Ep11:「魔法属性と魔法タイプ」
「こいつらはリブゴン・ムイラス・ビント・タンゴ・コネ・・・・」
「いやいやいや!そんな一気に言われても覚えられないよ!」
ユーキは突っ込んだ。
「そ、そうか。まぁ低級なモンスターだからな。最悪覚えなくてもいいか。」
納得したように答え、そのまま続ける。
「こいつら低級モンスターは基本的には襲ってこない。けど敵意があると分かった奴には襲い掛かる習性がある。でも・・・」
そう言うとショウは魔物の群れから逸れ、こちら側にいた1体モンスターを蹴飛ばした。
「なっ?!」
驚いたユーキは不意に声を上げてしまった。
「本能で敵わないと分かった敵には敵意すら向けず逃げていく。」
先ほど蹴ったモンスターは一目散に群れへと逃げて行った。
「だからこいつら低級モンスタ―は群れを成す。群れにいるやつを攻撃すると厄介だ。合体する奴もいるし、攻撃された周りにいるモンスター達も感化されて攻撃してくる。群れになるとより攻撃的になる。」
この数の未知なるものに襲われたらと思うとユーキはぞっとした。どんな死に方をするのだろう。あの液状・・・スライム状のモンスターは絶対、口に入り込んで窒息させてくるだろう。
「とはいえ、低級モンスター。束になって来ようとも私とレンが守るよ。」
ユーキはほっとした。
「行く行くはこいつらが何体束になっても倒せるくらいにはなってほしいが。まずは群れからはぐれた奴を相手取り、少しづつ魔法について説明しよう。魔物にもいろんな種類とかいるけど。それはまた今度にしようね。」
ショウは再び歩き始めると側にいた犬のようなモンスターをそっと抱き上げた。かわいい。
「こいつはタンゴ。先ほども言ったように敵意さえ見せなければ襲ってくることもないし逃げもしない。」
そのかわいい見た目を見てつい考えてしまった。こいつを殺すのか。
「こいつは。。。かわいいな。こんな犬みたいなやつを・・・」
「かわいいか?確かに。犬の様な見た目をしているな。だからって油断しないこと。あと、情を持たないこと。こいつらには”意識”がない。懐くなんてこともあり得ないし隙を見せると襲ってくるよ。」
「意識?意識って?」
「詳しい説明は長くなるから避けるけど。つまりこいつらは考えない。本能のみで生きている。それだけだよ。」
こんな可愛いのにか・・・と思いながらもユーキは納得した。
「さて、まずはユーキの魔法の得意属性を確かめよう。・・・あぁ、まずは魔法が使えるか、もね。」
ショウはそう言うとユーキのそばに来た。その長髪からはいい匂いがした。
-こいつ。良い匂いするな。男のくせに長い髪で、顔もなんか中性的で。こういう奴いるんだよな。俺みたいに普通にすね毛があるやつもいれば、もはや女の子みたいなやつも。ウラヤマシイ。-
そんなことを思っているとショウに咎められた。
「ユーキ。ユーキ!どこを見ている?そんな腑抜けた顔して。さぁ魔法を使えるか確認するぞ。両手を前に出して。」
ユーキは少しおどおどしながらも両手を前に出した。
「そしたらまずは炎をイメージするんだ。炎炎と燃え盛る炎だ。」
-燃え盛る炎。こうか・・・?-
ユーキは言われた通りに頭の中で炎をイメージした。
「イメージしたなら次だ。先ほど計反を使った時のように、手に力を意識してみるんだ。」
ユーキは言われた通りにやってみた。すると
「おぉ!来る!なんか・・・なんか熱いものが体から手に集まってきてる。すげぇ!」
実際、体の内から得体のしれない熱いものが手に集まっていた。なんとなくではない。確実に集まってきてる。
「いいぞ!魔法とはイメージだ。想像の力と言っても過言ではない。次はその集まってきた力を目の前に放出するイメージだ。」
ユーキは言われるがまま想像してみた。この手に溢れんばかりの熱い何かを。全部。目の前に投げ出すイメージを。
「ウォオオオオオォオオオオオ!」
そしてユーキはすべてを放出した!
