Ep12:「タンゴで実践・・・?の前に魔法の練習!!と説明」

「さっそくだが・・・」


そう言うとショウはそばに居たタンゴを抱き上げ,開けた場所とは反対方向に進んだ。


「実践・・・といったがまずは魔法の説明や、実践に向けた戦い方などの説明を行う。まずこいつが救難合図を出すと嫌でも群れを全滅させなくてはいけない。実践経験の観点から不効率になる為、基本的には一体ずつ相手にしていくような感じだ。」


ショウは抱いていたタンゴを下ろすと一言何かつぶやいた。するとタンゴはビタッと固まってしまった。


「魔法で動かないように固定した。固定しただけで意識はある。魔法の類を放たれる可能性もあるから気をつけてくれ。あとこの魔法は陰、つまり闇属性だ。私は闇属性が苦手でね。長く持たない。持って15分だろう。その間にやるぞ。」


タンゴは目だけをきょろきょろ動かして周囲を把握していた。


「さて、ユーキは先程、計反での属性判定の際に火属性が苦手であることがわかっている。他の雷、風、水、光の属性を調べてみよう。」


「調べてみようってどう調べればいいんだ?さっきみたいに炎みたいなものをイメージすればいいのか?」


「そこが魔祖コントロールの難しいところだ。先程言った魔祖の色について説明しよう。」


「出たな。難しい話。」


「ここを理解して、とっさに判断することができないと、レンみたいに魔祖コントロールができず、魔法が不得意になるぞ。」


そう言われたユーキは俄然やる気が出た。レンにだけは負けたくなかった。


「魔祖というのは組み合わせや使う魔祖量のコントロール次第で無限の可能性が在る。イメージ力が大事と言ったが、ここで考えてほしい。因果属性を除く4つの魔祖は単体で使用するとそのまま、火、雷、風、水の能力が使用できる。単体で使用するときはそれほど深く考える必要は無いが、組み合わせて使用する際は因果属性も含めて色をイメージした方が分かりやすい。」


そう言うとショウは手から緑色の光を生成した。


「例えば回復。回復は組み合わせを行わずに実現ができる。属性は緑。つまり風だ。これを色ではなく、"風"の効果で考えるとどうだ。わからないだろう。」


確かに。風が回復を行う・・・というのはイメージが沸かない。


「次は色をイメージするとどうだ?」


ユーキは色をイメージしてみた。風属性の緑。確かに回復の色だ。回復の色?


「緑が回復の色・・・というのは人によって違うかもしれないが、イメージだ、ユーキ。在る種そういうものと捉える他無いな。私は風属性が得意といったがつまりは同時に回復も得意ということになる。」


「まぁ何となく分かるよ。光属性が回復って考え方とかもあるだろうけど・・・。緑が回復って考え方もあるだろうなぁって感じだ。他にはないの?」


「他にもたくさんある。思いも寄らない使い方が魔祖にはある。他には、ん―そうだな。組み合わせで言うと・・・」


ショウは少し考えた後、タンゴに向けて魔法を放った。


放った魔法は弾けるような音とともにタンゴの右足を粉砕した。


けたたましい叫び声を上げながらタンゴはのたうち回った。


「うわっ。気分悪いな。。。こんなものか?」


「先程も言ったが、こいつらはなんの意識も持たないただの物だ。そこら辺にある木や草と同じ。動いたり叫んだり攻撃したりはするけどね。」


さらっと言うショウに改めて怖さを感じたユーキであった。タンゴは弱り、息遣いが荒くなっていた。


「この魔法は爆発魔法の一種だ。さてユーキ。何を組み合わせたら爆発の属性になると思う?」


ユーキは考えた。


「そうだな・・・。火の属性は確実だろ?後はなんだ?雷?風?もしくは火を強化するという考え方で光?」


「いいぞユーキ。イメージができている。が、残念ながらすべて不正解だ。属性で考えるとそうなる。色で考えよう。爆発の色をイメージしてみてくれ。」


-爆発のイメージ?何だ?んー火が爆発する色??・・・いや火薬だ。火薬の色は・・・-


「黒か!!火薬の色の黒!つまり火の属性に闇の属性。赤に黒を加えると爆発になるのか!」


そのとおり!とショウは拍手をしながら言った。


「素質が在るぞ!ユーキ。爆発魔法とは、火属性に闇属性を組み合わせ生成する。魔祖量の比率も関係するが、正解だ。属性で考えると火を弱体化させることになるから分かりづらいよね。」


