第47話 altercation (改稿)
ダァン!!ダダダダダダダダ!!!!ダダダダダダダダ!!!!!!!!
「はぁ?」
ニドランは腕を振り回しながら『ここから楽しくなりそうだ』と言いたげな表情を浮かべていたのだが、砲撃隊の突如の銃撃にポカンと口を開いた。
「おい!!俺の銃もダメだ!」
「なら下がれ!!」
「つぎぃいいいいい!!!早く準備しろ!!」
しかし、ミュンの水魔法をもろに受けた砲撃隊の前衛が慌てふためき怒号を飛び交わせていると、ハッ!と状況を飲み込んだニドランはこめかみに青筋を立て砲撃隊員達の前に立ちはだかった。
「お前ら!!!!何勝手に撃ってんだ!!!!!」
「あ!?おい!!!な、何やってんすか!!」
砲撃隊に向かって怒声を上げるニドランに驚いたオセが、慌てて背中を押しそこから退かせようとする・・・・・しかし、鎧を脱ぎ捨てた事でエゴが剥き出しになっている彼を小柄なオセが止めらるわけが無かった。ニドランはオセの手を乱暴に振り払うとさらに両手を広げて怒声を上げた。
「あ!?うるっせぇ!!
お前らぁあ!!オレが今戦ってるとこだろうが!!!!邪魔すんじゃねぇ!!!!!」
我を忘れた魔物のような目をしたニドランに仁王立ちされてしまい、困った砲撃隊員たちが騒然としているなか、前衛の後ろで銃を構え待機していたエルピがため息を吐いて前に出て来た。
「ニドラン中将!それは我々への任務妨害行為になります!!今すぐその場から立ち去ってください。」
「あ?邪魔してるのはお前らの方だってオレは言ってるんだ!」
パン!と足を鳴らし姿勢を正したエルピがハキハキと警告するが、ニドランは態度を変える事なく血走らせた眼でエルピを睨み上げた。しかし、エルピはそれに臆さず毅然と警告を続ける。
「我々はあなた方と同じく騎士団に属してはおりますが、あなたの命令下にいるわけではありません。我々は都の治安を第一に考え行動する部隊です。あなたの言葉には従えません!そこから立ち去って下さい!」
「あ?」
「我々はこれより襲撃者制圧を再開します。
中将!!!最終警告です。そこをどかないと言うのならあなたは襲撃者に与するものと判断し銃撃を再開します。また、あなたが銃撃に巻き込まれたとしてもありのままを上に報告致します。」
小柄なエルピに捲し立てられ更に頭に血が上った興奮状態のニドランが、エルピの正論に言い返せるはずがなかった。
そして、事もあろうか「く・・ぐ・・この!!」とギリギリと歯ぎしりしながら砲撃隊に向かって足を踏み出した。
「はぁ。。。」
ニドランのその行為にエルピはまた一つため息を吐くと、身を低くし銃を構えた。
「お前誰に向かって「5秒以内にそこから退いて下さい!!さもなくばあなたも襲撃者と見なす!!!」ああ?」
ニドランの怒声を遮り、一段と声を大きく荒げたエルピは有無を言わさずカウントを始めた。
「1」
「2」
「は?」
エルピのカウントにオセは驚いた。いくら所属が違うとは言え、騎士隊の中将相手にここまで強制な態度に出て来るとは思ってもいなかったのだ。
「3」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
慌ててニドランの前に立ち、エルピに向かって両掌を出してカウントに『待った』をかけると、振り返ったオセは鬼のような形相を浮かべてニドランを睨み上げた。その際に脛に前蹴りをお見舞いしている。
「
「うっ・・・・・・・・・分かったよ。」
ドスの効いた声でオセに睨み上げられたニドランは、ガクッ!!と肩を落とし頭を垂らしてトボトボとその場から退いた。
しかし退いて行くニドランに胸を撫で下ろしていたエルピを横目に、オセは足取り重く歩いているニドランの腰をパン!と叩くと
「アルギア・・・彼奴らが砲撃隊から離れた時がチャンスだぞ。」
と、耳元でそう囁やいた。
「お??・・・おお!」
ピクッ!と体を震わせオセに視線を向けたニドランは、ニタリと笑っているオセに小さく頷くと剣を握る手に力を入れた。
****
ロックの土の擁壁に顔を近づけていたバガンが、額に手巾を当て腰を下ろしているミューレルに声をかけた。
「おい。爺さん。さっきの奴と砲撃隊が揉めてるようだぞ?」
ニドランが砲撃隊の前に立ちはだかった事で、いきなり騒がしくなった壁の向こうが気になったバガンは、ロックに頼んで覗き穴を作って貰っていたのだった。
「はは・・敵に助けられましたね。」
「それでこれからどうするんですか?周囲に騎士の増援が集まり始めてますよ。」
天を仰ぎ苦笑いを浮かべているミューレルに、「こっちだ」などと声を掛け合っている騎士達が広場脇の街路に集まって来ている姿を目撃していたアルガスが問いかけた。
「そうですねぇ・・・・水晶の破壊はもう難しそうですね。」
「なら・・・破壊は出来なくても最後まで抗うか?」
「いえ・・・・どうせなら最後まで足掻きましょう。」
「足掻く?」
「はい!広場を突破してアリエナ城を目指します。」
「・・・・で?」
「アリエナ城に乗り込み籠城します。」
「「「「は?」」」」
ミューレルを囲いその言葉に耳を傾けていた一同は一様に目が点になった。
「え?何言って・・。」
「籠城ってアリエナ城にだって騎士とか沢山いるだろう?」
