第46話 合流


バチッバチチチチチチチチチチチ!!!!!!!


「おあああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


ミューレルの『電撃』を受けながら地面に両膝を着いたニドランは、獣のように咆哮すると背中に手を当て抑えつけてくるミューレルの顔面を狙って肘を上げた。


「!?」


「ぬぅえああああああああああああああ!!!!」


ニドランが上げた肘をその勢いのまま振りぬくと、躱しきれなかったミューレルの右眉の上を切り裂いた。


「くっ!?!?」


パカッ!と裂けた傷に手を当て後退したミューレルは、『電撃』から解放されゆっくり立ち上がったニドランを忌々しそうに睨みつけた。


「それが・・・『魔力を纏いし者まとい』・・・ですか?」


「あ???・・・ああ、何だかそんな名前を付けれてたっけな。」


後頭部に手を当てコキッ♪コキッ♪と首を鳴らしながら、手で血を拭うミューレルに正対したニドランは迷惑そうに眉を顰めていた。


「セレニー様!!」


「あれ喰らって倒れねぇって・・・・・『魔力を纏いし者まとい』ってのは何だ??」


出血したミューレルに慌てて駆けつけたアリシアが止血するよう手巾を傷口に当て、『電撃』を喰らっても気絶しないニドランに唖然としたバガンがミューレルに問いかけた。


「はい。彼は魔力で肉体を包むようにして魔法を防ぐそうなんですが・・・本当のようですね。見えない膜の様なものに遮られて彼の体に直接触れれませんでした。」


「はぁ!?何だその反則技。」


「別に技ってもんでもない。『魔力による身体能力の増強augment』の副産物のようなもんだ。それより『雷魔法』に『セレニー』って、爺さん『雷帝』なのか?」


「????はて、何の事でしょう?」


「はは!喰えねぇ爺さんだ。」


首を傾け惚けるミューレルにニドランが破顔した・・・が、今一度グルッグルッと首を回すと不敵な笑みを浮かべ身を低くし剣を構えた。


「さて、どうしたものですかね・・・。」


ミューレルは今にも弾け飛んで来そうなニドランに眉を顰めたが、有り難い事にその間に騎士達が割って入って来た。


「ああああああああ!!」


「中将!!!!!」


「は???おい!!!!待機してろって言ったよな!!」


「敵襲です!」


「あ?」


「は、背後から敵襲です!」


「敵襲??」


騎士達に怒声を浴びせたニドランだったが、騎士の言葉で彼らが待機していた方向に顔を向けると、2人の男が縦横無尽に他の騎士達をなぎ倒している状況が目に入った。


「ぎゃあ!!!」


「体勢を立て直せぇええ!!」


「うわぁあああああああああああ!!!!」


必死の形相を浮かべ抵抗している騎士達を余所に、彼らを倒しながらこちらに向かって来るアルガスとセスの身のこなしを見てニドランは嬉しそうに笑顔を浮かべた。


「おお?アイツらもやるじゃねぇか。」


しかし、仲間がやられているというのに歯を見せるニドランに腹を立てた騎士が声を上げた・・・・が、


「中将!!!!!!これはあなたの「邪魔だ!!!」ぶはぁっ!!!!」


2人の姿しか目に入っていないニドランに騎士は平手打ちされ吹き飛ばされてしまった。


「おっと!ちょっと中将!!」


吹き飛ばされてきた騎士をピョン!と跳んで躱した小柄な男がニドランの下に駆けてきた。


「何やってんですか!」


「オセか・・お前どこ行ってた?」


「ちょっと教会の方の様子を見て来ました・・・それより何ですか!騎士を平手打ちして。」


プンプン!と頬を膨らませるオセと呼ばれた男の言葉にニドランは顔を顰めた。


「オレの邪魔したからどいてもらっただけだ。」


「はぁ?・・・はぁ・・・何でこんな人が中将なんだ?」


「あ?上に言えよ。決めたのは上だぜ。」


「ってか、着く前に『鎧を脱がないでください』って言ったじゃないですか!」


「ああ!もううるせぇ!!!」


ブォン!!!


「チッ!!!」


オセはサラサラな茶髪の髪をフワッ!と揺らしながら身を屈めてニドランの平手打ちを躱した。


「鎧が中将の理性だって口酸っぱく言ったじゃな・・」


「うるせぇ!!!」


「おっと!」


ブォン!!!


「チッ!!!!」


「いいですか!鎧の無いあなたはただの魔物なんですから・・・」


ブォン!!!ブゥン!!!!!


「チッ!!!!チッ!!!!」


オセがクリッとした目を顰めてニドランに苦言を呈すが、それが煩わしく感じるニドランが平手打ちや蹴りを出すも全て躱され・・・躱される度に舌打ちを繰り返していた。


「なんだありゃ・・・。」


ニドランとオセのやり取りに目が点になっていたバガンだったが、そこに騎士達を蹴散らしたアルガスとセスが走って来た。


「爺さん!!!」


「アルガス!セス!」


「よくご無事で。お疲れ様でした。で・・そちらはどうでしたか??」


合流した2人を笑顔でバガンは迎えたが、労いの言葉をかけるもミューレルは神妙な顔つきで2人に成果を問いかけた。既に教会にある『女神の心』の破壊を諦めていたミューレルは、二兎を得れずとも必ず一兎は得ておきたかった。故に、ミューレルはここまで来ておいて『失敗だった。』と言われるのがとても怖かったのだ・・・・・しかし、アルガスとセスの表情は明るかった。


「ああ!バッチリさ!!粉々に粉砕したそうだぜ!」


アルガスは眉を顰め不安気な表情を浮かべているミューレルにニッ!と笑い親指を立て、セスは微笑み数回頷いた。


「「「「おおおお!!!」」」」


「そうですか!!!・・・ですが・・『そうだ。』とは??」


その報告に周囲が沸く中でミューレルも一瞬パァ!!と笑顔を見せたが、アルガス本人が破壊したわけではない事が気にかかったようだ。


「ああ!!・・・・ってまだ来てないのか?」


「誰がですか?」


「ドゥーエの・・・あの・・。」


「エスト君ですか?」


「たぶんそいつだ!!!」


「そうですか・・・エスト君が。」


ミューレルは『原石』を破壊した人物がエストだったと知り心が震えた。街路を走っている時、視線が合ったような気がしたエストに叫んだ自分の言葉は心に届いていたのだろうか??・・・・学園の卒業生に想いを馳せたミューレルは目を閉じ少し微笑んだ。




ダァン!!ダダダダダダダダ!!!!ダダダダダダダダ!!!!!!!!



「!?」


「あ!?」


「しまった!!」


アルギア・ニドランという色んな意味で強烈な存在により、砲撃隊が頭の外になっていたミューレルやバガン達は突如の銃撃に顔を歪めた。




擁壁Retaining wall



しかし、銃撃音がするや否やミューレルたちの前にロックの土の擁壁が立ち上がり銃撃を受け止め、



水衝opposition



魔力を練り込んだミュンの分厚い水の壁は向かって来る無数の銃弾を飲み込み、更にそれを撃ち放った砲撃隊員達に逆らうように向かって行った。


「うああああああ!!」


「読まれていた!!くそぉ!」


「ああ!銃が濡れてしまった!!誰か!!代わりの銃を!!」


「ロック!!!!ミュン!!!!!!!」


「よく・・・よく見ていてくれました!」


「すげぇえええええええ!!!」


壁の向こう側から聞こえて来る砲撃隊員達の慌てふためく声と、背後から聞こえる仲間たちの歓声に魔法を放っていた2人は視線を合わせて笑顔を見せあった。


「ありがと・・・。」


そして、ミュンはニッ!と笑っているロックに届かないほど小さな声でそう口にした。


**


時間は少し遡る・・・


「離せ!!!何で邪魔するし!!」


鎧を脱ぎ捨てたニドランが仲間達に襲い掛かると、目を吊り上げたミュンはいち早く飛び出したラットに続きニドランに向かおうしたのだがロックに腕を掴まれ足を止められてしまった。


「ミュンちゃん・・悔しいのは分かるけど無謀だよ・・・・落ち着いて・・・・それにまた砲撃隊の一斉射撃があるかもしれない。」


「は?・・・はぁ!?!?」


自分の事を常々『可愛い』だの『女神だ』だのと連呼するロックのことだ・・・腕を掴んで自分を止めたのはロック自身の想いを優先しての事だろう・・・そう思い込んだミュンはロックを殴り飛ばそうと声を荒げて振り返ったのだが・・・・見たことの無い真剣な眼差しで予想外の事を口にするロックにミュンは狐につままれたようだった。


「見て!」


戸惑うミュンを余所にロックはある方向を指差した。


「・・・。」


戸惑いながらもミュンはロックが指差した方向に視線を向けると、腕を広げているニドランの背後・・・・教会の塀の真後ろや奥でコソコソ動いている多くの影がある事に気づいた。そして、確かにその影たちの形から明らかに銃を手にしているのが見て取れた。


「・・・・。」


驚いたミュンは息を呑み、目を大きく開いてロックに視線を戻すとそこでいつもの笑みを見せられた。


「前衛は前衛。支援は支援ってね。」


「わ・・・分かったし・・・。」


ピクッ!と少し跳ねたミュンは、拗ねたような・・それでいて照れたような表情でロックの言葉に頷くと彼の視線から逃れるように顔を俯かせるのだった。



_______________________________



ここまでお読みいただきありがとうございます(o_ _)o))

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