Ep7:「ディ―・ノッド:First」
「それじゃあ。さっそく案内するよ。そうだなぁ。まずはエギルの海!ユーキが見つかった場所だよ。」
「俺が来た海か・・・。気になるな!行こう!!」
ユーキは少し考えた後、その考えに賛同した。
「さ、こっちだよ。」
そういうとレンは森の中に入っていく。
「あ、森の中にモンスターが出てくることがあるから気をつけてな。一応結界で外からのモンスターは抑えてあるけど、中で生まれるやつはな、どうしようもない。」
「モンスターか!!気になる!!いろんな種類がいるんだろう。仲間にしたり、使役したり。」
キラキラした目でそう答えるユーキ。
「はは。そうだね。色々いるよ。んー俺が知っているだけで100種類くらいかな。この島に。また後で説明するよ。ちなみにモンスターは絶対に仲間にできないよ。」
笑いながらそう答えるレン。
「えっ!?そうなのか?なんか悲しいな。。。」
一気にしおれるユーキ。
「感情の浮き沈み方がまるで子供だなぁ。」
笑いながら言うレン。
「まぁ、そこらへんは後で説明するよ。っていうか、俺なんかよりショウやガンさんの方が説明は上手だから、あの人たちに任せようかな。」
「・・・まぁなんでもいいけど。とりあえずは、、、エギルの海??だっけか。早く見たいなぁ。」
「まぁ急ぐと気配も大きくなるからねぇ。モンスターに見つからないように、ユーキの身を案じてるんだけど。。。」
そういいながらすたすた歩いていく。
「そうなのか?・・・なぁ。俺って弱いのか?基本異世界転生だと、最強能力みたいなのを持っているのがありきたりだったりするんだけど。。。」
「そーだなぁ。ユーキからは”魔祖”(まそ)が…って言ってもわかんないか、んー、なんていうんだろ。オーラっていうのかな。”ない”よね。」
あっさりと笑いながらいうレン
「・・・無い?少ないとかじゃなくてないの・・・??」
さらに元気がなくなるユーキ。
「まぁ。あれだよね。まぁ。ね。星人ってみんなそんなもんだよ。基本的には魔祖って成長とともにどんどん大きくなるんだけど、その見た目。。俺と同じくらいの年齢でここまで感じられないと、無いよね。多分。魔祖が生まれるのは成長だけってわけじゃないんだけど。その説明も後だな。俺には荷が重い。」
「・・・んー。それでもなぁ。今の時点で0ってことは、最強にはなれないんだよな。多分。ショックだ。ショック。それに、俺の世界だと異世界転生で最強じゃないやつは、それはそれは見るも無残な生活を歩んでいたなぁ。偏見かもしれんけど。」
ぶつぶつと言いながら目の前を歩くレンを追いかけていく。
「気にするなよ。そんなこともあるさ。さ、あと少しだ。」
そのまま歩き続けること数分。
森を抜け、開けた場所に出た。
「ん??ここ??海…には見えないけど…」
「いや。ここは違うよ。ここはね…俺にとっては少し特別な場所。まあ特に何があるわけでもないんだけどね。開けた場所ってだけ。」
少しトーンの落ちた声で答える
「ここは通過点だよ!さぁ。行こう。」
自らを元気付けるように言う。
「なんか、いい場所…というかなんというか。ほんわかするなぁ。」
素直な気持ちがでるユーキ。
「…そう思う?なんか自分のことみたいに嬉しいな。ここのことを褒められるの。」
「なんなの?レンにとってこの場所は。何か思い出があるんだろ。」
「そーだね。あるよ。でも…まあいいじゃない。それより海!海!」
はぐらかされた、と察したユーキ。
そのまま気にすることをやめ、目の前を歩くレンを追っていく。
するとまた開けた場所に出た。
次は目の前に大量の水が見えた。
緩やかな音が渚から聞こえる。
とてもきれいな場所だった。
「きれいでしょ。」
自分はここから来たのだという。
確かにきれいだ。不思議と初めてのような気はしなかった。
しかし目の前の景色は形容し難いほどの綺麗さで、初めてみる光景であった。
海は透き通り、真白い砂を引き立てていた。
