Ep13:「(今度こそ)タンゴで実践!!」
急に一人で戦えと言われ、二人はその場から居なくなった。目の前にはタンゴ。まだ身動きは出来ないようだ。
「急に戦えっていわれてもなぁ・・・。でもこいつ弱そうだしいけるかも・・・」
ユーキはタンゴが土属性であること、優位属性が水であることなどを一通り思い出し両の手に水属性の星の力を溜めていた。
「さて、イメージだぞぉ俺。消防車の放水をイメージすればいいのかな。。。とりあえずそれで・・・」
手に力が溜まってきているのが分かった。
タンゴが少し動いた。拘束魔法が解け始めたようだ。
「あいつが動き始めたら一気に放出だ。問題は・・・名前だな。ハイドロ◯ンプ??いやいや・・・」
バチンッ
その音とともにタンゴは動き始めた。タンゴを見ると物動い速さで近づいてくる。
「お、おいおい!まだ準備できてない!」
ものすごい勢いで突進してくるタンゴをユーキはすんでのところで避けた。ユーキの後ろは壁だった。
「うォッ!あっぶねぇ!・・・ショウやレンのときは襲わなかったくせに!・・・でも後ろは壁だ!激突で自爆しろバカ!」
タンゴはユーキに避けられ、まっすぐ突進をしていた。
「・・・!待て待てまて!」
壁には大きな穴が空いていた。
一瞬でユーキの顔が恐怖に変わった。
壁に空いた穴の奥からタンゴが出てきた。傷一つ無い。
「くそ。くそくそ!やばいやばいやばい。」
つぶやくようにやばいを連呼するユーキ。頬には冷や汗が滴る。
「魔法魔法。。。」
右手に溜めていた力を目の前の大穴に向けて放つ。
「ハイドロ!!」
これならいいだろ、問題ないだろとつぶやきながらユーキの手からはものすごい量の水が放出されていた。
「やったか?・・・はっ!!このセリフは・・・フラグ・・・!!!」
が~んとした表情をするユーキ。
悪い予想は当たるもので・・・
「グルルル・・・」
少し疲弊したような感じだが怒りで唸っている。
「火に油だったかな。。。」
そのとおり。タンゴは更に力強い走りを見せた。
「アクアシールド!!」
ユーキはとっさに目の前に水の壁を作り出し横に飛び退いた。しかし完全には避けきれず、横腹をタンゴの牙がかすめた。
タンゴはいともたやすく水の壁を破壊していた。脇腹からは血が滴り落ちていた。
「ぐっ・・・あぁ~くそ。なんてダサい名前だよ。。。アクアシールドて・・・防げないわけだよ。考え直しだ。・・・こいつ低級モンスターだよな・・・何体束になっても勝てるようになれ、だなんて・・・、無理だろ!!」
話している途中でタンゴは石礫を飛ばしてきた。
ユーキはまた避けた。
「我ながらいい動体視力と反射神経だ。助かった・・・。」
ユーキはタンゴと距離をあけた。
「横腹の傷はそんなに深くないみたいだな。。。さて、実践だぞ俺。異世界で最強になるならこんなとこで躓いてたらだめだろ。小学生や中学生の頃に夢にまで見たモンスターとの戦闘。魔法。やるぞ俺!」
ゆっくりと深呼吸をし、迫りくるタンゴを見据える。
ふと頭にリヴァイアサンが浮かんだ。
「舐めんなよ厨二病。"水神壁"!!!」
後数メートルのところまでタンゴは迫っていた。再度目の前に水の壁を張るユーキ。
ガチンっ!!