プシュー。
とても情けない音と、ライターから出る火のような炎(?)が目の前に現れて消えていった。
「「「・・・・」」」」
3人とも黙ったままだった。
「・・・まぁこんなもんか。得意な属性が火の属性ではなかっただけ。」
「・・・俺よりひどくね?」
二人は少しの静寂の後にそっと呟くように言った。
「おぉいっ!そんな哀れみの目で見るな!み、見るなぁ!!」
「まぁまぁ。とりあえず魔法は使えそうだし、いいじゃないか。属性による得意不得意がこんなに顕著にでないことも・・・ないよ。」
最後の一言は作り笑いだとわかる表情で呟いていた。
「同情するな!くそ!! ・・・・!!」
はっとしたユーキはそっと横目でレンを見た。
「・・・」
「ひぃ」
何も発さず、一言も発さず、ただこちらを見ていた。口がにやけている。その顔に不意に恐怖してしまった。
-こいつ!俺をからかってやがる!-
「さぁ。気を取り直そう。魔法が使えると分かったんなら簡単に得意な属性を知る方法がある。」
そういうとショウはまたしても計反を取りだした。
「さぁ。ここを持つんだ。」
そう言われたユーキはまたしても軽反の端の方を持った。ふと気が付いた。今持っているのは先程持った汚れている方ではなく少し綺麗な方だった。
「持つ方によって測れる対象が違ってくるのか。」
「そうだ。よく分かったね。この四角形の布はそれぞれの端で測れるものが違う。一つは魔祖量。一つは魔法属性。一つは魔法タイプ。まぁ、あくまで特異な属性やタイプが分かるだけだけどね。」
「なるほどなぁ。ん?いや待て。今3つだけだったぞ。もう一つは?」
「もう一つは分かっていないんだ。もしかしたら何も機能がないかもしれない。魔祖を込めても反応がないんだ。さぁ。そんなことより、魔祖を、いや星の力を込めてみるんだ。」
「・・・まぁいいや。行くぞ。」
先ほど同様に、布が大きく変化するだろうと身を構えたユーキ。しかし布に大きな変化はなかった。
「色が・・・」
布は大きさは変わらず、色のみが変わっていた。真っ黒に染まる布を見てショウが言った。
「なるほど。初めて見たな。ユーキ。君の属性は、"闇"だ。」
「やみぃ!?なんだその物騒な属性は。」
真黒く染まった布を手放すと徐々に元の色に戻っていった。
「私も初めて見たよ。そもそも魔法属性は大きく分けて6つあるんだが、その6つはさらに大きく2つに分けられる。自然属性と因果属性の二つだ。」
難しい話をされ始めたのでユーキの頭から煙が出始めた。(イメージです。)
「自然属性とはこの世界を構成する物質を表している。一つは火。一つは水。一つは雷。一つは風。ちなみに私は風の属性を得意としている。」
「な、なるほど。一般的な属性だね。」
アニメで見てきた知識によりかろうじて正気を保っていた。
「因果属性とは、この世を作ったとされる根源たる属性の事を言う。つまりは陰と陽。闇と光だ。」
またしても頭が爆発した。(イメージです。)
「ちなみに、この計反をディズさんが持ち帰った当時から今までで、村人には因果属性を得意とする者はいなかった。一人を除いて。」
「・・・ディズさんの事か?」
「俺だ俺だ俺だ俺だ俺だ俺だ俺だ俺だ俺だ俺だ!」
急にレンが叫びだしたかと思うと計反の得意属性を図る端の方を持った。
すると計反はまばゆい光を放ち始めた。その光は周囲を照らしショウの近くにいた魔物"タンゴ"は少し嫌がるようなしぐさを見せた。
「はぁ。そう。レンは因果属性の光が得意属性らしい。ちなみにディズさんの得意属性は水だった。」
得意そうな笑みを浮かべレンはユーキを見た。
「お前俺にマウント取ろうとするな!!くそが!」
悪態をついたユーキに向かいレンは、なんだと!と言いながら向かってきた。計反はレンの手を離れ光は徐々に収まっていった。光を嫌がってショウの足の陰に隠れていたタンゴもほっとしたようだ。
取っ組み合いの喧嘩が始まった。お前が!いやお前が!!の応酬。
するとショウが何かつぶやきながら片方の足で地団駄を踏む動作をした。地面が大きく音を上げて割れた。地面がショウの足から蜘蛛の巣状に地割れていた。二人はそっと喧嘩をやめてショウを見た。タンゴは震えていた。