砂浜から渚。そしてその先へ続く大海原へと、滑らかなグラデーションがとても綺麗だと感じた。
白から淡い青、藍色、そして最後は深い紺色。
砂浜にはゴミなどは一切なく、漂流してきたものもなかった。
ただ、真っ白に続く。
そして晴天の青空に色とりどりの星たち。
テレビで見たことのある綺麗な砂浜を、何倍にもしたような綺麗さを目の前に息を呑んだ。
「言葉にならない??」
そう聞かれたが反応できないユーキ。
「ここはね。ありふれた場所。いつでも誰でも来ることができる場所。結界があるから脅威はそれほどないからね。」
「それでもね。特別な場所なんだ。村人にとって。決して見飽きることのない場所。初めてみるユーキがそうなるのは、まあ、必然みたいなもんだな。」
-レンが横で何か言っている-
その美しさは、その美しさそのものに、無意識に意識を集中させる力があった。
「俺は…ここから来たのか…」
「そう。正確には魔物が連れてきた。」
「魔物??」
「リヴァイアサンっていう魔物の背中に乗ってたんだよ。気絶してね。その前のことは覚えてないんだろ?その感じだと。」
「覚えていない。」
-と、いうより音楽を聴きながら川沿いを歩いて、目の前が真っ暗になったあと、もがいてもがいて、気がついたらショウの家にいたんだ。-
「いや、んー何か抜けてる…というか忘れている…というか。モヤモヤする。そんな感じはあるな。」
「フーン。まあ、それも星人にはよくあるって書いてあったな。」
「なぁ。その本に書いてあったこと全部教えてくれよ。ちょこちょこ情報出してくんなよ。一気に全部教えろよ。」
「ごもっとも…ではあるけど…んーまあガンさんやショウに任せるよ」
笑いながら答えるレンに少し苛立つ。
「あのなぁ。なんか楽しんでない?俺結構必死なんだぜ。まだ現実を受け入れられてないというかなんというか…」
実際、ユーキの頭は妙に冷静だった。
-現実を考えるとこんなに冷静でいられるわけがないと思うだろうし、一瞬考えた時なんかはゾゾゾっとする。-
-けどすぐ収まる。考えないようにしているんだろう。と思う。脳が現実逃避をしているんだと。本能で逃げているのだと。感じる。-それが何故だかは、わからない-
「ごめんごめん。やっぱりどうしても星人ってさ、本で見ただけだし、本当にいるんだって思ったらなんか、物珍しいというか…」
「そう言いながら笑うなよ。」
ふふっとユーキは息を漏らした。
よし。とレンが仕切り直す。
「帰ろう!」
「・・・え?」
島を案内すると聞いていたのに、帰ろうといわれて戸惑うユーキ。
「案内するって言ったけどさ。正直ここ以外案内する場所なんて無いよ。まぁ後は村の中ぐらいかな。」
そう言うとすたすた元来た道を歩いていくレン。
「お。おい!もう帰っちゃうのかよ。」
「いつでもこれるから、また来たいときに連れてきてあげるよ!」
仕方なくついていくユーキ。
少し歩き、また先ほどのひらけた場所に出た。
しかし先ほどとは違い、誰かがそこにはいた。
「え・・・?」
戸惑うレン。
「ん?村人か?」
戸惑うレンを見て戸惑うユーキ。
「やあ。おはよう。」
穏やかな声で奴は言った。
長い白髪の髪に目が行く。とてもきれいな色だ。中性的な顔をしている。
「誰だ!!お前!どこから来た!!」
急に叫びだすレン。
「え、おい。村人だろ?!」
「この村には昔は人が沢山いたらしいんだけど、どんどん少なくなって今は100人くらいなんだ。全員の顔を覚えている。あんな奴いない!」
「じゃ、じゃあ、ほかの村から来たんじゃないのか?」
「この島には俺たちの村以外に村はない!それにこの島の外から人が来ることはあり得ないんだ。」
「え、じゃあ。。。」
「あまり警戒するな。私は何もしない。ただ見に来ただけだ。」
穏やかだ。とても余裕がある声をしている。
「見に来た?何をだ?」
「レン。ユーキ。君たちをだ。」
--なんで俺の名前知ってんだ?--
二人とも考えることは同じだった。
