第18話 相談(結奈視点)

 放課後、私は奏ちゃんに文芸部の部室に呼び出されていた。

 部室には私と奏ちゃん以外は誰もいない。


「それじゃあ、早速話を聞かせてよ」


「は、話?」


「分かっているくせに」


「うっ……」


 奏ちゃんの言う話というのは、間違いなく私の好きな人についてだ。

 前回話した時は、あまり時間がなくバタバタしていた。

 …

「それで、その後どんな感じ?」


 私は悠君との今の状態を簡単に話した。一人暮らしをしているので夕食を作ってあげている事、そして……


「え!? 裸を見られたの!? もうそこまで進んでいるのっ!」


「ち、違う! 事故、事故だから」


「そ、そうなんだ。でも料理は作ってあげているんだね」


「うん」


「通い妻じゃん」


「そ、そんなんじゃないよ!」


 妻と言われて思わず頬が緩みそうになる。いつかは本当に悠君のお嫁さんになりたい。そのためにも頑張らないと……


「幼馴染みってなんか良いね。私にそういう人いないからちょっと羨ましいな」


「えへへ」


「その幼馴染み君は、この学校にいるのかな?」 

「え!? えーと……」


 奏ちゃんの質問に取り乱してしまった。


「結奈ったら分かり易すぎ」


「うぅ……」


「誰なのか教えてよ。ここまで来たんなら名前言っちゃいなよ」


 奏ちゃんは親友だし、いろいろ相談に乗ってもらうから言ったほうが良いかもしれない。言いふらされる心配もない。


「秘密にしてね」


「当然!」


「悠真君……」


「それって、結奈と同じクラスの川木悠真君?」


「うん」


 言っちゃった。顔が熱い。


「へー、悠真君と幼馴染みだったんだね」 


 少し驚いた表情をする奏ちゃん。


「いやー、結奈が狙ってるんじゃ、他の子は厳しいだろうね」


「え……どういう事?」


「悠真君って女子の中では結構人気があるんだよ」


「えぇ!? そんな話聞いたことないよ!」


「それは結奈が男嫌いだから、みんな結奈の前で話さないだけだよ」


「ど、どうしよう……」


 悠君はかっこいいから人気でも不思議じゃない。

 悠君なことを好きな女の子の話なんて聞いた事がなかったから油断していたけど、奏ちゃんの話を聞いて焦ってしまう。


「結奈なら大丈夫だよ」


「そんな事ないよ……」

 奏ちゃんには話していないけど、私はざまぁするぞと警告されているところなのだ。

 最近挽回のチャンスを得ているがまだまだ足りない。

 決して良い状況ではないのだ。もし、私を好きになってもらう前に、悠君が誰か違う女の子を好きになっちゃったら………


 私ではなく違う子が悠君の隣をあるいていと想像するだけで涙が出そうになる。


「どうしたら良いと思う?」


「そんな心配そうな顔をしないでよ…悠真君が誰かを好きって話は聞いた事がないから、今のところは大丈夫なはずだよ」


 だからこそ今のうちに好きになってもらわないとダメなのだ。


「うーん……じゃあさ、悠真君の趣味とか知らないの?」


「趣味?」


「そう、趣味の話なら自然と会話が生まれるし、自分の好きなものの話をするのって楽しいでしょ?」


「たしかに……」


「そうすれば、会話の回数も増えるし、一緒にいる時間も増えるよ」


 悠君の趣味……


「Web小説を読むことかな?」


「なら、結奈もWeb小説を読んでみたら良いんだよ」


 少しだけ想像してみる。たしかに自然と会話が生まれそうな気がする。


「その考えいいかも……」


「でしょ?」


 そうと決まれば悠君かま好きそうなジャンルの小説を読み漁ろう。あとはそれとなく、悠君が今読んでいる小説を聞き出して一緒に読み進めれば会話の種も手に入る。

 なんだか行けるような気がしてきた。


「ありがとう! 私、頑張ってみるね」


 お礼を言うと急いで家に帰る。すぐにでも読み始めてみよう。

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