しかし今回は壁は破られずタンゴは弾かれていた。
「よしっ!!いいぞ。イメージだイメージ。”水神剣-レヴィアタン”」
ユーキの右手からは水の剣が伸びていた。太陽の光が反射し、まるでリヴァイサンの目のように煌めいていた。
そのままユーキは水神壁に弾かれクラクラしているタンゴに近づいた。
「厨二病を・・・舐めんなよぉ!!!」
そう叫びながらユーキは右手を振り下ろした。
タンゴの体は真っ二つになり、断末魔をあげ絶命した。少しするとタンゴの体は風に溶けていった。
「よくやった。凄いぞユーキ。」
タンゴが消えてから少し経った後にショウがユーキのもとに戻ってきた。
「よ、よくやったじゃないよっ!!死ぬところだったんだぞ!とっさに厨二病発症して助かったけどさ!」
ユーキはことが終わり安堵したのか地面にヘタレこんだ。一段落した後、先程の技名を考えてしまい少しだけ後悔した。
「もっとかっこいいオサレな名前を考えないと・・・」
「申し訳ない。でもユーキ。ほんとに凄いことだ。しっかり魔法を使いこなしていた。水の剣とは恐れ入った。どういう風に水を固形化してだとか、形だとか、見た目に至るまでしっかりイメージできていたと思うよ!」
「・・・?」
実際にはあんまりイメージできていなかったユーキは首を傾げる。
「どうやって水を固形化したんだ?まぁおそらく瞬間的に水圧を高くして・・・とかだと思うんだけど・・・?」
「・・・?」
「イメージ・・・出来てないの???」
「うん・・・。それってどうなの??」
「わ、分からない。私はイメージをしっかりしないと液体や気体で相手を切り裂くなんて芸当はできない。。。瞬時にイメージできていたのか・・・?それとも星の力の特性か?」
「う、うーん分からないけど、仮にしっかりイメージできていなかったらどうなの?」
するとショウはゆっくりと答えた。
「・・・この世の理を覆す存在。実現可能なことならば思い描くだけでその魔法を放つことが可能だ・・・。」
「それってつまり・・・最強ってこと??」
「・・・そうなるな。」
神妙な面持ちのショウとは正反対に笑みが零れそうになるユーキ。
「もちろん、属性はしっかり色を意識して生成しなければいけないことは先程確認したが、発動する魔法に関してはそのものを思い浮かべさえすれば実現できる可能性が高い。でも本には書いてなかった。こんな大事なことを・・・?」
「ふーん。まぁじゃあこの俺の最強の力を使ってさ、ソーン樹海をさっさと攻略しちゃおう!んで俺がいたあの世界に変える方法を見つけよう。」
「そうだな。心強い力だ。・・・けどユーキ。一言言っておくけど。力に呑まれるな。自分が使う力を自分のためだけに使ってはいけないよ。さもなくば君は力に呑まれ、戻れなくなるよ。」
真剣な眼差しでそういうショウ。
「お、おう、心配すんなよ。大丈夫だって。とりあえずもっと実践すんだろ?早くショウやレンと同じレベルまで行きたいんでね。ササッとやろう。」
そう言うとユーキは腰を上げた。しかし
「あ、あれ・・・?」
フラッとしたかと思うとユーキの視界は90度傾いていた。
「お、おい!大丈夫か!!?」
ユーキはその場に倒れ込んでいた。
「う、、、だ、大丈夫。多分軽い貧血。。。立ち眩みみたいな・・・。」
ショウはユーキの肩を持ち近くにあった木まで担いで言った。
「いや、おそらくだけどユーキ。力の使いすぎだ。おそらくその最強の力は力を使いすぎるのだろう。少し休もう。」
ユーキはショウに支えられながら木の根元で休んだ。上を飛ぶのは鳥だ。キレイな囀りが聞こえてくる。
「この世界は。。。ほんとにきれいだな。」
「そうか?そう言ってくれると嬉しいな。良かったよ気に入ってもらえて。」
笑いながら答えるショウ。
「この世界は美しい。木々も、草も、大地も、海も、空も、鳥も。。。」
空を見ながら静かにユーキが言った。
「・・・ありがとう。」
「なぁ、ショウ。」
「ん?何??」
少しの静寂。鳥の囀り。木々の木漏れ日。ユーキが切り出した。
「ショウってさ。。。女の子でしょ・・・?」
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