レンからしてみれば見たこともない奴にいきなり名前を呼ばれ、ユーキからしてみれば、この世界にきてから名前を自分の名前を知っているのはレンだけだからだ。
「私は、【ディー・ノッド】。みんなからはノッドと呼ばれている。」
「お前の名前なんか知るか!俺が知りたいのは、お前がどこから来たのかだ!」
レンは怒鳴るように言った。動揺しているのが分かる。
「私は・・・"外"から来た。」
静かにノッドは答えた。
「外?外っていうのはこの島の外のことか??」
レンが聞いた。
「そうとも言えるしそうでないとも言える。」
はぐらかすようにそう答えたノッド。
「はぁ?!ふざけるな。大体この島は外から入れないようになっている。俺が知っている限りこの島を出入りできたのは俺の親父だけだ!!」
「ディズのことか?」
一瞬で顔から血の気が引いていった。
レンは先ほどまでの紅潮した顔から、粘土のような色に変わっていた。
「な、なんで、親父の名前を知っているんだよ。」
「ま、まて。レン。こいつレンの名前も知っているし、この世界にきてから、レンにしか名前を教えていない俺の名前すら知っているんだ。
レンのおやじさんの名前を知っていようがおかしくはないんじゃないか?」
ユーキはレンをなだめるようにそう言った。
「・・・確かに。」
納得してくれたレン。
「でもこいつがなんで俺の名前やユーキ、それに親父の名前を知っているかは結局わかんないままだ。答えろ!」
するとノッドは静かに答えた。
「言っただろう。私は、今日、君たちを見に来ただけだ。話をしに来たわけじゃない。つまりその質問には答えない。」
「勝手に名前は名乗ったのにか?ふざけんな。力づくでも吐かせてやる。」
そういうとレンは走りだした。初速とは思えないスピードでノッドの方に近づいていく。
「・・・」
20M近くの距離を文字通り一瞬で詰めたレンは、そのままの勢いで切るようにして脚で蹴った。
蹴る瞬間までは奴はそこにいた。しかし、
ブゥン!
おおよそ脚で空を切ったとは思えないような音が響いた。
「な」
驚きを隠せないレンだが、瞬時に体制を立て直し周りを見る。
しかし奴はもういなかった。
「どこだ!出てこいよ!」
レンは大声で叫んだが返事は無い。
「今の一瞬で。。。蹴る瞬間までそこにいたのに。見えなかった。。」
レンは落ち込んだ。少なからず自分の力や速度に自信があったのだろう
するとどこからともなく声が聞こえてきた。ノッドの声だ。
「また会うときは必ず来る。すぐにでも会うかもしれない。来るべき時は近い。その時が来ればおのずと全てが分かる。」
その言葉を最後に声は聞こえなくなった。
「なんだったんだ。あいつ。」
二人は放心状態だった。
「こんなこと初めてだ・・・ショウに報告しないと。」
レンは立ち上がりそう言った。
「なぁ。ほんとにあいつのこと知らないのか?」
「ユーキ。君は知らないだろうけど、銀髪や白髪はこの島には家系上いないんだ。災いのもとって言われてて、白髪が生える年配になると、特殊な植物を使用して髪を染めるか全部切り落とすんだ。」
「そんな言い伝えがあるのか。なるほど。じゃぁ白髪で、しかもあんなに長髪な奴はいないってことか。」
「とりあえず。すぐに村に帰って、ショウやガンさんに今起きたことを伝えよう。ユーキの件もあるし、書庫にある本を読んでいろいろ調べてみよう。」
そういうと村のほうに歩いていくレン。
「昔、本を見たことは墓まで持って行くつもりだったけど、、、そうも言ってられないかなぁ。」
レンはユーキに聞こえるか聞こえないかの小さい声でそう呟いた。
しかしユーキは、先ほどのノッドが言ったことや、この現状を踏まえてひそかに考えていた。
-なぞのキャラが登場して、なぞの力の差を示して、なぞの言葉を残して、退場。話の構成が漫画ですねぇ。-
二人は村へと戻っていった。
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