「ヘヘ」


まんざらでもなくニヤけるユーキ。


この世界の魔法における法則が分かってきた。


ではそれぞれの属性を使用できるかどうかを調査し、その後にユーキの戦闘スタイルを考えてみよう。


ユーキはショウやレンの言うとおりにイメージし、様々な属性の魔法を使用してみた。


結果、ユーキが実践で使用できるレベルの魔法属性は、水属性、風属性、そして闇属性となった。また火属性も問題なく使えた。光属性はなぜか全く使えなかった。


「なるほどね。光属性が全く使えないのは少し驚いたけど。先程の火の魔法は・・・やはりあまり上手くイメージ出来ていなかったみたいだね。まぁまずは自分でも色を組み合わせることでできる魔法を試してみるといいが。まずは土属性を試してみようか。」


「土・・・火に風―いや、赤に緑を組みわせるのか?」


「素晴らしい。そのとおりだユーキ。土の属性を生成するには火属性と風属性を組み合わせる。他にも所謂茶色を作る方法は在るが一番コントロールがしやすいのはその2つを組みわせることだ。やってみよう。右手に火をイメージする。左手に風をイメージする。」


「そう言われてもだな・・・」


そう言いながらも意識して手に力を込めてみた。そしてそのまま目の前のタンゴに向け放ってみた。


すると掌から勢いよく出たのはバチバチとほとばしる雷だった。不意に放たれた雷はタンゴを逸れ、明後日の方向に飛んでいった。


「・・?何をやってるユーキ。イメージが出来ていないぞ。雷をイメージしてはだめだ。いや、

待て待て、先程試したときにこれほどまでに雷属性を使えるとは思わなんだが?」


ショウにそう言われユーキは戸惑っていた。


「い、いや、たしかに俺は右手に火と左手に風をイメージしながらやったぞ!俺だってさっきはちゃんと雷をイメージしてみたけど出来なかったから、今急にできて驚いてるよ!」


「しかしそれが本当なら、色は茶色、土属性ができるはずだ。何を間違おうとも黄色が生成されるはずはないぞ。・・・・いや待て、もしかしてこれが星の力と魔祖の違いか?」


そう言うとショウは少し考え始めた。しばらくしてふと思いついたように言い放った。


「加法混色か!!」


「「カホウコンショク????」」


ユーキとレンは聞き慣れない言葉を聞き同時に聞き返していた。


「所謂光の三原色。赤、青、緑をもとに3色を組み合わせていくと最終的には白になる混色法だ。」


頭が爆発した。(イメージです。)


「一方、私達が使用する魔祖は、一般的な考え方である減法混色だ。」


「「ゲンポウコンショク????」」


「絵の具をイメージするとわかりやすいが、黄、赤、青を原色とし、組み合わせていくと黒になる混色法。正確には黄、紅紫、藍緑のことを言うが・・・」


頭が爆発した。(イメージです。)


「ユーキが持つ星の力は前者、加法混色で属性を生成するはずだ。加法混色では、赤と緑を1:1で足すと黄色になる。」


もはや二人は聞いていなかった。


「とはいえ、まだ予想の域を出ない。他にも試してみよう。加法混色で茶色を生成するには赤と緑を2:1の比率で混ぜる。難しいがやってみよう。おそらくこれが加法混色で一番簡単な土属性の生成方法だ。」


「比率だ何だって言われてもだな・・・」


愚痴を言いながらもユーキは言われたとおりに手に力を込め始めた。


-さっきと同じで右手に火、左手に風。それから・・・右手に貯める力を左手より多く・・・。そしてそれを。合わせる!!-


ユーキはは両の手を目の前のタンゴに向け突き出し、力を放った。


すると地面が割れ地中から岩がせり出し、タンゴを押しつぶしてしまった。しばらくすると岩は消えてしまった。


「いいぞユーキ!やはり星の力は魔祖とは違う使い方らしい。けど色という考え方自体は間違っていないようだ。」


「これが。。。魔法。」


「ようこそ。この世界へ・・・といったところかな。」


ユーキは少し微笑んだ。


「そういえばさっき、茶色を作る方法が他にも在るって言ってたけど、だと例えば赤、黄色、黒とかを混ぜ合わせたりで同じことができるのか??あー魔祖ならってこと・・・。」