「分かってますよ。ですが、周囲は完全に包囲されているようですから、ここから都外への脱出を目指すより生き残れる可能性は高いでしょう?」
『籠城』という言葉に戸惑う周囲を余所に、淡々と話しを続けるミューレルにいきり立ったバガンが詰め寄りミューレルの胸倉を掴んだ。
「生き残ってどうすんだよ!!!」
「生きてれば知恵を絞れます!考えれます!!あなたは誇り高き死を選びたいのでしょうが・・・・死んだら二度と知恵は絞れません!!!」
「くっ・・・・・・だが知恵って・・・・オレらみたいな馬鹿が集まったところで・・・。」
「あなた方は馬鹿じゃないですよ。それに、私はまだあなた方に手伝って貰いたい事が山ほどあるんです。」
「・・・・・・。」
「まったく人使いが荒いぜ・・・。」
「まぁ、足掻いてみるか。」
「だな・・。」
「俺らバカじゃないらしいしな!」
「ははっ!良くもねぇけどな!」
バガンに胸倉を掴まれようとも『決断は変えない』という強い意思を込めた目をしているミューレルに、周囲が先に折れたようだ。
「・・・お前ら・・・。」
「そろそろ均衡が破れそうです!」
ミューレルに詰め寄ったバガンの代わりに、覗き穴から向こうの様子を見ていたロックが声を上げた。すると、それとほぼ同時にエルピの荒げた声が周囲に響き渡った。
『5秒以内にそこをどきなさい!!さもなくば襲撃者と見なす!!!』
その声に壁の向こう側を望むように視線を上げたミューレルは、すぐに視線を戻すと立ち上がりそれぞれの意思を確認するように自分を囲う仲間達に目を配った。
「では、いいですね・・・アリエナ城に向かいます!!!魔法士たちは背後の銃撃に備えてください。」
まだ『籠城』出来るかどうかも分からない状況だ・・・・自分の意見に不満を持っている者が多いのだろう・・・・・そう思いながら何とか声を絞り出したミューレルだったが、
「はい!!」
「おー!」
「りょーかーい♪」
「おうよ!!!」
あっけらかんとした表情で、いつも通り言葉もタイミングも揃わない返事をしてくる彼らにミューレルは目を丸くした・・・・・が、その後で何とも言えぬ喜びが胸に込み上がった。
「ふっ・・・ははははははは!」
「なに笑ってんだ!さっさと行くぞ!!」
そして、誰よりも早く駆け出したバガンに目を細めるのだった。
「・・・はい。」
「何だよ!アイツ何だかんだ言いながら一番最初に飛び出しやがった。」
「ははは!」
「よし!俺たちも続くぞ!」
「ああ!」
先程まで反対していたバガンが一番に飛び出した事で、ミューレルも仲間達もバガンは納得して飛び出したのだと思い込んだ・・・しかし、バガンの次に飛び出していたセスは違っていた。
幼い頃から共に育ったセスは、幼馴染が不満たっぷりである事に気づいていた。
「あ???どうした?」
バガンはあっという間に追いついてきたセスが、ジーッと自分に視線を向けている事に気づいて口を開いた・・・が、
「バガン。俺と違ってお前らは敗走だな。」
と、セスは意地の悪そうな顔をしてそう言い放った。
「はぁ??何言ってる敗けてねぇだろ!!」
「さっきの男に勝てなかっただろ?目的も達成出来なかったしな。」
「ぐ・・・・だが、それは・・・・・・。」
セスに言い返そうとしたバガンだったが、言葉は続かず顔を歪めた。
「それは??作戦を変えられたからそのせいか??もしくは体を張った修道女たちのせいか??諦めて籠城を決めた爺さんが悪いのか??」
「ぐ・・・ちげぇ・・・俺が弱かったからだ・・・。」
「お前の気持ちは分かる。オレたちはアイツらと違って祖先の借りはない・・・アイツらと同じ志で爺さんに付いて来てるわけじゃない。」
「て・・・てめぇ・・・くそ、普段喋らねぇお前がそんなに饒舌になるって事は・・・。」
セスが何を言わんとしているのか理解したバガンは、ガシガシ!と頭を掻いて眉を顰めた。
「くそ!右往左往しちまったぜ・・・・・・悪かった。俺らは俺らで爺さんに付いて行くと決めたんだったな。」
「ああ。」
「どんな状況であろうと爺さんのために全力を尽くすだけだった!」
「ああ。」
「ありがとよ。」
「ああ。」
前を向いたままセスに礼を言ったバガンは、正面に待ち構える騎士に向かって飛び上がった。
そして、その顔は淀んでいた先程までとは打って変わり晴れやかなものだった。
**
「続けーー!!」
「早く行けよ!!!」
「うるせぇな!!」
ガヤガヤ騒ぎながら仲間達が続々とアリエナ城に向かって行く中、土の擁壁の上空に向かって扇子を突き出しているアリシアにロックが声をかけた。
「?・・・・アリシアさん??どうしたんですか?」
「ん?ちょっとした足止めになればと思ってね。」
「足止め??」
「そうよ♪」
悪戯な笑みを浮かべたアリシアが突き出した扇子を小さくクルッ!と回した。
その行為にロックは頭に「?」を浮かべていたが、彼女の扇子が指していた方向に視線を向けると、小さく「ピュ~♪」と口笛を吹いてアリシアを称賛した。
「やりますね!!」
「でしょ♪」
ロックの称賛に扇子を口元に当てたアリシアは目を細めた・・・・が、それを見ていたミュンは少し面白くなさそうに眉間に皺を寄せるのだった。
「???って・・・何だし?この感じ????」
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