「・・・ちなみに、今のは陽・・光属性を使用した一種の魔法だ。光属性には身体の機能を向上させる機能を持つ。反対に闇属性は身体の機能を低下させる機能を持つ。」
冷静に説明を続けるショウに二人は恐怖していた。
-こ、こういうキャラなのね。わかった。ショウの前では真面目にしていよう。-
ユーキが思った。
-最近へまが多すぎる。次は絶対に殺される。注意しないと・・・-
レンが思った。
「とりあえず、あの閉鎖された環境ではあるものの、得意な属性が因果属性なのはレンしかいなかった。本にも珍しいと書いてあるしね。」
「つまり闇属性はジャマ―で光属性はエンハンサーってことか。そして珍しいと。やっとこの世界で特別になれた気がするよ。」
少しにやけながらユーキは言った。
「あくまであの村での事だからね。あと、ジャムやエンハンスに関しては使い方の一つだ。魔祖のコントロールによって戦い方は無限にある。」
そういうとショウは落ちていた計反を拾うと土ぼこりを払うようにはたいた。
「そして、私は魔法の属性に関して、基本的な考え方とは別の考え方を持っている。本や、ディズさんが言っていた外の世界の考え方は先程説明したとおりだが、色で考えたほうが考えやすい。詳しくは後で説明する。」
「い、今説明してくれたほうが助かるんだが・・・後だと、今さっき聞いたことも忘れそうだ。。。」
「いや、一度に教えるともっと忘れやすい。後と言っても実践のときに教えるよ。さて、次だ。魔法タイプを計反を使って確認してみよう。あくまでこれも得意なタイプってだけだからね。さぁここを持って。」
ユーキは言われた通り、解れているほうの端を持った。同じように星の力を手に込めた。
すると計反は見る見る間に形が変わっていき拳の様な形になった。
「なるほど。ユーキは近接タイプだね。」
「なんだこれ。すごい直接的な表現だな。拳だから近接か。ショウはなんだったの?」
するとショウ計反をユーキから受け取ると魔祖を込め始めた。計反は形を変え弓矢の形に変わった。
「・・・まさか。つまりは・・・遠距離系?ってことか?」
「その通り。私の得意な魔法タイプは遠距離だ。」
-まさかとは思ったけどこんなに単純な。。。計反への信頼度が下がるような。。。なんかおもちゃに見えてきたな。-
そう思いながらユーキはレンはどうなのか聞いてみた。
「ん?俺?俺も近接タイプだよ!」
「ユーキとレンは似ているな。属性といいタイプといい。いい関係になれるんじゃないか?」
そういわれたユーキはへらへらしているレンを見て、なれないだろと感じていた。
-とは言え、ショウはショウなりに俺たちのことを考えてるんだろうな。いいやつだな。-
「そういえば、タイプにはどんなものがあるんだ?」
ユーキは属性と同じく近接と遠距離以外にもあるだろうと考え、質問した。
「魔法のタイプは・・・ごめん。全部は知らない。けど多分幾通りもあると思う。本には近接タイプ。遠距離タイプ。支援タイプ。後は特殊タイプってひとまとめにされていた四つが記載してあった。」
「特殊タイプ?」
「前者3つのタイプ以外のことだ。まぁ色々ある。ってディズさんは言ってた。当のディズさんは特殊タイプだった。空間移動タイプっていって・・・まぁ言葉のままだけど。」
「フーン。色々あるんだな。じゃ計反の魔法タイプはあんまり宛にならないな。」
「いや、初めにも言ったように、あくまで得意なタイプを図るだけだから何とも言えないが。目安はできるな。自分の何を伸ばすか。何を育てるか。」
-自分の得意なものを伸ばすか。。。-
「苦手の事をいくら練習するよりも、得意なことを練習したほうが効率がいいからね。」
ユーキは納得した。
もといた世界での部活のことを思い出していた。
「さぁ。得意な属性や得意なタイプがわかったから次は実践だ。」
そう言うとショウはタンゴの方を見た。
タンゴは意識がなく本能のみで生きているらしい。
こころなしかタンゴはショウに対して震え、怯えているように見えた。
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