ユーキはショウに聞いた。


「そうだ。けどその方法だと色の比率だったり、そもそも使う色が多くてコントロールが難しい。だから基本的には赤と緑をあわせる。魔祖はもちろん星の力も使い方は無限大だ。苦手な属性を得意な属性を組み合わせる事で生成出来たりする。ユーキみたいに、雷属性は単体では苦手だけど、火と風を組み合わせることで十二分に使えたりするというわけだ。」


「なるほどなぁ・・・難しいわけだ。」


ユーキはレンをいじるように横目で見た。


「ちなみに、タンゴを見てみろ。」


そう言われユーキはタンゴの方に目をやった。


「!!!・・・治ってる?」


ショウの爆発魔法によって右足は粉砕していたはず。さらに、先程の土属性の攻撃によってダメージを受けていたはず・・・しかし、目の前のタンゴの足は治りかけていた。


「基本的には魔物は再生能力が高い。放っておけば足の一本や二本は再生する。魔物によって速度はまちまちだが遅くても1ヶ月程度で完治する。タンゴはそんなに再生能力は高い方ではないけど・・・。」


「じゃあなんでこんなに再生してるんだ?もう少しで全快じゃないか。」


「その真相は・・・属性だ。」


「ん?どういうことだ?」


「魔物には属性がある。魔物が得意な属性、というわけではなく、魔物を構成する魔祖自体に属性が在るという事だ。つまりタンゴを構成する魔祖は土属性というわけだ。」


「な、なるほど。難しいな。授業を受けたいくらいだ・・・。ん?魔素には四つの自然属性だけじゃないのか?」


「魔素自体にも単体属性と混合属性の二つが存在する。土属性は混合属性だ。混合属性における魔祖の属性は最適な混合方法となるため火と風となる。魔祖で構成されているから減法混色で考えて。」


必死に話についていくユーキ


「基本的には魔物を構成する属性と同じ属性で攻撃してしまうと、回復してしまうことがある。またその属性を組み合わせ生成した別の属性も同様に回復してしまったり、効きづらかったりする。タンゴに対しては土はもちろん、土を構成する風、火の属性も効きづらかったり、今回のように吸収されやすかったりする。」


「ふむふむ・・・」


「星の力だから魔祖とは関係ないのではと考えるかもしれないが、一度体から放出された力は、魔祖でも星の力でもなく、"魔力"となる為変わりない。」


「・・・ふむ・・・」


「さて実践向け、属性の関係も話しておこう。属性の関係には劣位、優位、中位が存在している。土属性に対し優位は水属性となり、中位は雷属性、劣位は風と火属性。同じ土属性も劣位の一つとなる。これも考えながら戦闘に応用しなくては、たとえ低級モンスターとて一筋縄ではいかない。」


「ふ・・・・・・・・むぅ」


「属性の関係についてはまた詳しく教えよう。今回はタンゴが土属性であること、土属性には火属性、風属性、土属性は効かないし、下手したら回復されてしまうこと、水属性が弱点であることを覚えよう。」


「最後に、一番重要なことだ。魔法は何よりイメージ。魔法には名前をつけたほうがいい。言葉は私達人間が作り出した祖なるもの。言葉には力がある。名前をつけることで自身のモチベーションが上がったり、その名前で構成される属性の組み合わせなんかがぱっと思い浮かんだり。様々な副次的な効果が存在するからだ。これらは"魔法はイメージ"という考えと同じでとても重要だ。覚えておこうね。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「さて、復習だ。


・ユーキの得意な属性は闇であること。

・ユーキの得意な戦闘方法は近接であること。

・ユーキの使える属性は、火・水・風・闇。光以外は基本的には使えること。

・組み合わせて別属性を生成する際は加法混色を用いること。

・相手(魔物)の特性や属性を知り、その場にあった戦い方を考えながら行動すること。

・属性には優位、劣位、中位があること。

・魔法はイメージ。何よりも考える力やモチベーションが大事であること。


たくさん覚えることは在るけどこの世界じゃ常識だ。ゆっくりいでいいから覚えていこう。」


「・・・オーケー。とりあえずは。。。」


「 難しいと思うが、属性の関係に関しては覚えていくしか無いし、モチベーションの観点なんかから魔法の名前なんかはよく考えたほうがいいかもね。半端な名前や自分のモチベーションが上がらない名前なんかは極端に性能が落ちる。」


「さて、タンゴは土属性。先程も言ったが、水属性を使用して攻撃すると割とあっさり倒せるかもしれない。私達は離れる。ユーキ。君一人で戦うんだ。」


「・・・えぇ!!?ちょ、」


「もうすぐ拘束魔法が解ける。さぁ今度こそ、実践だ。」

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