第7話 『お! パイの実』(結奈視点)
私はお昼ご飯を食べ終えて次の授業の準備をしていると、男の子たちが盛り上がりだした。
悠君の友達の桑野君が持ってきたお菓子が原因らしい。
男の子の声が教室中に響く。
「『お! パイの実』じゃん! 俺にも一つくれよ」
「いいぞ」
お菓子を配っているみたい。
「俺はこっちだな」
「お前わかってるな! やっぱり巨乳の方だよな!」
「当たり前だろ」
男の子たちが大きな声で胸の話を始めた。クラスには女の子もいるけどお構いなしだ。クラスの女子の何人かは冷めた目線を向けている。
「やっぱり巨乳が一番だよな」
今朝の奏ちゃんとの話を思い出す。やっぱり奏ちゃんの言う通り、男の子は大きなおっぱいが好きみたい。
「ほら、お前はどっちを選ぶんだ?」
ちらりと盗み見ると、悠君がちょうどお菓子を取ろうとしていた。
ちょ、ちょっと待って!?
「なんだよお前、貧乳派か?」
「別にいいだろう、こっちの方が好きなんだよ」
な、なんでそっちを選ぶの!? 男の子はみんな大きなおっぱいが好きなんじゃないの!?
「お前は巨乳派だと思ってたけど、まさかの貧乳好きだったとは」
「ほっとけ」
まさか悠君がそっちを選ぶなんて思わなかった。たまらず立ち上がると、奏ちゃんの元へと向かう。教室を出る時に視線を感じたがそれどころじゃない。
これじゃあ、胸を使ったアピールをしたら、逆効果になってしまう。
廊下は走ってはいけないので、早歩きで奏ちゃんの教室へと向かう。
その間、まるで呪文のように唱える。
あれはお菓子の話、お菓子の話、お菓子の話!
奏ちゃんの教室に到着した。まだ昼休みなのだクラスは騒がしい。そのおかげで目立たずに奏ちゃんと話ができる。
私がいきなりきたことに驚いている。
「どうしたの?」
さっき教室で聞いたことを話すと、呆れたような表情になる。
「それはお菓子の話でしょ? 関係ないと思うよ」
「ほ、本当に?」
そんな時だった。タイミングが良いのか悪いのか近くの男の子たちの会話が自然と耳に入る。
「実は俺、小さい胸の方が好きなんだよね」
「マジ? 俺は断然大きい方が好きだな」
「僕も小さい方かな」
なんでそんな話をしているのかわからないけど、小さい胸が好きな男の子がいる。しかも二対一で小さい胸に軍配が上がっている。これは由々しき自体だ。
男の子は大きな胸が好きだと奏ちゃんから聞いたから、てっきり悠君も同じだと思っていた。でも、違うかもしれない。
邪魔なだけの大きな胸がせっかく役に立つと思ったのに、下手すればマイナスになってしまう。
自分の胸を見下ろす。
やっぱり大きい胸なんて気持ちが悪いだけだよね……
思考がネガティブな方に寄ってしまう。
「奏ちゃぁん……」
奏ちゃんもさっきの話が聞こえていたのか少しだけ焦っている。
「だ、大丈夫! 好みの話だからそう言う人もいるってだけだよ!」
それって悠君が小さい方が好きな可能性もあるってことだよね?
悠君に私のこと好きになってもらいたいのに……ざまぁされたくないよぉ
「し、心配ならさ、直接聞いてみなよ!」
「そ、そうだよね!」
悠君が大きい方が好きならそれで十分だ。他の子の意見なんてどうでもいい。私は悠君の一番になりたい。それ以外はいらないのだから……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます