Ep14:「ショウ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・へ?」
唐突に脈絡なく聞かれたショウは固まってしまう。
「少し前から気づいてたんだけど。。。あ、いや気づいていたってよりもしかして・・・てな感じでさ。今確信した。・・ぐへっ!」
「ななななな、何を!し、失礼だぞ!」
思った以上に取り乱すショウ。ユーキを支えていた体は10Mほど離れ、支えがなくなったユーキは地面に突っ伏していた。
「クッ・・・。ショウ!いやショウちゃん!女の子だよね!!?」
「ふふふふふざけるなっ!何をもってそう言えるんだ!?何をもってそう確信できた!??」
「まぁまぁ落ち着いて!」
「落ち着いてられるかっ!私は・・いや僕は!力だってあるし、足も早い!レンの兄弟で元村長だ!ムム、胸だって無いぞ!!」
顔が真っ赤になるショウ。中性的な顔立ちだから、と言っても男であるショウには何も感じなかったが、、、
「女の子って知ると、とたんに可愛く見えてくるな・・・」
ユーキはショウに聞こえるか聞こえないかの声で呟いた。
「何か言ったかッッ??!」
「いえいえ、なにも言ってませんとも・・・。さて、今更僕って言い換えても遅いし、力がある女の子だっているし、足が速いってwwwまぁ身体強化でどうにかなるし、村長であることが男の子である証明になるのかも分かんないし、胸は・・・晒し巻いてる???」
一つ一つ破綻した言い訳を論破されていく度、ショウの顔は紅潮していった。加えて息遣いも荒くなっていった。
「私は・・・・私は男の子だ!!男!オトコ!お!と!こ!!」
大きな声を出したので近くの木に止まっていた鳥たちが一斉に飛び立った。
荒い息遣いと鳥の羽ばたきの音だけが静寂な森の中に響く。
「・・・ショウ?大丈夫。おれはな、元いた世界で一番口が硬いと言われた男だ。安心して、みんなには言わないし、レンにだって絶対言わないからさ。」
するとショウは息がかかる位置にまでゆっくり近づいてきた。
「お、おい!近いって」
「・・・とうか?」
「え?」
「本当かと聞いてる。本当にみんなやレンに言わない???」
その瞳は少し潤んでいたが力強さが伝わってきた。
元いた世界に愛を誓いあった彼女が居たような・・・しかし忘れてしまうほどその瞳は美しくドキッとするユーキ。
「い、言わない!言わない!!」
「そうか・・・。なら言おう。言うぞ!言う!言うよ?言う?」
「言いなさいよ!!」
ユーキがそう言うと、ショウは意を決したような顔つきに変わった。かと思うとユーキの方とは反対側を向きながら叫んだ。
「わ、私は。。。お、お。おお。女の子だっ!」
大きな声がまたしても鳥を羽ばたかせた。
鳥の羽ばたきが静かな森に響いていた。
「そ、そうか。やっぱりね。」
するとものすごい勢いでこちらを向くショウ。
「やっぱり!!!!?????どういうこと!?確信はなかったの??!」
やべっと口に出てしまったと同時にしまった!という顔をしたユーキ。
「ご、ごめん!女の子なのかなぁとは思っていたけど、3割・・・いや2割は掛けだった。そりゃあ、ショウの体を見たわけじゃないし、確信は流石に持てなかった。でもそう言わないとホントのこと言わなさそうだったし・・・」
するとショウは泣き始めた。
「お。おい!ごめん。悪気はないんだ。ほんとに!」
「ひどい・・・。ユーキ。ひどい。。。クソヤロウ、バカヤロウ、アバズレ、クズ、オブツ、コシヌケ、キチガイ・・・・」
ボロボロと涙を流しながら罵詈雑言の限りを尽くすショウ。
「ご、ごめん。謝るから!お願いだから罵倒しないで!」
ピタッと罵倒を止めたショウは少し嗚咽が収まるのを待ち、口を開いた。
「な、なんで私が女って分かったんだ??」
「いや、顔はさ、なんて言うだろう。凄い整っていて、いや整いすぎてると言うか・・・。だからオトコでもオンナでもあり得る顔だなぁと思ってて、あ。気を悪くしたらごめんね。後は、名前からはこの世界のことわかんないから判別できないでしょ。力は魔法でどうにでも出来るだろうし、晒を巻いていれば胸は全然隠せるし。。。」
「じゃぁなんで・・・」
「きっかけは2つあって、ショウの髪の毛の質というか香りというか、なんだろ。気持ち悪いこと言うようだけど女性の香りがした。」
ショウは少し後ずさりした。
「ちょ!引かないで!!」
「・・・もう一つは?」
「・・・もう一つはさっき。俺を支えて木まで運んでくれただろ?その時にさ、やっぱり男の体じゃないなぁって。仮にも力が強いから筋肉質なのかなって思ったけど全然柔らかいし、骨の形とかも男じゃないなって。でもやっぱり確信が持てないのは男でも居そうっちゃあ居そうだったからね。」
「じゃあ、・・・結局言い損か・・・。」
シュンとした表情で俯くショウ。
「なぁ。秘密っていうのは。自分ひとりで抱え込んでおくとストレスになって良くないんだぞ!誰か信頼できるひとに共有しないと。」
「異世界から来たどこの馬の骨ともわからない奴を信用しろと・・・??」
「ひどい言われようだな。まぁ確かに。でも信じてくれよ!さっきも言ったけど俺は口は堅いんだ。損なんて考えないでさ!」
ユーキは取り繕うように大きく笑ってみせた。
それでもショウは疑惑の眼差しをユーキに向けるのだった。
「・・・ユーキを信じるかどうか、言ったことが損か益かはゆっくり確認することにするよ。」
大きくため息を付きながら言うショウにユーキは続けて質問する。
「なんで隠してるんだ?女の子だっていいじゃないか。かわいいぞ。ショウ。」
またしてもショウの顔が赤くなっていくのを笑いながら見るユーキ。
「おま、お前なんなんだ!そういうことは、も、もっと丁寧に言うべきだ!」
「ショウ。かわいいよ。」
(ショウの)頭が爆発した。(イメージです。)
ユーキは誂うように笑っていた。
「それで?なんで隠してるんだ?男の子より女の子が好きなのか?」
少し黙った後にショウは口を開いた。
「別に・・・。私は普通に、・・・えーと、男の子が・・好き。だよ。」
「じゃあなんで?」
「・・・私は、みんなが憧れる人であり、尊敬すべき人であり、目指すべき人にならなくちゃいけなかった。」
「村長として?ってこと?」
「まぁ・・・そうだな。村長の家系に生まれるということはそういうことなんだ。でも女であるとやっぱり嘗められると言うか。そこに関しては私も、お父さんも同じ意見だった。生まれた時、体が弱い兄さんに変わり強い子を望んだ両親はひどく落胆したそうだ。母は私を生んでから体が衰弱し、もう子供を産める体ではなかった。そこで両親は生まれた子供の性別に関してはすぐには公にしなかったらしい。それどころか病弱だからと、私が物心がつくまで村人との面会を断っていたらしい。」
悲しそうにショウが言った。
「ひどいな。自分の子供なのに。」
「そう思う?でもね、そういう考え自体は私も否定しない。親の世代で12代も続いてきたこの村の村長とは、”そう”でなくてはならないからだ。」
「たとえそうでも、自分の子供を、なんていうかそんな卑下したような育て方をすべきじゃない。」
「・・・ユーキは優しいね。でもね。またユーキの考え方を否定するような言い方で申し訳ないんだけど。。。両親はすごくいい人で、私にはかけがえのない人だった。現に私は両親にうんとよく育ててもらったし、別に私を差別したりは一切しなかった。男として生きていくことを強要もしなかった。だからこそ、両親は私の物心がつくまで、待っていてくれたんだ。」
「あ、なるほど。」
「私の考えが村長は男であるべきと知った両親はひどく喜んでくれた。私もそんな両親を見てもっと喜んだ。私の考え自体が・・・この村の考え方に、掟に、毒されていると言われたら否定は出来ないけどね。」
「・・・」
「それが私が男として生きてきた大きな理由。その他にも大なり小なり理由はあるけど。例えばレン。あいつはほっとけ無いやつだから。私がしっかりしないといけないんだ。」
「納得。その理由が一番しっくり来るよ。」
ショウもユーキも微笑んだ。
「ショウが女の子であることを知っているのはどのくらいいるの?」
「兄さんとユーキだけかな。両親はもう居ないし。」
「ほ、ほーん。」
「絶対にい わ な い で ね?」
「はい。」
冷や汗滴る。
「じゃぁ脇腹。出して。」
「え?」
「え?じゃないでしょ。怪我してるから回復しなくちゃいけない。」
そう言われた途端にものすごい激痛が横腹を襲う。
「そ、そうだった。タンゴめ・・・」
「ほら。あぁ魔障になりかけてる。早く治さないと。」
無理矢理に近いような形で脇腹をショウに見られた。ショウは傷を見てすぐにそういった。
「イテテ・・・魔障?魔障ってなんだ?」
「魔障ってのはね、魔物が持っている魔素が傷口に入ることで悪化した患部のことを言うんだ。まぁ言う慣れば細菌・・・?毒だよね。ほっておけば確実に死ぬ。」
一瞬で青ざめるユーキ。
「ひぃ。早く直してくれ!」
ショウは緑色の光を傷口に当てる始めた。10秒くらい。光があたっている箇所はとても暖かく傷の痛みも感じなかった。
「はい!おしまい!」
そう言われると患部を思い切り平手で叩かれた。
「ぐぎぃ!お、おい!なんてことを・・・あ、あれっ?」
ユーキは先程と今の状態の違いに違和感を感じ傷口の方を見た。傷は跡形もなく消え去っていた。
「そんなに深い傷ではなかったからね。魔障の除去、傷口の再生ともに10数秒で終わったよ。」
「・・・魔法って。。。すごい!」
ユーキは感動した。
「そ、そういえばレンは??」
「そうだ!レンなんだけどね。実はユーキがタンゴと戦ってる最中に・・・」
するとものすごい轟音が森に響いた。
「噂をすれば・・・」
ショウは音のする方を見ながらそう呟いた。
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