちょうどいい。

 その作品のページに移り読み始める。


 作品の題名は『幼馴染みにざまぁしてから、最愛の彼女と幸せになります』だ。


 幼馴染みにざまぁする作品はやっぱり苦手意識があるが、この前読んだ作品が幼馴染みにざまぁだったが良作だったので読み進める。あの時みたいに良作かもしれない。


 どれくらい時間が経っただろうか。一応読み終えたが……正直俺には合わなかった。


 最初幼馴染みから裏切られるのにニ話使い、その後六話使って復讐をする。最後の二話でヒロインと結ばれる。そんな感じだった。復讐の部分が多くあまり楽しむことができなかった。普通ならば、あの部分でスッキリするのかもしれないが……


 読み終わって、残ったのはモヤモヤした気持ちだけだ。俺はざまぁを終えた後のヒロインとのイチャイチャが読みたいのだ。

 以前の作品はそこが素晴らしかったのだ。


「うーん……」


 主人公とヒロインののイチャイチャを求めているのに、その部分がほとんどなかった。この作品は復讐をメインに書いているのだろう。

 まぁ、二度と読む事はないだろう。


 ちょうど読み終わったところで、夕食の用意が出来たのか結奈に呼ばれる。


「悠真君、できたよ」


「わかった。すぐ行く」


 画面を閉じテーブルへと向かう。


 結奈手料理を食べて気持ちをリセットしよう。

 椅子に座る。今日の料理はハンバーグだ。


「いただきます」


「召し上がれ」


 やっぱり結奈の料理は最高だな。


 食べ進めていると結奈に声をかけられる。


「さっきWeb小説読んでたの?」


「うん」


「なんて題名のやつ?」


「えっ……」


 結奈が期待に満ちた顔をしている。

 正直言いたくない。題名もあれだが、内容が微妙だった。

 以前の作品は面白かったし、最高だったので話したが、今回は外れだった。

 外れの作品の話はしにくいが……聞かれてしまったので言うしかない。


「『幼馴染みにざまぁしてから、最愛の彼女と幸せになります』だ」


「……へ、へぇー」


 微妙な空気が流れる。


 面白くなかったんだよなぁ……主人公とヒロインのイチャイチャが足りなかった。もっと二人が幸せな部分を読みたかった。

 甘い部分が足りない。足りなかったんだよなぁ……


「もしかして……足りなかった?」


「えっ?」


 まるで俺の心を読んだかのような結奈の言葉に唖然とする。


「なんで分かったんだ?」


「そんなの……分かるに決まってるよ……」


 マジか……なんだか照れ臭い。


「結奈の言う通り、足りなかったんだよな」


「そう、だよね……」



 偶然かもしれないし、俺が分かりやすいだけかもしれないが、気持ちが通じ合っているみたいで嬉しかった。


 そんな気持ち悪いことを考えてしまったせいで、結奈のことを見るのが恥ずかしくなってしまった。


 その後俺たちは、あまり喋ることなく食事を続けた。


 内容は微妙だったが、偶然にも結奈と気持ちが伝わった様な状況になったので、読んで良かったな。

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